1991年 SideB-8「SAY YES/CHAGE & ASKA」
飛鳥涼作詞・作曲 十川知司編曲
・「101回目のプロポーズ」(フジテレビ系 1991/7/1~9/16)主題歌
フジテレビ系月曜9時枠7月クールドラマ主題歌。タイトルバックでイントロを聴いただけで「これは流行るな」と思わせた。CHAGE&ASKAにとって初めてのオリコン第1位獲得曲で、最終的には280万枚を売り上げた(実はこの曲のメガヒットには、ドラマのタイアップ効果とは別に、同時期にASKAのソロシングル「はじまりはいつも雨」のヒットがあったことが大きく寄与している。逆に考えれば、主題歌「SAY YES」への注目がドラマの成功にフィードバックしているという側面があるということは、もう少し語られてもいいかもしれない)。
「学校へ行こう!」の浅野ゆう子同様、浅野温子の主演はいわば守りの起用であった(「東京ラブストーリー」の直後の月9にW浅野が続けて起用されたのはもちろん偶然ではないだろう)。攻めの要素を担ったのはフジテレビのドラマ初出演の武田鉄矢である。実はこの年、武田鉄矢はNHKの大河ドラマ「太平記」で楠木正成を演じている。大河が初めて南北朝を描き、大河史上最高傑作の呼び声も高い「太平記」の中でも楠木正成は最も重要な役柄のひとつである。しかも正成自刃の回の放送は9月15日。「101回目~」の最終回前日である。これだけ質の違う芝居を平行して収録していたということは、もちろん不安もあっただろうが、結果的には双方のドラマに好影響を与えたと思う。つまりいい意味で、こっちは片手間だったのだ。星野達郎役の吹っ切れた演技はこの偶然が生んだ産物だったと言える(このあたりのことは、当時武田自身にインタビューしたのでよく覚えている。もちろん本人は片手間だなんて一言も言っていないが)。
むしろ“純愛3部作”などといわれて(当時フジテレビは「すてきな片想い」「東京ラブストーリー」「101回目のプロポーズ」を”純愛3部作”と名付けてプロモートした)緊張したのは浅野温子の方だろう。浅野温子は「あぶない刑事」あたりから、「パパはニュースキャスター」「抱きしめたい!」「ママハハ・ブギ」「世界で一番君が好き!」と、ドラマではずっとコメディエンヌで成功してきた。それが30歳になっていきなり悲劇のヒロイン役。しかも相手は強敵、それも十分肩の力の抜けた強敵・武田鉄矢である。ナーバスになっても無理はない。
最終的に浅野温子は全力の演技で二の線を守り抜き、達郎の無償の暴走=視聴者の夢に応えた。その彼女の姿こそが、突飛なエピソードやフィクショナルな名セリフの数々にリアリティーを与えたのである。時代のエネルギーも味方につけ、ドラマは大きな成功を得た。野島伸司脚本、光野道夫・石坂理江子演出とも最高のコンビネーション。二見、三見に十分耐える堂々たる傑作。いまやクラシックの一つと言っていいだろう。