春の小一時間ポタシリーズ4 : 秋田・ 強首温泉と旧陸軍演習場の風景
秋田県南の横手で所用を済ませたのち、われわれは秋田市に向かうミッションを帯びていた。クルマで高速道路で移動する途中、小一時間を利用してちょっとポタれる一角はないかと地図を物色した。
県南部と秋田市を結ぶ高速道(地図黄線)は山がちな地域を突っ切るため気軽に自転車で遊べる場所はあまり多くない。そんな中で西仙北SA付近に広がる平地(地図赤丸)がちょい乗りによさそうだった。
そこで、西仙北PAで降りて雄物川沿いに強首(こわくび)温泉まで行き戻ってくる田園周遊ルートを考えてみたのである。
西仙北SAは、かつてはレストランもあって食事した記憶もあるのだが、近年廃止されて今はETC専用出口となっている。出口にある広大な駐車場から走り出す。
西に向かうにあたり交通量の比較的多い県道は避けたい。地図で見ると雄物川沿いに堤防上の道か農道がありそうだと思ったがこれは失敗だった。堤防はさきの水害の後だからか改良工事中で、堤防上の道も舗装途中、そうでない区間は未舗装で荒れている。よって川沿いクルーズはあきらめて南側の集落道を西にたどって強首に向かう。
強首温泉
強首温泉は古くからの温泉地かと思いきやそうではなく、昭和39年にたまたま天然ガスのボーリング調査で掘っていたらガスじゃなくてお湯が出たから温泉にしました、という棚からぼた餅的な由緒である。よって強首集落は温泉郷っぽさが全くなくて拍子抜けする。
そんな中で秘湯/古民家愛好者に有名なのが一軒宿の樅峰苑だ。
これも古くからの温泉宿ではなく、地域の由緒ある旧家の屋敷だったのを温泉が出たのを機に旅館として開業したというものだ。
宿泊以外でも日帰り入浴のほか、料金を払って内部の見学もできるという。このときは道中の途中でもあり先を急ぐので、門から中を覗いただけで済ませた。しかしいずれ再訪の機あらば中に入って風情を味わってみたいと思わせる佇まいであった。
開拓地の謎
田んぼの中の一本道を南に走り、次いで東に戻る道に入る。
坂を登った先には平坦なプラトーになっており、一面の畑や牧草地の中を真っ直ぐな道が走っている風景は北海道の開拓地を思わせる。秋田県のこの地域にこのような風景があるとは意外であり、走っていてたいへん気持ちのいい一角であった。
もともと最初に温泉が出たのはこの付近で、近年まで数軒の温泉宿があったという。オリジナル強首温泉郷だ。(さきの樅峰苑も、今では自家源泉だがかつてはここから数kmを隔てて湯を引いていた)
しかし現存するのは一軒だけ。その一軒も外から見たらはたして宿なのかどうかもわからなかった。後で調べたら宿を廃業後に設備を転用して巨大な貸衣装撮影スタジオとして営業中とのことで驚かされる。
あとでさらに調べたところ、今日走った強首周辺、最初に挙げた地図の赤丸そのもの一帯がかつて旧陸軍の演習場だったことを知った。それを戦後に農地として開拓したものがあのプチ北海道だったのだ。開拓地ムードもさもありなんである。
演習に来た兵士たちも宿営中に風呂に入りたいなあと考えたに違いないが、よもや演習場の地面の下に温泉が湧いているとは思わなかったろう。
川を渡った西側の一帯にも平らかな農地に走りやすい道が広がっており、さらに拡張したよいルートを作ることも可能だろう。
軍の演習場になる以前、広漠たる原野だったころの風景をも幻視できそうな一帯であった。
ちなみに昨年急死したC国の李克強前首相は在職時代「李克強首相」であり、字面に強首が含まれ、「りかつ・こわくび相」だった可能性もあるが関係は不明である。その突然の死には陰謀説も囁かれているが、この辺にゴミや汚物を捨てたことがあるのかも知れない。