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【自作詩集】 霧の森〜記憶を彷徨いながら〜

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オーストラリアに来てからの風景や心情を綴った詩 心から消し去ることのできない想いなどの書き殴りの詩
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#詩のようなもの

【詩】漂う

【詩】漂う

夢を越え
宇宙を越え
時空を越え

あてもなく漂う

どこに行きたいのか
わからなくて

空気や
水や
エネルギーのように

引き寄せられるままに
彷徨い続ける

「何処に行きたい?」

僅かな記憶の欠片から
悲しい音色だけが流れる

安らかに留まれる場所が
見つかるまで…

【詩】祈り

【詩】祈り

全ての経験は
祈りに代わる

楽しかった経験
嬉しかった経験

『素晴らしい経験をありがとう』と
笑顔で魂に語りかける

美しい記憶は
内なる世界を
愛に満ちた
優しい場所にしてゆく

悲しかった経験
怖かった経験

『大丈夫安心して』と
手をひき
愛に満ちた
内なる世界に
連れていく

私とわたしが出逢う場所

何人も何事も
評価する事なく
素直な心情を
受け入れ抱きしめる

魂に微かな光が宿り

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【詩】暗闇を叩いて

【詩】暗闇を叩いて

広がる暗闇を
ハンマーで叩く

崩れ落ちるまで
叩いて叩いて

あちこちの裂け目から
光の筋が差し込んで

暗闇は星屑のように
流れて落ちた

粉々になった暗闇を
そっと手に取り
舐めてみる

砂糖のように
甘かった

【詩】自然の摂理+(プラス)

【詩】自然の摂理+(プラス)

真夜中に
人が吐いた
二酸化炭素を
観葉植物が吸う

真夜中に
観葉植物が吐いた
酸素を
人が吸う

誰もが知ってる
自然の摂理

でも思う

真夜中に
人は
心の痛みを混ぜて
二酸化炭素を吐く

真夜中に
観葉植物は
癒し成分を混ぜて
酸素を吐く

人が穏やかに
眠れるように

【詩】気配

【詩】気配

暗闇に聞こえる
シルバーフィッシュの呻き声
銀色に光る魚の尾を震わせ
床に落ちた人の垢や髪を貪る

暗闇に聞こえる
ゴミ虫の衣擦れの音
人の心の奥底に棲む
汚いゴミを漁り
衣をつむぐ

シルバーフィッシュは溢れ
ゴミ虫の衣は膨れ上がる

調理した肉も
その生臭さは完全に取れず
鼻先に血生臭さが残り
屠殺された時の叫び声が
聞こえてくる

自由にならない手足
喉に詰まった声
誰か…誰か…

次の生贄

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【エッセイと詩と写真】サンスターを追え!

【エッセイと詩と写真】サンスターを追え!

欧米でよく売れる写真の一つがサンスター。
太陽光を星が輝くように撮影した写真のことである。
サンスターは、希望、夢が叶う、縁起が良いなど色々言われているらしい。
私は、太陽の光が眩しくて、撮りたいと思う被写体が見つからないとサンスターを撮り始める。
もちろん、最も美しく、縁起が良いサンスターは日の出直後。
山の端であったり、木や岩の陰から輝く様を切り取る。
カメラ側も、サンスターを撮るための設定を

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【詩】通り過ぎた香気

【詩】通り過ぎた香気

有名ブランド店が立ち並ぶ大通り
ウインドウを横目に見ながら
少しだけ時間を気にして歩いていた
今日は面接の日だ
昨日まで何度も練習したから大丈夫
それでもまた
頭の中で繰り返し繰り返し
シミュレーションしていた

完璧...絶対に上手くいく

時々すれ違う人のことなど気にかけていられない
よくありがちなこの街のグレーの空だが
溢れる街のエナジーが
街全体を灰色に染めることはない

突然頭の中に艶か

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【詩】朧陽(おぼろび)

【詩】朧陽(おぼろび)

白い霧が街全体を覆う朝
天気予報では朝から晴れ
冬の寒さの中に
太陽の暖かさらしきものが
僅かに混ざっている

久しぶりに美しい朝だ
こんな日をカメラに
全て収めたくて
何かに導かれるように
心は少し焦りながら
いつものようにカメラを持って
森に出かけた

霧の中に朝陽がぼんやりと輝いている
朧陽(おぼろび)とでも言うのだろうか
私はこういう日を
『天の門が開く日』
と呼んでいる
必ずと言ってよい

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【詩】光る海

【詩】光る海

初秋の週末
また雨が4日間ほど続くと聞いて
急いで身支度をして大好きな海に向かった

到着してすぐに
靴を脱いでビーチサンダルに履き替える

砂浜から見る海は
陽の光を受けて
キラキラと星が降ってきたかのように
輝いていた

「わー、綺麗!」

私は砂浜に座って
ボーッと海のキラキラを眺めていた

打ち寄せる穏やかな波が
集めてきたキラキラを落としていく

水平線の彼方には
沢山のキラキラが集まり

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【詩】午前2時のスパイラル

【詩】午前2時のスパイラル

誰もが言った
彼女は聡明活発
ウイットに効いたジョークで
みんなを笑わせ いつだって
リーダー的存在だったって
全てを完璧にこなし
怖いものなどなかったと

誰かと時間を共有すれば
相手が何が好きかを察し
必要な言葉を用意して
気持ちよくさせる名人だった
誰もが彼女を好きだった

どんなに荒んだ心を持つ者でも
優しく包める自信があった
心を宥め穏やかにできると自負していた
汚れた道を雪を積らせ白く

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【詩】ノスタルジー

【詩】ノスタルジー

幾つの夜を越えたのだろう

生ぬるい部屋の中で

脳裏に隠れていた記憶を
掻きむしるような
不安定な音楽が流れている

ダンスフロアで踊るカップル
どこだ?
皆んな微笑んでいる
微笑みが古過ぎて
現実だったのか
想像なのかわからない

坂道を下る若い女
赤いジャケットに
ホワイトのパンツ

誰だ?見たことあるけど
思い出せない顔
背が低かった筈なのに

記憶の断片だけが
浮かんでは消える
頼りにな

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【詩】時間のループ

【詩】時間のループ

いつまで貴方は
私を時間のループに
閉じ込めるつもりなの?

私はもう疲れきっている

どうしたらここから抜けられる?
ここは本当に私がいるべき場所なの?

何もないよ
あるのは頭の中を巡る
掴めないものたちと
時間(とき)を刻む音

どうして耐えなきゃいけない?
役に立たない思い出抱えて
何ができるというのか

過去の経験も知識もスキルも
今は使い物にならないガラクタ

自分のために生きる弱さよ

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【詩】初恋

【詩】初恋

小学校5年生の春
彼は遠くから見ても光り輝いていた
クラス替えがあって彼と同じクラスになると
私のところに来てこう言った
「ねえ、僕を見てたよね。
僕も君を見てたんだけど、気づいてた?」

席替えの時、彼は私の隣に座る予定だった子と
席の番号票を交換していた
先生に不正を知られずに
私達は隣同士座る事になった

ある日彼は机の下で私の手を握ってきた
びっくりしたけど嬉しくて
それから毎日ずっと手を

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【詩】風との出逢い

【詩】風との出逢い

私がカメラを持って森へ行くのは
心に棲みついた耐えがたい寂しさを
森の花達に投影させていたから

明るい小径と暗い小径があれば
私は迷わず暗い小径を選ぶ
太陽が照らす道は私には眩し過ぎた

行き着いた森の奥は薄暗く
人の気配はない
私にはこのくらいが丁度いい

出くわすのは動物たちだけで
鹿、野うさぎ、ワラビー、
笑カワセミ、コトドリに遭遇した

すぐに逃げ去ってしまうもの
遠くから私の様子をうか

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