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悲しみのメロディ

https://youtu.be/dIT1y1FCaiE


悲しみのメロディ その-1


 ー うわ〜急降下〜〜〜〜 ー 


まだ夕刻のはずだが初冬の信州はすでに暗い。
それだけにこの急激な重力変化は恐怖を覚える。

「しょうがないね。松本空港はまわりが高い山だから
  それを過ぎると一気に着陸の準備」

 ー 大塚さんは慣れてるんですね ー 

「いやコワいよ」

オレと大塚さんと一木さんの3人で始めた
アコースティックユニット(フォークグループとも言う(^_^))
「peg」

途中で一木さんが抜けて、現在は2人でやってる。

それが、知り合いに声を掛けてもらって松本市のお隣町で
ライブをすることになった。

「大塚さん〜 サトウさん〜 こっちこっち〜」

このライブを企画してくださった「Oさん」に
空港まで迎えに来てもらい、一路会場へGO〜!

「九州からだとこの寒さはこたえるでしょ」

 ー はあ〜寒いですね ー 

「でもね〜今日を楽しみにしていたお客さんが
いっぱい来てますからね。会場は暑いくらいですよ」

1時間ほどで到着。

けっこう大きな老舗旅館が今夜の会場。

地元のバンドが前座としてすでに始まってる。

「ようこそいらっしゃいました!
  当旅館のN沢と申します。」

 ー ああ。今日は呼んで頂きありがとうございます ー 

「お時間までこちらの部屋でくつろいでてくださいね。
 で、ワタシが司会進行もさせてもらってます」

 ー へ〜MCも・・・よろしくお願いします ー 

「まあ地元の人達ばかりなので
  ざっくばらんに〜 気楽に〜やりましょう」

と言う訳で「控え室」に行くと
そこはプライベート過ぎる空間だった。

 ー お、大塚さん、ここって「子ども部屋」ですよね(^_^) ー 

「そうみたいね。こんばんは〜」

「こんばんは〜」

 ー おじちゃんたちもコタツに入っていい? ー 

「うん」

 ー サザエさん見てるんだ ー 

「うん」

もうくつろぎ過ぎるほど、くつろいだ

ジャンケン〜ポン! で大塚さんだけ負けた頃に

「じゃあお願いします〜 
  ワタシも司会用の衣装に着替えて盛り上げますよ!」

 ー は〜いガンバリマス ー 

で、ステージ横でスタンバイ。

「さ〜みなさん!今夜のゲストは遙か九州から来て下さいました〜〜〜〜」

 ー ゲゲゲゲゲゲ〜 N沢さんの衣装って〜〜〜〜〜 ー 

昭和世代にはすぐ分かる「志村けんの白鳥」!!!

アノ股間から首だけヒョイと出てるアレ

「今日はね〜有名なコマシャルソングもやってくれますよ〜
  さあ〜〜大きな声で2人を呼びましょうね〜
   お〜お〜つかさ〜ん、 さと〜さ〜ん」

 ー ホラ大塚さん・・・呼ばれてますよ・・
    出て行ったら ー 

「オレだけは嫌よ・・・サトちゃんも呼ばれてるよ。」

 ー この流れでやるのはチョット・・・ ー 

「カネがもらえるんだからいいじゃない」

 ー ・・・・・・ ー 

仕方無く(?)出て行くと股間に白鳥はさんだN沢さんは踊っている。
なんと!ライブ会場のふすまの向こうは「別の宴会」をやってるようだ。

「ホ〜ラ出て来た!大塚さんサトウさん隣りに負けないように
  盛り上がって行きましょう〜!」

 ー 大塚さん・・・なんで宴会場の隣で歌わされるんですかね ー 

「まあ季節柄、忘年会なんじゃないの」

 ー メチャクチャ盛り上がってますよ・・ ー 

「さ〜てやろうか」


ワ〜ハハハハハハ〜〜〜〜〜

 ー あの〜1曲目は失われ行く故郷の自然を歌・・ ー 

ガ~ハハハハハハハハハ~~~~~

 ー 緑のセミという・・・ ー 

ドヒャア~アアアアアアアアアアア~~~~~


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 ー 大塚さん〜一生懸命にやったよね〜オレ達。
     やったけどお客さんに届いたかな〜 ー 

「まあ良いんじゃない」


翌朝、外の景色を見てビックリ!!!
山が・・・山が・・・・山が高い
2000m級の山々がそびえ立つ・・・

昨日、空港に着いた時はすでに暗かったし
気づかなかったけど・・・これは凄い!!!

日足の最高峰は我が「御許山」で姿形は美しく
「宇佐神宮」の奥宮さえここに祀られてる。

しかしその高さは650mほど。
人生初の2000mの山々は・・・

こりゃ人生観、変わるわな〜
股間から白鳥出てもしょうがない・・


山は高い


悲しみのメロディ その-2


 ー 大塚さ〜ん、ホントにここで歌うんですかね〜 ー 

地元、筑後川沿いの大きなホテルの宴会場・・・

「いや〜いっぱいいるね」

 ー これ300人はいますよ ー 


「ガ〜ハハハハハハ〜〜〜〜あんたら今日は頼むで〜」

 ー 大塚さ〜ん、ガ〜ハハハハハ〜〜〜って笑う人、
    嫌な予感しかしないんですけど ー 

「シ〜〜〜農業団体のお偉いさん」

「みんな楽しみにしとるで〜
  酒飲みながらゆっくり聞かせてもらうで」

「ど〜ぞ ど〜ぞ〜 好きなだけ飲んでください〜」

 ー お、大塚さん・・好きなだけって・・・ ー 

「いいのよ〜 ジサマ、バサマばかりじゃけん。
  おとなしゅう聞くよ」


        そ・し・て



ワ~ハハハハハハ~~~~~

 ー あの~1曲目は失われ行く故郷の自然を歌・・ ー 

ガ~ハハハハハハハハハ~~~~~

 ー 緑のセミという・・・ ー 

ドヒャア~アアアアアアアアアアア~~~~~

 ー お、大塚さ〜ん、聞きゃあしないですよ ー 

「いやいやアッチのはしっこは耳をそばだてとる」

 ー お、大塚さ〜ん、酒が足りん!って言ってますよ ー 

「いやいや、正面のバサマは正座して聞きよる」

 ー アッ!向こうでカラオケ始めましたよ! ー 

「いやいやいや〜 オレ達のライブの後にやる
  カラオケ大会の準備をしとるとよ」

 ー お、大塚さ〜ん! 歌い出しましたよ ー 

 ♫ は〜るばる〜きたぜ〜〜〜〜〜〜〜 ♫

 ー グゲゲゲゲゲゲ〜〜〜〜〜 ー 

「まあカネもらえるからいいじゃない〜〜」

 ー ちっとも良くね〜よ〜 ー 


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