庄内の海沿いを走るブロンプトンs
#やまがた田園サイクリング (実走:2022. 5)
・はじめに
今回の田園サイクリングは、山形県の日本海側、庄内地方である。
鶴岡郊外の大山の町から一山越えて三瀬海岸に下り、海沿いを快走、しかるのち湯野浜温泉からかつての庄内交通鉄道線の廃線跡を辿って大山に戻る周回コース約37km。
短いけれどバラエティに富んだ道であり、本県におけるお気に入りルートのひとつである。
・大山から水沢
起点の大山は羽州浜街道の宿場町であったほか酒造でも栄えた古い町。
今も一部に町屋造りの古い街並みが残る
クルマを大山公園に置いて走り出す。5月ではあるがまだ桜が楽しめた。
県道336で西に向かう。
途中山形県が設定したサイクリングルートの標識があるが、そのルートはR112でトンネルを通りいきなり海岸の加茂に出るというもの。今日これから走ろうとするルートのいいところを全部ショートカットしてしてしまう道のりだ。楽しくないだろうそんなの。
まずはJR羽前水沢駅を目指して田んぼの中の一本道を行く。
なんか向かいからミニベロ乗った人が来るようだ…。逆光でよく見えなかったのだが、しかしすれ違う際に見てみたらブロンプトンではないか!
庄内の田んぼのど真ん中でブロンプトン3台の邂逅!普段着で乗っていたから地元の人だろうか。
・ひと山越えて三瀬海岸へ
その先は平野と海を隔てる山の中へ。くねくねと三度ぐらいくねって高度を上げて峠に至る。
日本海東北道ができる前はこの辺りも秘境という感じだったが、今では道路ができたせいでずいぶん景色がひらけた感がある。
海沿いの三瀬(さんぜ)集落まで一気にダウンヒル。
三瀬の町も鄙びた感じでよい。昭和時代に電車に乗って田舎に海水浴に来た小学生の気分になれる。
国道7号の向こうは三瀬海岸だ。この界隈の海水浴場の中ではもっとも静かで鄙びていることで人気で、わたしも学生の頃、当時ここにあった国民宿舎に泊まって数日を過ごした思い出がある。
しかし最近ではラーメンのメッカとしてもすっかり有名になってしまった。
琴平荘である。この地の海の家がシーズンオフの商売として営んでいたラーメン屋が全国区の人気となって衆目を集めることとなったのである。今も夏期は海の家を営業している(ラーメンといえば大山のいろは食堂も地元民に人気でおすすめ)。
・海沿い快走サイクリング
短い間だが国道7号の上り坂を我慢すると、由良漁港に下る道が岐れる。
由良の先はそのまま海辺の静かな道をのんびり走ることができる。本日ベストの区間といえよう。
小さな漁村をいくつか過ぎると加茂水族館の建物が見えてくる。ここはクラゲの展示で近年一躍有名になってたいへんな人気だ。ラーメンも水族館もこのあたりのは突然実力が認められてブレイクするのである。
・湯野浜から廃線跡サイクリング
加茂の先は国道112号に合流、少し交通量は増すが海辺の道は続き、ほどなく湯野浜温泉に着く。
かつてここから鶴岡の街まで小さな電車が走っていた。庄内交通湯野浜線である。1975年に廃止になったが、線路跡はサイクリングロードとして整備されて今も自転車で辿ることができる。
湯野浜を出ると木立の中をゆるゆると上り勾配の道が続く。
いこいの村庄内まで登ると平野が見渡せる。ここからはずっと下りだ。線路は山を越えるために大きく迂回していたわけだ。
・善宝寺
平野に降りてくると旧善宝寺駅。
駅構内は廃止後も鉄道記念館として保存されていたが1999年に閉館。保存展示されていた電車も年々破損が進んでいる。電車を覆っていた屋根も破損して近年は雨晒しの状態で、近年訪れるたびに傷みがますます進んでいるのは心苦しい。
善宝寺は海事漁業の信仰を集める古刹で、五重塔(魚類の供養塔!)ほか文化財建築が連なる。あなたが魚類でなくても足を停めて参拝する価値はある。境内の池に棲む鯉が「人面魚」として有名になったのも遠い昔である。
サイクリングロードはここで終わりで、この先鶴岡までの廃線跡はほとんど残っていない。いにしえの宿場町の面影が漂う家並みの中を走ればふたたび大山の街に戻ってくる。
輪行でくるならJR羽越本線羽前大山駅から。鶴岡市街から大山までの道は走っても楽しくない。
庄内空港から湯野浜温泉までは6kmちょっと。
(追記:善寶寺鉄道記念館はその後2022. 7に駅舎の解体工事が着工。保存車両については今回はそのままとのこと)
この翌月、鶴岡の街と湯野浜温泉をふたたび訪れることとなる。その話はこっち。