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凛として、しゃんとして。

最近、家の近くの公園に、泰山木を見つけた。

泰山木はモクレン科の植物で、
初夏に白い花を咲かせる。

大学生のころにうちに遊びに来た母が、
「街路樹に泰山木が咲いているよ」
と教えてくれた。
出会ったのはその時以来だ。

いつも目にするのは
仕事終わりの駅から家までの間。

背の高い木の上に、
その花はまっすぐ上を向いて咲いている。
真っ白な、大きな花を、咲かせている。
つぼみさえも下を向かず、真っ白なまま
まっすぐ青い空を見ている。

ここのところ仕事終わりの私は、慣れない環境と仕事のできない現実に打ちひしがれ、心が沈んでいた。周りの人がケータイを除きながら歩く中、私は地面を見ながら歩いていた。

そんなとき、ふと目線を上げると、
真っ白な大きな泰山木の花が目に入った。

なんてきれいなんだろう。

なんて力強いのだろう。

見つけた途端、心の中の黒いものが消えて、
というよりも不安を一瞬にして忘れて
数秒前まで暗い表情が張り付いていた顔が
パッと明るくなった。

白く大きくしっかりと高い木の上で咲くその姿は、まさに今自分が憧れる姿だった。

凛として、しゃんとして。

背筋の伸びる思い。

とは言っても、
どうしても仕事帰りは沈んでしまう。
それでも顔を上げよう。

明日もきっと、
私はその姿に元気をもらうだろう。