バブル -「N」に捧ぐ -
バタバタしていた。 機材を運んで、マイクのテストして・・・
ここは福岡は中洲にあるライブハウス「Sora」
「こんにちは~ きょうはよろしく~」
あの人は突然現れた。
本当に存在するんだ・・・
オレは全国展開する大手音楽講座で教えてた。
生徒さんが送ってくる作品を指導、添削するお役目だ。
で、ある年、講師陣が全国各地に出掛けて行き
生徒さんと交流、懇親会。
そして最後に講師によるデモ演奏を
やるというイベントが開催されることになった。
オレは選ばれて、主に西日本を中心に回った。
いや~楽しかった。生徒さんにも直接会って
相談や質問に答えたりした。
ラストはデモ演奏をするのだが
オレは毎回、機材を用意してもらって
その場で1曲作って見せるパフォーマンスをやった。
所要時間は30分ほど。
この時間内にイントロ~1コーラス~エンディング
をやるわけだ。
30分ぽっちで出来るのかって?
オレは年がら年中、歌ばかり作ってきたから
出来るのよそれが。
ただし歌詞書いて、歌うってほどの時間は無いので
演奏だけのインスツルメンタルだけど。
ピアノとかでメロディーを弾くわけね。
それを静岡、大阪、名古屋、広島、福岡etc なんかで
毎回やった。
どんな曲を作っても良いんだけど
毎回その場の雰囲気で変えるのよ。
昨日は、アップテンポだったから
今日はバラードにしよう
とかね。
そうそう、同行するスタッフの中に
「Yさん」って人がいて。
この方、ポプコンの大ヒット曲をアレンジしたり
オーケストラの指揮もされてる大変なお方なんだけど
この「Yさん」がずっとオレのデモ演奏を見て下さってて
「今日は35分で1曲か・・・出来映えも含めて
う~ん まずまずの速さかな」
あっ、ありがとうございます!
「僕たちは昔、もっと速く作業してたよ」
ははっ! 今後とも精進いたします!
もう、生徒さんにプロの技を見せる、とか言うよりも
毎日がオレ自身の添削指導だったな~
それで、夜になると毎回宴会なわけよ。
だいたい4、5人で動いてたんだけど
スタッフさんみんな音楽関係者だから
飲むと音楽談義で盛り上がるのよ。
あるとき音響スタッフ「Dさん」が
「サトウさんってどんな音楽聴いてたんですか?」
って言うので
たくさん好きなのがあるんですが、一番ってなると
そりゃ~もうNSPですね。
「ほ~ そりゃあ奇遇だ~ ボクも大好きです」
おおっ! 気が合いますね~ 嬉しいな~
で、話し込むことしばし
「サトウさん、実はボクはNSPの中村さんの
中学校の後輩でして、この会社に入ってからも
スタッフとしてNSPのコンサートにも
ずっと携わってきたんですよ」
エ~~~~ッ!?
「いや~最近の子たちと話しても
NSPなんて知らないって子が多くてね」
あっあっあの~エピソードとか教えて下さいよ~
「Dさん」恐るべし・・・
その後もレコーディングに詳しい「Dさん」には
マイクの選び方やセッティングなどいろいろと
教えていただいた。
・・・時は流れて・・・
日足のKenから
「中村さんがソロでライブ活動やってて
今度九州各地を回るみたいですよ」
ほ~ 福岡は中洲にある「Sora」でライブやるのか・・・
その後、北九州・・・次は別府、中津、大分、宮崎・・・
う~ん・・・どうしよう・・・
見に行くのはモチロンなのだが
この頃オレは撮影の仕事もしてて
すでに何本も市販されてるDVDを制作していた。
なので、この場合の「どうしよう・・・」
は、中村さんのライブを観客としていくのか
撮影をしに行くのか、迷ってる「どうしよう・・・」なのだ。
何と言っても中村さんはギター始めた頃からの
神にも等しい3人のうちのお一人。
オレなんぞが気安く近づける存在であるはずもない。
・・・・・・・・!?
ふと頭をよぎったのは「Dさん」の存在。
そうあの人なら中村さんとの
橋渡しになってくれるかもしれない。
音楽用語なら転調する際の「ピボットコード」だ!
(前回の記事を参照のこと)
オレももう若くは無いのだから後悔はしたくない。
「それは厚かましいぞ!」
って言われても良いじゃ無いか!
何もしなけりゃ何も起こらない
勇気を振り絞って「Dさん」に連絡した。
「いちおう取り次いでみるけどね」
しばらくして
「OKが出たよ。ただこう言うことは書面を交わして
何かトラブルがあった場合に備えないといけないよ」
で、撮影に関する書類にお互いサイン、押印した。
オレが中村さんに初めてもらったサインは…「契約書」。