シグナル伝達と液液相分離(後日加筆予定)


  1. mTORC1

  2. DYRK3

  3. cGAS

1.mTORC1
mTORは哺乳類などの動物で細胞内シグナル伝達に関与するタンパク質キナーゼであり、酵母を用いたスクリーニングでラパマイシンの標的分子として発見されたため、TOR (target of rapamycin)つまり「ラパマイシン標的タンパク質」の略として命名された(TOR1、TOR2の2種類がある)。
mTORは、複数のタンパク質による複合体(complex)を形成し、mTORCと呼ばれる。mTORCは様々なタンパク質と相互作用し、タンパク質合成やミトコンドリア機能、インスリンシグナル、オートファジーなど様々な代謝や成長に影響を及ぼすシグナル伝達の中心的な役割を担っている。
mTORCにはmTORC1とmTORC2の二種類があるが、今回は特にmTORC1に着目する。
mTORC1はアミノ酸やエネルギー、増殖因子に応答して活性化され、ストレスに応答して活性が抑制される。
ところで相分離により形成される構造体としてストレス顆粒(SG)が挙げられる。SGは熱ショックや低酸素などのストレス刺激によって誘発される翻訳開始因子eIF2αのリン酸化に応答して構築される細胞質中に一過性に形成される構造体で、その本体は翻訳を停止したmRNA、40Sリボソーム、種々のRNA結合タンパク質などが相分離したものである。特定のmRNAを選別し隔離する機能を持つと考えられているが、近年mRNAの選別装置としての役割を超えて、RNA中心のシグナル伝達ハブを構成していると推測されている[1]。シグナル伝達の中心であるSGの形成は、「緊急事態」を伝え、その一時的な存在は、シグナル伝達成分を遮断し隔離することによって、複数のシグナル伝達経路を変化させるのである。
mTORC1がSGに隔離されることが酵母で最初に見出された(酵母では単にTORC1と呼ぶ)。酵母TORC1は液胞膜上で活性化されるが、

全面的に参考にしたもの
・相分離生物学(東京化学同人)
・相分離生物学の全貌(東京化学同人)
参考文献
[1]Stress granules and cell signaling: more than just a passing phase?https://www.cell.com/trends/biochemical-sciences/fulltext/S0968-0004(13)00131-X

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