1991年 SideA‐8「 Good-bye My Loneliness/ZARD」
坂井泉水作詞 織田哲郎作曲 明石昌夫編曲
・「結婚の理想と現実」(フジテレビ系 1991/1/10~3/21)主題歌
フジテレビ木曜夜10時枠1月クールドラマ「結婚の理想と現実」主題歌。B’zとともにビーインググループの中核を担い、90年代最も成功したアーティストのひとつであるZARDのデビューシングルである。
「結婚の理想と現実」は、のちに数々の大ヒットドラマや大ヒット映画を世に送り出した亀山千広・現BSフジ社長が初めて製作プロデュースしたドラマである。1999年に出たZARDのベストアルバム「The Single Collection~軌跡~」の特典だった「ZARD ARTIST FILE」というブックレットに亀山プロデューサーのインタビューが載っていて、そこには、ビーイングの長門大幸社長にこういう曲が欲しいと事細かく指定してそれに合った曲を作ってもらった、とある(ポリスの「見つめていたい」みたいなベースラインで、というようなことまで注文したという)。そして歌わせる人を決めるために女性ボーカルのテープをたくさん聴いて、気に入った声があったので「この子は誰ですか」と聞いたらそれが坂井泉水だったのだと。そして彼女とは一度も顔をあわせることなく曲は完成したという。
当時のビーイングの製作方式が垣間見えるが、もしこれが事実だとすれば、この曲はZARDのデビュー曲として用意されたものではさらさらなく、なおかつこのタイミングでZARDがデビューしたのは亀山プロデューサーが彼女の声を選んだからだということになる。いわばZARDの生みの親だ。だからこそこのZARD初のベスト盤の特典ブックレットの冒頭に、亀山プロデューサーのインタビューが載っているのである(ちなみにこのベスト盤には「Good-bye My Loneliness」は収録されていない)。
そしてもうひとつ。亀山プロデューサーに次いで2番目にコメントが載っている朝妻一郎・フジパシフィック音楽出版社長によると、亀山プロデューサーは、この時自身の初プロデュースドラマの主題歌を大滝詠一に頼みたいと依頼してきたという。朝妻社長が本人に話したところ、大滝詠一は断る代わりに「今はビーイングだ」と朝妻社長にアドバイスしたのだという。つまり大元をたどると、ZARDデビューの生みの親は大滝詠一だということになる。「おどるポンポコリン」が大ヒットしていた1990年秋のことである(両者の証言は他にももろもろニュアンスが異なる。当事者の証言というのは得てしてそういうものである)。
それにしてもこの時、「東京ラブストーリー」と同じクールに大滝詠一によるドラマ主題歌が実現していたらどうなっていただろう。90年代のミュージックシーンはまた違った様相を見せていたかもしれない。