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遠野をちょっと走ったブロンプトン
(2022.9実走)
#いわて里みちサイクリング
遠野に行くのは十数年ぶりだった。
その間に高速道路ができて、内陸からも沿岸部からも遠野へのアクセスがずいぶん便利になった。
前に来たときは(半分仕事だったけど)遠野から西の川沿いに伸びる自転車道を往復したのだったが、美しい農村風景が広がる中に柳田國男「遠野物語」ゆかりの地が点在する東側のエリアは行けずじまいだった。
今回はあまり時間もない中ながら、前回行かなかったその辺りをちょっと走ることができた。
遠野という観光地は特異である。
カッパも、座敷わらしも、もちろんその地にいて見られるわけではない。訪れる者の想像の中にだけにあらわれ、その体験を求めて皆訪れるのである。
伝説伝承の地として欧州ケルトの地とか引き合いに出されるが、あっちはまだ目に見えるモニュメントがある分わかりやすい。
遠野を味わうには想像力が必要だ。
今回は、前回行ってない西側エリア、山口の水車あたりまでの農村風景の中を走ってみる。
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郊外の観光施設/野外博物館・伝承園にクルマを置いてブロンプトンで走り出す。
県道の川向こうの細い道を辿る。護岸してない川の風景がいにしえの時を彷彿とさせる。
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山口集落に向かうなだらかな登りは旧大槌街道に続き、その先は山を越えて沿岸部に至る。
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山口の水車は今も稼働している。遠野物語モニュメントの中でも数少ない実在のオブジェである。
集落の家も景観に配慮してか伝統様式を残した趣のあるものが目立った。
山口集落については市当局によるガイド冊子に詳しい。
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デンデラノ(蓮台野)。60歳になった者はここに移って自活を強いられた。口減らしの姥捨&互助施設といえる。
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遠野、とくに由緒のない土地でも地形や川が織りなす日本の原風景感が至るところに溢れており、それだけでも大きな魅力がある。また走ってみたい。
柳田國雄はたまたまこの土地のインフォーマントである佐々木喜善に出会って遠野物語を編んだが、東北各地、ひいては日本中に遠野物語類似の伝承譚は無数に存在していたのだろう。そんなことを考えた。
遠野物語は青空文庫で読むことができる。↓
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宿泊したあえりあ遠野。
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妻氏は市街中心部にある古民家をリノベートした「こども本の森・遠野」を訪れて感動しきりであった。安藤忠雄が設計建築して遠野市に寄贈したものとして名高い。
写真を見た人らから「あんな高いところに絵本を置いたら子どもが手に取れないだろう」と非難が起こったそうだが、高いところのはあくまで見本で、同じ本が下の段に立てて並べてあるのだそうな。
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