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マガジン「画と小話」を始めた経緯

https://note.com/melone_g1336/m/m24065529cbae

 マガジン「画と小話」への投稿数がこの投稿で100番目になりますので
区切りとして、始めた経緯を書いておこうと思います。

画像と小話が組み合うとそれぞれの意味合いが相乗して、
新たな表現ができることに気付きました。

 
2020年、世界は100年に一度というコロナウイルス・パンデミックに陥り、外出がままならなくなりました。
家に籠もっていて、ふと旧いCDを聴き始めました。   
その中にジェットストリームというラジオ番組の復刻版がシリーズで10枚あって、この際だと懐かしく聴き込みました。

ジェットストリームは、1967年から始まったJAL日本航空提供の
FM 東京の深夜放送です。
当時17歳の大学受験生で、家族が寝静まった寂しさを紛らわせる深夜放送は欠かせませんでした。

飛行機の爆音から始まる名曲ミスターロンリーの流れをバックに、城達也の低音でベルベットのように柔らかい大人の声のナレーションは、あたかも 夜間飛行の旅客機内にいるような心地よい高揚感に包まれました。 

そして老年の今、53年の時の隔たりを感じることなく新鮮に
楽しめました。この年齢になってこそ分かるナレーションの
深みのある詩作の数々でした。

調べてみると堀内茂男の作品だと判りました。 
CDの音源から詩作を書き起こし、写真を選んでレイアウトしてゆきました。

詩作の物語を呑み込み、それに合う写真を探す作業は外国旅行をしている ような錯覚を楽しめました。そしてこの画像と詩作の組み合わせを工夫しているうちに、自作する事を思いつきました。 

新聞各社には一面コラムと呼ばれる特別な囲み欄があります。
2,3分で読める500字前後の短文に日々の世相を反映させ、
落語の「お後がよろしいようで」とウイットで退くような
かっこよさが信条です。

コラムを担当するのは大変な名誉なことですが、超人的な記憶力と
情報へのアクセス能力とウイットのセンスが要求され、
毎日のことでストレス負荷は大きく、精神を病んだり、
短命に終わるとかの噂があり、ある意味恐ろしいポジションといえます。
新聞各社は絶対に作者の名前も写真も明かしません。聖域なのです。

そんなコラムにずっと憧れてきました。 このコラムのように、
文章を出来るだけ切り詰めた小話を書き始めました。
そして、物語にドンピシャな画像を見つけて合体させてゆきました。
プロとアマの差が如実に表れることを恥じ入りながらも、
尊敬する堀内さんへのオマージュとしています。

これらの中の一編でも二編でも気に入られた小話があって、
読んだ方ご自身の記憶や想像を刺激して豊かな思いが湧いて来られたら
無上の喜びです。

 城達也と堀内茂男
二つの才能が紡ぎ出したダンディズム
       

地球は時速1,700kmものスピードで西から東に自転して、
その回転に引き摺られるように 幾つもの気流が地球を取り巻いています。
日本の上空には偏西風が吹いて、日頃の気象の変化の立役者のように
振る舞っています。
その気流は上空1万メートルの高さのところで、
新幹線並の時速300kmの速さで流れています。
西から東に向かう飛行機は、その気流に乗って燃費と時間を稼ぎます。
この高速の偏西風を「ジェットストリーム」と呼びます。  
 
深夜放送のジェットストリーム は、城達也と堀内茂男の二つの才能が
相和して昇華した希有な朗読劇作品集です。
1994年まで実に27年間、二人のコンビで 繰り広げられてきました。      
城は1931年生まれ、堀内は1933年生まれで2つ違いの同世代でしたが、
仕事でもプライベートでもほとんど会話をしたことがなかったそうです。
書き手と読み手が馴れ合うことを嫌って、毎回真剣勝負で臨むという思いに極まった関係でした。    
城は昼間の録音でもスタジオの照明を落とさせ、夜の設(しつらえ)で
マイクに向かいました。
堀内の詩には絶大な信頼を寄せ、一度たりとも修正を要求したことは
ありません。
堀内の文章は俺が世界一上手く読んでやるという強い思いがありました。  
一方、堀内はこの仕事を請けて、それまで海外に出たこともなく、
各国の観光局を訪ねたり、図書館に入り浸り、旅行記やら伝記、
観光ガイドを漁り一片の言葉に心血を注ぎ込みました。

やがて堀内は海外に出掛けて行きましたが、いつもポケットには巻尺を
忍ばせていたそうです。逸話によると、旅先で気になる物、例えば自転車の車輪の径の長さ、ティーポットやドアノブ、地下鉄の切符などの大きさを
律儀に測っていました。それ程に一つ一つ、言葉の確かさに
拘ったようです。     

2000年に方丈記を出版し、その「あとがき」にガンを患い余命3ヶ月と
いわれ、30年書き溜めた原稿を急いで完成させようと取り組み、
結局一年掛かり、まだ小康を維持できていると書いています。

城は63歳で亡くなり、堀内も既に鬼籍にありますが、
二人とも安穏な長命とは云えない生涯でした。
毎日毎日、追われるように締め切りのある仕事は
命を切り詰めるもののようです。   
 
この二人の醸し出す旅のロマン、ダンディズム、人間愛は、哲学にも似て
如何によく生きるかの指針を示してくれています。 


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