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MUJI BGM vol.28 で聴くエストニア伝統音楽 〜 森と風の調べ

MUJI BGMのすごいところ

無印がシンプルに「BGM」とだけ銘打ったCDを出してもう何年だろうか。調べてみたら2001年からだ。今回でVol28を数える。それらは実際に無印の店舗BGMとして流されてきた。
「暮らしの中から生まれ、時代を超えて暮らしに息づく世界の音楽」というテーマで編まれたアルバムだが、つまりは伝統音楽、トラディショナル、その界隈の愛好者は「トラッド」と呼ぶことも多い。素朴で親しみやすく、それでいてどこかエキゾティックな感じがMUJIの製品イメージに合致しているのだろう。

世界各地の音楽を取り上げてきたシリーズだが、ヨーロッパ、とりわけケルト圏と北欧諸国のものが多い。
その概要やポリシーについてはこの記事がよくまとめている。

無印良品で流すためだけに現地に出向いて演奏家を手配・レコーディングするという気合の入った無印良品オリジナルのBGMです。アルバムごとにその地域の音楽に通じたコーディネーターの人が関わり、現地で活躍する若手や一流のアーティストを呼んでいます。詳しい人が見れば「このアーティストも!?」とビックリしてしまうような顔ぶれになっています。(中略)

その地域の民族音楽に関する事前調査から始まり現地の音楽に通じたコーディネーターとも協力、レコーディングをお願いする現地のアーティストやエンジニアを手配して、最終的に音楽チーム2人と撮影チーム2~3人で現地に向かいます。

上の記事より

今回のエストニア篇

エストニアという国とその文化にただならぬ興味があり、自転車旅にも2度行ってるわたしは、以前からエストニアのトラッドも現地のショップからCDを通販で買うなどして、いろいろ聴いてきた。
ここ数年、MUJIのこのシリーズはフィンランド、ラトヴィアと近所の国の音楽を攻めてきていたので、そのうちきっとエストニアが来るぞ来るぞと待ち構えていたのだった。そしたらやはり来た。

エストニアの伝統音楽の特徴は、単純でアルカイックな旋律の持つ素朴な情緒だ。伴奏するのは各種笛、アコーディオン、フィドル、そしてカンネル(フィンランドのカンテレの兄弟)などの伝統楽器。
それは、言語や文化の面で兄弟のようなフィンランドとも、東隣のロシアとも異なる、独特の空気感を持つ音楽だ。
無印の店舗にも、あなたのお部屋にも、現地の草いきれや鳥の声を連れてくるだろう。

ギターのつま弾きをバックに女性ヴォーカルが歌うM4、バグパイプのパワフルな独奏M5、カンネルのM6、13、笛とグロッケンシュピールの掛け合いがファンタジックなM9、女声ポリフォニーのM14、ギターソロM15などがおすすめ。

日本は9月になってしまったが、本格的な秋が来る前にこれ聴いてバルトの夏を追体験しよう!

蛇足
前回vol27のオランダ篇からはフィジカルCDの販売が無くなり、配信もしくはダウンロード販売のみとなっている。
従来のCDには、解説や演奏者のクレジット、そして現地の情景を切り取ったミニ写真集が付いていた。ダウンロード販売のみとなった前回オランダ篇でも、購入すると同様のコンテンツにアクセスできた。
さて今回はどうなんだろうと思い、その件をMUJIのカスタマーサービスに電話で問い合わせてみた。
すると「BGMは現時点でVol27までしか出てませんが…」との回答。いやいや、もう配信で聴けるようになってDL販売もしてるからお尋ねしてるんですよと言うと、「担当部署に問い合わせますので折り返し電話します」とのこと。
ヘンだなと思いMUJIのウェブサイトを見てみると、なんとBGMのカタログにもまだ出てないではないか。Vol28が出たことが会社全体に共有されてない!
というわけで現在回答待ちである。付いてるのならDL購入する所存である。

20240918 追記
その後無印から電話で回答があり、
Apple musicで購入するとデジタルブックレットが付いてきてDLしてみることができる(他のプラットフォームで買ってもついてないので注意)。
内容は演奏者のクレジットと紹介、あと11ページに及ぶ写真集からなる。写真はこれまでの各国シリーズのものと同じく、エストニアの自然や日常を捉えたものだ。

クレジットを見れば、若い世代が盛り上げるエストニア伝統音楽シーンの立役者が演奏者として顔を揃えている。
来日公演もしている売れっ子の Trad. attack!(M9)、マリ・カルクン(M4)はじめ、伝統音楽というイメージをはぐらかされる若い顔ぶれだ。
M12、M14 は南西部ロシア国境近くに住む少数民族セトゥ人の音楽。
また、ここに参加したいくつものグループのメンバーであり、本作のプロデュースも手がけた八面六臂の立役者がヤルマル・ヴァバルナJalmar Vabarna だ。この人の今後に要注目である。

(写真は2013年の自転車旅から)



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