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画と小話

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新聞各社には一面コラムと呼ばれる特別な囲み欄があります。 2,3分で読める500字前後の短文に日々の世相を反映させ、 時には落語の「お後がよろしいようで」とウイットで退くような …
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2022年5月の記事一覧

思いつきは天から

なんの脈絡もなく、ふっと思いつくことがある。 大体、ボーっとしている時だ。 着眼の良さで人…

宮嵜道男
2年前
8

青春の輝き

ふと書棚のメキシコの旅行ガイドを開くと小さく畳んだ手紙があった。 30年も前のエリザベスと…

宮嵜道男
2年前
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家長の権威

勤めから帰宅した父に母が言い訳をしているのが聞こえる。 私が夕刊の記事を切り取ってしまっ…

宮嵜道男
2年前
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カルミヤの花

庭の石灯籠の下のカルミヤの花が咲いている。   花の形を見ていたら、鳥の雛たちが親から餌…

宮嵜道男
2年前
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勢力争い

庭のつくばいの水を近所の黒ねこが飲んでいる。 考えてみると野良猫にとって、食べ物はあって…

宮嵜道男
2年前
1

イマジン

記憶は定かではないが、小学校で絵に作文を添える 授業があった。 私は工場の煙突から黒い煙…

宮嵜道男
2年前
2

言葉の音楽

旧い友人から久し振りのメールが来て 近況と共に映画のお薦めがあった。 それはニュージャージー・パターソンという 街が舞台で、落ち着いた風景の中を主人公が 運転するバスがゆったりと走る。 主人公は詩人だがそれを名乗ることはなく、 問われてもバスの運転手だと答えている。 時刻表に合わせた単調な日々が淡々と巡り、 事件と言えばバスが故障して立ち往生すること、 妻が作ったパンケーキがバザーで売れて286ドルも 儲かったこと、 飼い犬が主人公の大切な詩作のノートを 咬み散らかした事く

土ほこり

人生で起こる幸運、不運、だれがそうさせているの? それが神様なら私を守って頂戴。 聖書で…

宮嵜道男
2年前
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枯れ葉

CDショップで捨て値セールのカゴの中を覗くと チェット・ベーカーの「枯れ葉」が目に止まった…

宮嵜道男
2年前
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マリリンの陰影

あれは、いくつの頃のことだったろうか。 父の書斎にあった週刊誌のグラビアに 水着を着けずに…

宮嵜道男
2年前

でんぐり返し

思い立って、畳みの上で、でんぐり返しをしてみた。 放浪記の舞台で森光子がでんぐり返しをす…

宮嵜道男
2年前

全部嘘

アンダルシアの美しい街ロンダの トバーロ爺さんは昼日中から バールに入り浸り、 いつものテ…

宮嵜道男
2年前
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心が解ける浜辺

乾いた海風が薄いシャツを透して肌を冷やして心地よい。 ニューポートビーチを漫ろ歩いている…

宮嵜道男
2年前
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塩と胡椒

塩には不思議な作用がある。 食べ物に少し振りかけただけで眠っていた味覚が万華鏡のように きらきらと輝く。 古代ローマの時代、兵士は給料としてお金ではなく塩で欲しがった。 塩の方が、価値が高かったのである。 塩を男からねだる娘の作り笑いの様子からしおらしいという言葉になった。 食べ物に塩を振ると腐りにくいという不思議な力は やがて清めのイメージになる。 玄関の盛り塩も相撲の力士が振り撒く塩もここからきている。   胡椒もまた、古代から大変な貴重品で、 胡椒の保有で財力と権力を誇