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逆さ富士

ときに自然は壮大なイタズラ書きをやらかす。
キャンバスを少し湿らせ
冷やした風を筆に付けて、
コニーデの山体の円錐に沿って、
何度も何度も飽きることなく筆を奔らせる。
少し離れたところから、筆を立てて
片目を瞑り、左右のバランスを見ながら
傾斜の度合いを整える。
とうとう山体全体を覆うくらいに描き広げ
胸を張って、これこそ逆さ富士だと威張って見せた。
水に映る富士だけが逆さ富士だとは云わせないぞと
人間共の固い常識を蹴飛ばしたのだった。 


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