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タオルのゲンさん

オーガニックコットンという
綿素材をアメリカから輸入を始めて
新聞で紹介したら、東京まで会いに来てくれたのが
今治のタオル工場の経営者のゲンさんだった。
 
何にでも興味を持って行動するタイプの人で、人懐っこく
いつもニコニコとされていた。
落語の仁鶴さんをテレビで見かけると、
ゲンさんを思い出していた。
二人とも今はいない。

ある時、ゲンさんから電話で「お茶でも飲みましょわい」と
愛媛県の今治の言い方でお誘いがあって、
ホテルのロビーで待っていると、興奮した様子で
ゲンさんがやってきて挨拶もそこそこに話始めた。
f/1ゆらぎの講演会を聴いてきた感動を、大手をひろげて
並べて見せてくれた。
 
武者利光教授のf/1ゆらぎの効果は世界中で研究されており、
国際シンポジウム」が40年以上にわたって開催されている。
大自然の現象も生き物もゆらいでいて、そのゆらぎを
我々は心地よく感じ、自律神経が整い、リラックスする。
川のせせらぎ、木漏れ日、海辺のさざなみ、そよ風、
暖炉の炎、星の瞬きを思い浮かべるだけで頬が緩むが、
これがみんなf/1ゆらぎの効果の経験だという。

「生体の神経細胞が発している電気パルスを解析してみたら、
その間隔が1/fのゆらぎをしている。パワースペクトル密度が
周波数 f に反比例している」ということらしいが、
哀しい事になにも絵が浮かんで来ない。
扇風機の風は一定で、そよ吹く自然の風の気持ちよさはない。
コンピュータのテクノサウンドには、生演奏のグルーブを
出すことはない。
 
さて我がゲンさんは、早速ゆらぎのタオル製作に取り組んだ。
頼まれた織機の担当者もさぞや困惑したことだろう。
随分して、ゆらぎのタオルを見せてもらった。
色々な色糸が不定形に並んでいて、意外にもとてもお洒落に見えた。
かれこれ20年以上前のことだが、未だに発売になっていない。
ちょっと時代が早すぎたか。これからいいんじゃないか。
 

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