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恋の見出し

 ワインを買って、オイルサーディンとチーズを
酒の友にとスーパーマーケットに立ち寄った。

 片隅に生花のコーナーがあって、蕾を三つ付けた
百合の花と目が合った。

 男が花を持って歩く気恥ずかしさを覚えながら帰って
クリスタルの花瓶に挿して食卓に置いた。

 ティーンエイジの女の子とすれ違ったような
甘酸っぱい香りが辺りを瑞々しく若返らせた。

 それから三週間、全ての蕾が開花して、
どの娘も満面の笑顔を向けてくれる。

 今となっては遙か遠い思春期のかけらを掌に包み
記憶の引き出しの恋の見出しを探しているのだが・・・

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