悲しみのメロディ
悲しみのメロディ その-1
ー うわ〜急降下〜〜〜〜 ー
まだ夕刻のはずだが初冬の信州はすでに暗い。
それだけにこの急激な重力変化は恐怖を覚える。
「しょうがないね。松本空港はまわりが高い山だから
それを過ぎると一気に着陸の準備」
ー 大塚さんは慣れてるんですね ー
「いやコワいよ」
オレと大塚さんと一木さんの3人で始めた
アコースティックユニット(フォークグループとも言う(^_^))
「peg」
途中で一木さんが抜けて、現在は2人でやってる。
それが、知り合いに声を掛けてもらって松本市のお隣町で
ライブをすることになった。
「大塚さん〜 サトウさん〜 こっちこっち〜」
このライブを企画してくださった「Oさん」に
空港まで迎えに来てもらい、一路会場へGO〜!
「九州からだとこの寒さはこたえるでしょ」
ー はあ〜寒いですね ー
「でもね〜今日を楽しみにしていたお客さんが
いっぱい来てますからね。会場は暑いくらいですよ」
1時間ほどで到着。
けっこう大きな老舗旅館が今夜の会場。
地元のバンドが前座としてすでに始まってる。
「ようこそいらっしゃいました!
当旅館のN沢と申します。」
ー ああ。今日は呼んで頂きありがとうございます ー
「お時間までこちらの部屋でくつろいでてくださいね。
で、ワタシが司会進行もさせてもらってます」
ー へ〜MCも・・・よろしくお願いします ー
「まあ地元の人達ばかりなので
ざっくばらんに〜 気楽に〜やりましょう」
と言う訳で「控え室」に行くと
そこはプライベート過ぎる空間だった。
ー お、大塚さん、ここって「子ども部屋」ですよね(^_^) ー
「そうみたいね。こんばんは〜」
「こんばんは〜」
ー おじちゃんたちもコタツに入っていい? ー
「うん」
ー サザエさん見てるんだ ー
「うん」
もうくつろぎ過ぎるほど、くつろいだ
ジャンケン〜ポン! で大塚さんだけ負けた頃に
「じゃあお願いします〜
ワタシも司会用の衣装に着替えて盛り上げますよ!」
ー は〜いガンバリマス ー
で、ステージ横でスタンバイ。
「さ〜みなさん!今夜のゲストは遙か九州から来て下さいました〜〜〜〜」
ー ゲゲゲゲゲゲ〜 N沢さんの衣装って〜〜〜〜〜 ー
昭和世代にはすぐ分かる「志村けんの白鳥」!!!
アノ股間から首だけヒョイと出てるアレ
「今日はね〜有名なコマシャルソングもやってくれますよ〜
さあ〜〜大きな声で2人を呼びましょうね〜
お〜お〜つかさ〜ん、 さと〜さ〜ん」
ー ホラ大塚さん・・・呼ばれてますよ・・
出て行ったら ー
「オレだけは嫌よ・・・サトちゃんも呼ばれてるよ。」
ー この流れでやるのはチョット・・・ ー
「カネがもらえるんだからいいじゃない」
ー ・・・・・・ ー
仕方無く(?)出て行くと股間に白鳥はさんだN沢さんは踊っている。
なんと!ライブ会場のふすまの向こうは「別の宴会」をやってるようだ。
「ホ〜ラ出て来た!大塚さんサトウさん隣りに負けないように
盛り上がって行きましょう〜!」
ー 大塚さん・・・なんで宴会場の隣で歌わされるんですかね ー
「まあ季節柄、忘年会なんじゃないの」
ー メチャクチャ盛り上がってますよ・・ ー
「さ〜てやろうか」
ワ〜ハハハハハハ〜〜〜〜〜
ー あの〜1曲目は失われ行く故郷の自然を歌・・ ー
ガ~ハハハハハハハハハ~~~~~
ー 緑のセミという・・・ ー
ドヒャア~アアアアアアアアアアア~~~~~
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ー 大塚さん〜一生懸命にやったよね〜オレ達。
やったけどお客さんに届いたかな〜 ー
「まあ良いんじゃない」
翌朝、外の景色を見てビックリ!!!
山が・・・山が・・・・山が高い
2000m級の山々がそびえ立つ・・・
昨日、空港に着いた時はすでに暗かったし
気づかなかったけど・・・これは凄い!!!
日足の最高峰は我が「御許山」で姿形は美しく
「宇佐神宮」の奥宮さえここに祀られてる。
しかしその高さは650mほど。
人生初の2000mの山々は・・・
こりゃ人生観、変わるわな〜
股間から白鳥出てもしょうがない・・
悲しみのメロディ その-2
ー 大塚さ〜ん、ホントにここで歌うんですかね〜 ー
地元、筑後川沿いの大きなホテルの宴会場・・・
「いや〜いっぱいいるね」
ー これ300人はいますよ ー
「ガ〜ハハハハハハ〜〜〜〜あんたら今日は頼むで〜」
ー 大塚さ〜ん、ガ〜ハハハハハ〜〜〜って笑う人、
嫌な予感しかしないんですけど ー
「シ〜〜〜農業団体のお偉いさん」
「みんな楽しみにしとるで〜
酒飲みながらゆっくり聞かせてもらうで」
「ど〜ぞ ど〜ぞ〜 好きなだけ飲んでください〜」
ー お、大塚さん・・好きなだけって・・・ ー
「いいのよ〜 ジサマ、バサマばかりじゃけん。
おとなしゅう聞くよ」
そ・し・て
ワ~ハハハハハハ~~~~~
ー あの~1曲目は失われ行く故郷の自然を歌・・ ー
ガ~ハハハハハハハハハ~~~~~
ー 緑のセミという・・・ ー
ドヒャア~アアアアアアアアアアア~~~~~
ー お、大塚さ〜ん、聞きゃあしないですよ ー
「いやいやアッチのはしっこは耳をそばだてとる」
ー お、大塚さ〜ん、酒が足りん!って言ってますよ ー
「いやいや、正面のバサマは正座して聞きよる」
ー アッ!向こうでカラオケ始めましたよ! ー
「いやいやいや〜 オレ達のライブの後にやる
カラオケ大会の準備をしとるとよ」
ー お、大塚さ〜ん! 歌い出しましたよ ー
♫ は〜るばる〜きたぜ〜〜〜〜〜〜〜 ♫
ー グゲゲゲゲゲゲ〜〜〜〜〜 ー
「まあカネもらえるからいいじゃない〜〜」
ー ちっとも良くね〜よ〜 ー
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