ベルベットイースターと転調と
Atushiさんのリクエストは 以下
「初めて聞いたとき、とても繊細な曲だとびっくりしました。
何がと言われても、今まで聞いたことがないような心の揺れみたいなものを感じました。
上手く伝えられません。
ちょうど中学になったばかりの頃でした。
2年前のコンサートでこの曲から始まったとき、知らないうちに涙が流れていました。
陽水の「いつのまにか少女は」と似ているのかなあ。」
オレも初めてこの曲聴いた時はビックリしました。
斬新なメロディーだと思いましたね。
なので、Atushiさんからのリクエスト、嬉しかったです!
実際やってみた正直な感想は・・・
難しかったです! いや~これ、聞くのとやるのでは大違い!
「空がとってもひくい♫」
サビなんか、この歌詞のあいだに「1オクターブと3度」
も跳躍するんですよ! ビックリしました。
と言う訳で・・・
どうも最近、ふざけたことばかり書いてるので(^_^)
今回は少し真面目な話を。
ユーミンと言えば、情景が浮かんで来そうな歌詞ですよね。
みんなが共感しやすい言葉で、青春の1ページやオトナの恋
を歌にしてますよね。
またあの歌い方が良いですよね。
朗々と歌うのではなく、なんとも頼りなくて、はかなげで。
オレはあの歌い方だったからこそ「ユーミン」になり得たのだと思います。
で、今回は「ベルベットイースター」ですよ。
音楽面からいうとユーミンの特徴で魅力でもある
「転調」が使われてますね。
初期のユーミンは特に転調が多く、また使い方が上手です。
この「転調」について今回はお話ししますが
書面で伝わるのか、ちょっと不安ですが・・・
この「ベルベットイースター」はCmのKeyなので
♭が3つ付きますが、分かりやすくするため
Amでお話ししましょう。
Amのマイナースケールは(ナチュラルマイナー)
ラ・シ・ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ
そうです。普通のドレミファソラシドを
ラからスタートしただけです。
でもドレミファソラシドって順番で弾くと明るいのに
ラ・シ・ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラって弾くと
すごく暗くなりますね。
ドレミファソラシドは「ド」、英語で言うと「C」
から始まる明るい音階なので
「Cメイジャー(メジャー)スケール」と言います。
メイジャー(メジャー)は明るいとか大多数とかの意味ですね。
メジャーリーグとか言いますね。
一方、ラシドレミファソラは「ラ」、英語だと「A」
から始まる暗い音階なので
「A(ナチュラル)マイナースケール」と言います。
マイナーはメジャーの反対ですね。
(ナチュラル)を入れてるのには
実は、マイナーには3種類あって
他にもハーモニックマイナーとメロディックマイナー
があるのですが、複雑になるので、ここでは
ナチュラルマイナーに限って説明します。
さて「Am」のKeyですが
登場予定のコード(固有和音と言います)は決まってて
Am・Bm-5・C・Dm・Em(E)・F・G・Am です。
(AmがKeyの曲には「F」が出る可能性がありますよ(^_^))
歌い出しは
「ベルベットイースター」
Am ー E7 これは普通ですが、次の「小雨の朝」
で早くも転調します。まあ部分的なものなので
転調ってわざわざ言わなくてもいいのでしょうが
Em ー D と♯が1つの「Em」Keyになります。
Emでの登場予定のコード(固有和音)は
Em・F#m-5・G・Am・Bm(B)・C・D・Em です。
(EmがKeyの曲には「F」は普通出ません、が「Bm」出る可能性がありますよ(^_^))
「小雨の朝」のところはこのウチの「Em」と「D」が出たのですね。
Amの固有和音にも「Em」はありますが「D」はないですね「Dm」ならありますが。
さてこの先、「Em」のKeyに転調してずっと行くのか?
と、思ったらまた早くも転調します(^_^)
「光るしずく」で「F ー C」
そうです。「Am」のKeyの6番目から3番目のコードに行く進行ですね。
実にめまぐるしい!
で、次の「窓にいっぱい」は「B ー E」
これは一見すると
「Em」Keyでの5番目から1番目のコードに見えます。
また「Em」に転調か!? と思うかもしれませんが
もしそうなら2つ目の「E」が「Em」でなくてはなりません。
固有和音にはそれぞれメロディーを導くための役割があって
「完結するコード」、「まだまだ続かせるコード」とかがあります。
「Am」がKeyの場合
「Am」は完結するコードで、まだ続かせるコードの代表が5番目のコード「E」になります。
音楽用語では完結するコードを「トニック」
まだ続かせるコードを「ドミナント」と言います。
(他にも用語はあるのですが割愛(^_^))
この「窓にいっぱい」の「B ー E」の動きで
特徴的なのが「B」ですね。
Amの登場予定のコード(固有和音)には「B」はありませんね。
(Bm-5ならありますけどね)
これはもう聞いただけで「雰囲気が変わった」と気づくと思います。
「B」は「E」に行くためのコード
そして「E」は「Am」に行くためのコードです。
「B」は「E」の「ドミナント」ですね。
Em・F#m-5・G・Am・Bm(B)・C・D・Em
でもここではKeyは「Am」なので
その「E」は「Am」にとっての「ドミナント」ってことになります。
分かりにくいですが、つまり作曲上の仕掛けがしてあって
Keyである「Am」に行くためには「E」
「E」に行くために場違いに見える「B」を使う。
で、結果「B ー E ー Am」という進行が生まれます。
この「B」のコードを「セカンダリードミナント」と言います。
「セカンダリードミナント」はフォークにはかなり使われています。
かぐや姫の「なごり雪」ではサビにいく前の
♫ふざけすぎた「季節の後」で♫
村下孝蔵さんの「踊り子」では
サビの真ん中 ♫ふらつく「踊り」子♫
NSPだと
「色あせた風景の中で」の
♫情熱傾けたあの頃の「僕」は♫
「粉雪のささやき」の
♫かすかに廊下の「きしむ」音♫
とかで「セカンダリードミナント」使われてます。
で、話を「ベルベットイースター」に戻しますと
またAmのKeyに戻って
♫まだ眠いけど♫
まではさっきと同じように転調して、その次
♫ドアをたたいて♫
では、また「B」に行くので
これも「セカンダリードミナント」か!?
って思うと、今度はそのまま「Em」に行っちゃう。
これはもう正々堂々と(?)EmのKeyへ転調です。
つまり今度の「B」はAmのKeyの「セカンダリードミナント」ではなく
EmのKeyの「ドミナント」の「B」でした(^_^)
そのあとはサビが来ますが、もうずっと転調はしません。
EmのKeyのままです。
ただ2番が始まるとまたAmからスタートなので
間奏の最後でAmに戻す必要があります。
要は「E」というコードさえ出せばAmに戻せるので
興味ある人はそこまで調べてみて下さい。
間奏のラストにも面白いコードがありますよ。
まあこの曲は簡単なほうでユーミンもう凄い曲だらけです。
ここまで長々と書いてきましたが
この曲では AmからEmへの「完全5度の転調」ですね。
そしてまたEmからAmに戻す「完全4度の転調」です。
「完全5度」??? ってなりますよね。
これもまたいつかの機会に(^_^)
ちなみにポップスでよくある転調は「短3度」です。
もちろんユーミンも「中央フリーウエイ」「少しだけ片想い」
なんかで使ってます。「短3度」についてもまた後日に。
我らがNSPにはあまり転調はないのですが
はっきり転調してるのはアルバム「めぐり逢いはすべてを越えて」
の中の「砂丘」ですね。
こちらは割と珍しい「短」ではなく「長3度」です。
どこで転調してるか? CDを聞いてみて下さいね。
あと部分転調なのですが、平賀さんの名曲「シャンテの街」も
「誰かの視線を気にしながら」までがGで
「横目で歩くシャンテの街」がCのKey
つまり、GからCへの「完全4度」転調ですね。
4度や5度への転調って♯や♭が1つ、増えるか減るかくらいなので
転調したことに気づかない場合もあります。
さりげないのでクラッシックにも多いです。
一時期の小室作品やB'zなんかは「オリャ~」って感じの(?)
ハデな転調なので分かると思います(^_^)
「短3度」が多いのは意外と「元に戻しやすい」
からなのです。
サビとかで転調しても2番の最初には戻しておかねばなりませんからね。
PS、福岡方面に在住の方にはご存じかと思いますが
サトウの大ヒットCM!「大隈カバン店」
「ウサギのマークのランドセル♫」
あの曲は転調してるのですよ(^_^)
「大隈カバン店ピョンピョンピョン」
のところで完全4度の転調してます。
どうだ〜!(^_^)
(「なんじゃ~そりゃ~」って、九州以外の方はYoutubeで探してね(^_^))
来週はラストの曲です!
そして来週はボケます(^_^)
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