その時は前触れもなく訪れた
前日夜まで普通に散歩に行って、ご飯を食べて普段通り就寝した。本当に何の前触れも無かった。と思う。
2020年6月21日(月)
AM6:00
私はいつものように起きて、2階の寝室から1階のリビングへ降りた。メロディーはリビングに伏せていて、私が「おはよう」と声をかけると、上目遣いにこっちを見た。
メロディーは2階で私と一緒に寝ていたはずなのに、途中で1階で寝ている夫の足元に移動したり、とその時の気分によっていろいろな場所で寝ていたので、リビングに伏せているメロディーに別段違和感はなかった。
1.まずは散歩 2.そのあと朝ごはん
「さんぽ、行こうか」と声をかけたら、昨日は喜んでサッと立ち上がって玄関へ行ったのにその日は声をかけても上目遣いで伏せたまま動かず。
その日の天気は曇りで気温もそれほど上がらない予報だったから、ごはんの後でさんぽでもいいかな?と思って
「じゃ、先にご飯にしよっか」と声をかけた。
いつもなら、「ごはん」のワードを聞き逃すなんてことは絶対にないのに、私が声をかけても伏せたまま動かない・・・・。
ここで初めて「あれ?」と思った。もう一度「ごはんだよ」と目を合わせて声をかけたのに立とうとしない。ボウルにご飯を入れても立ち上がらない。
「どうした?メロディー?」
多分、私の声が大きかったんだと思う。夫が起きてきた。
「メロディーがおかしいの。ご飯を食べない」
そんな会話をしていたら、よろよろとメロディーが立ち上がった!この時のよろよろは今まで1度もみたことがないぐらいゆっくりで、私の心臓は急にドキドキしてきた。
立ち上がったメロディーはご飯の方にはいかずに、よろよろとリビングから出て2階へ上がろうと、階段に足をかけた。
たどたどしい足取りでそれでも2,3段はのぼった。止まって振り返ってこっちを見る。目が言っている「2階へ連れて行って」
夫が抱っこして2階で布団へ寝かせた。
AM7:30
<普段と違う事>
・ごはんを食べない
・よろよろ歩いた
・階段を自力で登り切れなかった
どこかを痛がる様子もない。はぁはぁと息が荒いわけでもない。顔つきもいつもと変わらないようにその時は感じていた。
でも、結局メロディーはそのまま2度と立ち上がれなくなっちゃった・・・・
PM12:00
2階の自分の布団で横になったままのメロディーの周りに心配そうにねこ達も集まってきた。白い小さな塊だったフォルテに加え、黒猫の親子Ⅽ(シー)とピッチもメロディーが大好き。
最初は写真のように布団の周りに座って様子をうかがっていたけれど、
いつものようにメロディーにくっついた。
普段と同じ光景に、私はちょっとホッとした。メロディーはちょっと脚が悪くなってきただけで、これから介護をすることになるのかな?なんて思ったりもした。
お昼になってもメロディーは起き上がらなかった。お水を飲ませようとしたけれど顔を上げないし、相変わらずなんにも食べようとしない。
大好きな食パンを持ってきて、鼻の近くに持って行った。メロディーは鼻をひくひくっとさせてこっちを見た。「食べていいの?」そんな目だったのに、実際にはパクっとできなかった。
私はパンの白い部分を横5ミリ、縦3センチぐらいにうすーくさいてメロディーの口に近づけた。もう一度鼻をひくひくっとして口から赤い舌がペロッと出てきた。その薄くてほんの少しの食パン きっと味なんか分からないほど を口にした!
これが最後にメロディーが口にできたもの。このあとは何を近づけても舌を出さなくなっちゃった。
PM7:00
私が夕方から自宅1階で仕事をしている間は、学校から帰宅した息子がメロディーを見守っていてくれた。ようやく仕事が終わって、私もまたメロディーの所へ。
「あれ?夕方とちょっと違う」
メロディーは意識がもうろうとしているみたいで、目の焦点が合っていない。息も浅くなってきてる?!
あわてて「メロディー、どうしたの?メロディー!」と大きな声で呼んでもそれまでちゃんと反応していた目がこっちを見ない。
「うそでしょ?死んじゃうの?」「いやだよ、だめ」
息子も私も一生懸命メロディーに声をかけた。
「メロディー、まだダメだよ!死んじゃダメ」「父さんが帰ってくるまで頑張れ!」
大人になってこんなに泣いたこと、あったかな。どんなに呼んでも撫でても、メロディーの目はどんどん白く濁っていく。絶対見えていない。
「メロディー、待って。死なないで」
メロディーの上半身を抱きかかえて声をかけ続けていたら、夫が駐車場に車を停めている音が聞こえてきた。「早く、早く、メロディーがいっちゃう」
でも、「メロディー、父さんが帰ってきたぞ!ほら!」息子がそう言うと、メロディーの白く濁って膜がはっていた目の濁りがスッと消えて、駐車場の方向に黒目が動いた!!
これは本当に不思議な瞬間だった。目の焦点がちゃんと合って、父さんを探していた。父さんが駆け寄ってメロディーを抱きかかえた。
そのまま何時間も何時間も過ぎた。
夫と私はメロディーの隣に横になったものの、ちょっとメロディーが動いたり息が荒くなったりすると起き上がってメロディーの体をさすって声をかけ続けた。
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6月23日火曜日
一時はもうダメかと思ったけれど、そのままメロディーは翌朝まで頑張ってくれた。
息子は「こんな時に学校に行けない」と言う。私も一人になるのが怖かったのもあって高校に今日は欠席させると電話をかけた。
夫は後ろ髪をひかれる思いで、出勤していった。
学校を休んだ息子はずっとメロディーに付き添って体を撫でていた。18年の人生のうちの13年間一緒にいたメロディーと息子。
幼稚園時代はお菓子の取り合い。小学生の時にはリードを持ちたいと言ってはメロディーに引きずられて泣いていた息子。息子のベットの真ん中にメロディー、隅っこに息子が斜めに寝ている光景を何度見てきたことか。
私はこの日も自宅でなんとか仕事をこなした。夫も急いで帰宅してきた。家族が揃ってホッとしたのを覚えている。
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2階の布団で寝たままだったメロディーを布団ごと夫が抱きかかえて、1階へ降ろしてくれた。
メロディーの顔がまるで「うん」ってうなずいたみたいにコクっとした。「メロディー?どうした?」声をかけたけれど反応はなく、また同じようにコクっとなった。
PM8:45
家族が見守る中、メロディーは本当に安らかに、静かに息を引き取った。「もう一回声を聞かせて」メロディーの体の上から抱きついてそう言ったけれど、それももう叶わない。
食いしん坊だったメロディー、2日間何も食べられなかったから虹の橋を渡ったら好きなものたくさん食べてね。口元に大好きだったブラックベリーやお菓子をそっと置いた。
全力で家族を愛してくれたメロディー、うちに来てくれてありがとう。ずっと忘れないよ。
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