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2018.3 ブロンプトンで吉野川沿いに五條まで走った件

春の近畿を走る旅も今日が実質最後だ。
前日は奈良県にホテルが取れなかったが、それをきっかけに一日三重県の山間部を走ることもできたし、人生万事塞翁が馬である。

さて今日目を付けたのは橿原の南、吉野川沿いの街とそれを結ぶ道である。和歌山と松坂を結ぶいにしえの街道に重なる。その道沿いの街を五條まで走って旅の締めとする所存だ。

吉野神宮駅から上市

今日の出発点は吉野。一帯は修験道の聖地かつ世界遺産でもある金峯山寺はじめ吉野神宮やら有名観光地が詰まった一帯だ。加えて名高い吉野千本桜の季節とあって、橿原から吉野に向かう近鉄電車はおもに楽しそうな中高年で賑わっていた。
吉野神宮駅で降りた大多数の乗客はこの先終点の吉野口からさらにロープウェイに乗り換えて我も我もと吉野山に登って行くのだが、わたしはしかし観光名所にも桜にも修験道にも背を向けてブロンプトンを広げて逆の方向に走り出す。

吉野神宮駅

上市の街並み

駅から吉野川を渡ると国道169号に並行した旧道沿いに古い家並みが続く。かつての宿場町上市だ。
しばしぐるぐると探索する。旧街道の面影が漂う家並みがいい雰囲気だ。

吉野木材協同組合の建物

ここから川沿いを西に向かう道は、北岸に交通の多い国道、南岸に静かな県道が川を挟んで並行する。もちろん後者を辿るのである。

下市に行きそこねたこと

上市があれば下市がある。こちらは商工業で栄えた在郷町であり、街並みも期待できそうと思い、一旦橋を渡って駅のある対岸に渡ってみた(これが失敗)。
下市駅周辺をひと巡りしてみたところでは、レトロなアーケード商店街があるものの古い家並みは見当たらない。
大したことないじゃんと言って先に進んだが、あとで調べてみたら下市の旧市街は川を渡らずに国道309号をそのまま少し南下した山あいに広がっていたことが判明した。
川沿いになかなか趣のある建築が点在しているようで、訪ねそこねたのはたいへん迂闊かつ間抜けなことであった。だって上市が北岸にあったら下市もそっちだと思うじゃないですか。なんか駅もあるし。
実際に訪ねた御仁の記事を貼って埋め合わせとする。

南岸の道を行く

下市の先、川は北岸の山をまっすぐ突っ切る国道から離れて蛇行し始める。県道はそのまま川に沿って続き、メインの交通から離れた静かな一帯を走っていく。

よい道にはよい郵便局がある

この一帯はカヌーの名所として人気のようで、山の中にいきなりモンベルのショップがあってびっくりするなど。

突然モンベル

ほどなく五條の町に入る。

五條の街並み

南北の街道が交差する交通の要所にして吉野川の舟運の拠点で栄えた五條は、幕府の天領とされ重要な町であった。今も重厚な商家の家並みが残り、国の重伝建に指定されている。

伊勢、高野山にそれぞれ向かう街道の交差点

ひと通り街を見たあとで、走り足りなかったのか郊外の農村をひと巡り。

町はずれに突然出現する高架。国鉄五新線の遺構だ。

五條から紀伊半島の山をぶち抜いて新宮に鉄道を通そうと着工したものの途中で中止になってしまったものの名残である。

昭和50年代に計画が中止となった時点ですでに路盤が完成していた区間は、のちにバス専用道として利用され、2014年まで路線バスが走っていた。BRTの先駆けと言えなくもない。
ちなみに新宮と五條を結ぶ公共交通のコンセプトは既存の道路を走る路線バスで実現され、五條からさらに大和八木までを結ぶ路線は日本最長の路線バスとして有名である(所要6時間)

国鉄五條駅からJR、さらに吉野口で近鉄に乗り換えて橿原のホテルに戻る。

東日本ではおおかた引退済みの103系がまだ健在(改造顔)

20kmちょいの短いサイクリングだったが、上市と五條のふたつの街並み、そして川沿いの風景を味わうことのできるよいルートだった(それにしても下市を通り過ぎたのが悔やまれる)。

明日はこの度の最終日。御所まで花見がてら走って街並みを巡ったのちに帰途につく。


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