"Evolution of Robustness to Noise and Mutation in Gene Expression Dynamics"の個人的まとめ(書きかけ)
Evolution of Robustness to Noise and Mutation in Gene Expression Dynamicsは金子邦彦先生の論文です。
ここから読めます(https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0000434)
個人的なまとめ、(理解不足による)疑問点に関して書いていきます。
introductionの部分
ロバストネスについて前もって説明しておく。
「ロバストネスとは、様々な擾乱にあらがって機能を維持する特性のことを言う。(時として予想外の)環境の変化に対して、ダメージや変性、機能損失を最小限にとどめながら処理することが出来るとき、そのシステムや生物、デザインは「ロバストである」といえる。 遺伝学では、突然変異にもかかわらず生物の表現型が変わらないでいられる性質は、突然変異に対するロバストネス(mutational robstness)と呼ばれる。」[1]
本題に戻る。
生物では、この変化は遺伝的なものとエピジェネティックなものの2つの異なる起源を持つ。前者は遺伝的ロバストネス、すなわち高い適応度を維持するために必要な変異に対する表現型のロバストネスに関わるものである。後者は、分子数の変動や外部環境の変動に関係する。実際、同系統の個体の表現型は必ずしも同一ではない。例えば酵素活性やタンパク量は同じ遺伝型であっても異なる[2]。
先程の遺伝子発現の研究により、その揺らぎの原因が解明された。また、細胞の分化やパターン形成、適応において、ゆらぎがポジティブな役割を担っている可能性もある。一般に、ノイズはシステムを最適な状態に同調させ、それを維持する上で障害となり得る。生物の表現型は、環境の変動や分子の揺らぎがあっても再現できることが多い[4]
したがって、適応に関わる表現型は、このような遺伝子発現の確率的な変動に対してある程度のロバストネス、つまり、ノイズに対する「発生」ダイナミクスのロバストネスを保持することが期待される。より高い適応度を持つ表現型は、ノイズの下でも維持される。このような「発生学的ロバストネス 」は、進化によってどのように達成されるのだろうか。一方、進化の文脈では、もう一つのタイプのロバストネス、突然変異に対するロバストネスを考慮する必要がある。遺伝的変化が起こると、遺伝子の発現ダイナミクスが乱れ、高い適応度を持つ表現型が維持されなくなる可能性がある。遺伝的ロバストネスとは、突然変異に対する高適合度状態の安定性に関わるものである。
この2種類のロバストネスが自然選択の下で生まれるかどうかは、Waddington's epigenetic landscapeなどのの提案以来、発生ダイナミクスと進化論の文脈で長く議論されている。
ノイズに対する発生的ロバストネスと突然変異に対する遺伝的ロバストネス は関連しているのか?また、表現型のノイズは突然変異に対するロバストネスの獲得に関係するのだろうか?
遺伝と表現型の関係に関する理論的枠組み
自然集団では、表現型も遺伝子型も個体間で異なる。ここで、表現型を特徴づける変数をx、対応する遺伝子型をaとする母集団分布 P(x, a)を考えてみる[5]。
[2]https://www.science.org/doi/10.1126/science.1070919
[3]https://www.elowitz.caltech.edu/research
[4]https://www.nature.com/articles/16483
[5]http://chaos.c.u-tokyo.ac.jp/papers/bio1/jtbevol2006.pdf