納涼ライド:山形県民の森周回ルート(銘水飲み放題ロード)
・はじめに
山形の夏は暑い。まあ最近は日本のどこに行っても暑いので逃げ場はないのである。
せめて少しでも涼しい道を走りたい。木陰が続く道とか、渓流沿いとか、空冷できるダウンヒルとか。
これらを鑑みるに、午前中のうちにちょっと頑張って県民の森まで登り(平地との差は四百数十メートルだから2.5℃ぐらい涼しくなる計算だ)、その先は畑谷から作谷沢を経て下ってくるループがよいと考えた。
このルートのすぐれたところは:
・県民の森は涼しい(平地との差は四百数十メートルだから2.5℃ぐらい涼しくなる計算だ)し、なんなら至る所に木陰が完備。
・その先は平地に戻るまでずーっと下りで自動空冷機能。
・しかも県民の森から畑谷を経て作谷沢までの随所に湧水の水場が整備され、銘水が飲み放題。
・県民の森まで登る
朝の早いうちに出発する、という目標はしょっぱなから頓挫し、市内の自宅を出たのは10時過ぎであった。暑さはまだ穏やかだがこの先のヤル気を感じさせる空気だ。
西バイパスを越えて田んぼの中の一直線農道を西進し、須川沿いに西公園、というのがわたしの市街地脱出ルートである。さらに門伝から山王に至り、旧狐越街道入口にたどり着く。登りの始まりだ。
現道の北側を登る旧道はGoogleマップに記載がない。通行するクルマもない(もっとも狭くて軽以外通行不能)が、この道に沿って上のほうの集落と平地をつなぐ電線が走っており、その保守のために舗装整備されているようだ。サイクリストにはありがたいことだ。
山王集落のはずれの現道沿いに「旧狐越街道の常夜燈」の案内板があるが、その周りを見渡してもどこにもない。じつはその奥の旧道に入ったここにあるのである。
旧道は七ツ松集落で現道に合流する。その先も旧道を辿ることはできるのだが、今日は素直に現道で登っていく。
県民の森が近づくと道は木立に覆われはじめて涼しさに一息つく。大沼を一周するサイクリングロード(ここでサイクリングしている人を見たことがほとんどないのだけれど)の緑陰クルーズでまずはクールダウン。
・県民の森から銘水ロード
白鷹山の麓に広がる高原地帯である山形県民の森。
太古の火山活動で形成されたカルデラ地形が作った湖沼群が森林の中に点在している。この一帯は集落も南側にあるだけで(大平〜獄原、しかも現住は数軒のみ)原野(というか耕作放棄地)が広がる。
今日の登りはここで終了。あとはほぼ全面的に下りである。最初だけ苦労すればあとはずっとラクできるのがこのルートのよいところだ。人生何ごともそうありたい。
県民の森をあとに下りが始まるとさっそく第一の水場があってひと息つける。
その先に待つ爽快な下り坂の先は畑谷集落。
上から見ると箱庭のような美しさがあり、鉄道模型を走らせたくなる。慶長出羽合戦の激戦地である畑谷城址でも名高い。
今回は寄らなかったがこの集落にも湧水「弁財天の水」がある。集落を取り巻いて流れる水路は沢上川に注ぎ、次に向かう作谷沢へと流れていく。水の里と呼ぶにふさわしい。
そのせいか、畑谷にも次の作谷沢にも飲み物の自販機はない。みんなおいしい天然水を常飲しているのだろう。
沢上川の流れに沿ってダウンヒルは続き、作谷沢に向かう。
その途上に次の水場、萬年水がある。水栓の怪獣感がいい(いちおう亀であると思われる)。
実は作谷沢という名の集落は存在しない。戦前に周辺の北作、畑谷、簗沢の3つの村が合併する際、各村から一文字ずつ取って付けた名という。下の字からそれぞれ取ったところがミソだと思う。
そんな作谷沢の実際の中心集落は簗沢。役場や郵便局がある。
旧作谷沢郵便局は通るたびに写真を撮らずにいられないよい建築。年々傷みが目立つようになっているがなんらかの形で保存できないものかといつも思う。
集落のはずれには第三の水場、龍神水がある。
水場もいちばん立派だし、水量も惜しげない。甕に手を入れると痛いほどに冷たい。
改めて喉をうるおした上で、置いてある杓でさらに頭からかぶってのクールダウンも爽快。
隣接の子安大明神の木立の成す木陰でひとやすみ。水と蝉の声と木陰。日本の美しい夏がここに置かれてある。
その先、最後に少しだけの登りが終わると、その先は平地に向かって長いダウンヒルの仕上げである。
どういうわけかこの区間はいつもあまり印象に残らない。
玉虫沼方面からの道がサイカチ(めずらしいカタカナ名の停留所)で合流するとクルマの量がやや多くなり、そのまま平地に急滑降するカーブの連続に突入する。
村木沢に下りてきたらあとは市内のおうちに帰るだけ… といっても最後のこの10kmちょいの平地ライドがいちばんつらかった。市街地に近づくにつれ風が暖かくなっていく。暖房ですかと(このとき気温34℃)
この季節のこのルート、西公園あたりまでクルマでくる方がいいと思いました。
そんなわけで水は飲み放題だが、山で食べものが買えるところはないので平地にいる間に買い出ししておきましょう。