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映画エルビスを観て

アンデルセンの童話「みにくいアヒルの子」は間違ってアヒルに育てられた
白鳥の子の話しである。
 
エルビス・プレスリーの家族は貧困な中、黒人の街に住んだので、
学校も友だちも黒人の日常で育った。
音楽も自然にブルースやR&Bに染まり、シンガーとして
舞台に立つようになると、白人が黒っぽい歌を歌っている
という新しさが大いに受けた。
 
1950年代の白人社会のカントリーミュージックと融合させて
ロックンロールが産まれた。
エルビスはキング・オブ・ロックンロールと呼ばれ、
その名を欲しいままに王として君臨した。
アヒルではなく白鳥として羽ばたいた訳である。
 
ロックンロールはまさに男女交合を意味するスラングで、
セクシーを売り物にした。
エルビスは双子で産まれたが、兄弟が死産だったので
母親は二倍の愛情を注ぎ込んだ。
異常な溺愛だった。
その子供は強いマザーコンプレックスで、甘えるような曖昧な眼差しは、
女性の母性本能を痺れさせた。
歌いながら体を震わせ腰を振るスタイルは、まるでシャワーを浴びた後、
丸裸で走り回る可愛い男の子を捕まえるような快感ホルモンを
刺激していたかも知れない。

世界史上最も売れたソロアーティストの称号は現在も色褪せていない。
女性ファンの熱意に応えようと驚異的な音楽活動を続けてきたが
生身の身体は悲鳴をあげて1977年42歳という若さで事切れた。
 
エルビスの本名はエルビス・アーロン・プレスリーで、
墓石にはミドルネームのアーロンとだけひっそりと彫り込んだ。
エルビス・プレスリーの名は、ファン達に捧げて、
アーロンとして静かに眠りたいということなのだろうか。


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