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盛岡旅行はじまらない記

こんなにも上手いこといくかね、とさっきから心の中で笑っている。一周まわって上手くいったのでは?と思ってしまうほど、朝から見事なまでにすべての選択肢が裏目に出ている。


盛岡へ行こうと思ったのは、作家のくどうれいんさんがきっかけだった。敬愛している平野紗季子さんのPodcast、「味な副音声」にゲストでいらしていた回で存在を知り、桃を煮る人、うたうおばけ、コーヒーにミルクを入れるような愛、とご著書を読み進め、虎のたましい人魚のなみだで沼に落ちた。す、好きだ、と思い、狂ったように過去のブログを読み、インタビュー記事やコラムを検索し、Podcastで出会ったFM岩手の「丸顔たちは、きょうも空腹」を片っ端から聴き始めた。ちょうど胃がおしまいになりながら、あきらかに今わたし不健康だな、でもお腹空かないなと思いつつ、お菓子だけで糖質を摂りながら転職活動をしていた頃のことだった。



たった今いるコンビニにある無数の食品は何ひとつ食べたいと思わないのに、じゃじゃ麺が食べたい、と思った。岩手三大麺のひとつらしい。今まで存在すら知らなかった。「でっかい餃子みたいなもの」で、「食べ方が人によって違う」、「3回食べないと美味しさがわからない」「目の前の調味料で自分好みに調味して食べる」のだそう。なんだそれ気になる。
そんな中でやっと転職活動が終わって、同じタイミングでモノが食べられない時期が終わった。明らかにストレスからくる食欲不振だった。




今ならなんでも食べられる気がする、と思うタイミングと、平日の予定がない二連休が重なった。
そうだ、岩手いこう。



そうして思い立ったが吉日、ただそんなふうに思いつきで動いたからいろんなことが上手くいかないのだ。ということで前置きが随分と長くなりましたが、あまりにもトラブルが起きすぎて長くなったので岩手ドタバタ旅行記
……がちゃんと上手いこと流れ始める前の、ところまでです。



朝、5時半に目が覚める。スマホを弄りながらもう一度なんとか寝て、余裕をもって支度をした。バスも定時に来たし、よしよし予定通り。
本来であればどちらの駅で降りてもいいが、まあ近いほうで、と普段使わない駅の前で降りたのが運の尽きだった。すんごい列で駅員さんが何やら叫びながら何かを配っている。「人身事故の影響で、運転見合わせです!復旧の目処は立っていません!」



なんて?



普段使わない駅は接続が悪い。あと5分長くバスに乗って、いつもの駅に行けば良かった!タクシーが捕まる訳もなく、ガバッと乗り換え案内を調べて悟る。主要駅の事故ゆえ、あちこちに影響が出ている。運良くタクシーが捕まえられても間に合わない。レンタサイクルも在庫切れだ。はい、これは、どう足掻いても新幹線間に合わない。

もともと新幹線+ホテルのパックで予約をしていた。バスの行列に並びながら調べるも、時間の振替は行っていないのだという。これはどうしようもない。ということで、諦めて新しく往路の新幹線切符を買うことにした。ここまで八方塞がりになると一周回って落ち着いてくる。あらまぁ、とは勿論思うが、三連休明けで電車に飛び込んでしまうほど辛かった人のことを思うとチェッとは思えなかった。どうか望んだように、でもせめて安らかに、どうか。



しょうがないよねえと思いながら新しい切符を買い、改札に通すと、通れたものの、ビタンと後ろでバーが閉まってブザーが鳴った。「この切符は使えません」



なぜ??



近くにいらした駅員さんにお尋ねをする。本来であれば通れますけどねえ、と言いつつ、わたしが手に持っていた新幹線のチケット( だが、もうすでに時間は過ぎているのでただの紙切れだ ) を見て声をかけてくださった。

「あ、これ。使えますよ」



マジで???



そこからRPGの情報集めの如く、あっちの人に、あっちの窓口に、と案内されるところを周り、どうやら払い戻せることが分かった。おかえりわたしの1.5万円!!!!ただ、出発駅のみどりの窓口は激混みだったので、盛岡で払い戻すことにする。はー助かった、うれしい。そう思いながら数分後にやってきた盛岡行きの新幹線に乗る。自由席だがなんとか座れた。はーこれでひと安心。


……と、思っていたのだが。


盛岡に行くなら、と嬉々として選んだ「イーハトヴ、イーハトーボ 賢治の居た場所( ひらいたかこ+磯田和一 ) 」を読み終えても、「わたしを空腹にしないほうがいい( くどうれいん )」を読み終えても、着かない。なんなら途中でひと眠りしたが、それでも、まだ、着かない。


…………これ、やまびこだな?


そこでやっと己の誤りに気付いた。
東京方面から盛岡へ行く新幹線は二種類ある。「はやぶさ」と「やまびこ」である。前者だと1時間半ほどで盛岡まで着くのだが、目の前に来た「盛岡行きの新幹線」の存在が嬉しすぎたあまり、ろくに確認もせず後者に乗ってしまったらしい。ちなみに後者だと3時間ほどかかる。マジでやまびこやん。


やっっっっっ…………ほー…………くらい遠い様子で盛岡に向かう。遠いねえ盛岡。

( ※新幹線を乗り間違えたからです )






本を2冊読み終え、ひと眠りして、ここまで機内モードにしてスマホのメモにnoteを書いたところで、やっっっっっと盛岡に着いた。体感はもう夕方だが、まだ14時過ぎ!うれしい!となんだかよく分からないテンションになりながら降り立った。やっと着いたぞ盛岡。


あいにくの曇り空で空がどんよりとしており、薄暗いのもあって夕方のような気がしてくる。まずは一旦腹ごしらえ……と、向かうは北口、盛楼閣!


れいんさんが詠んだ短歌に惹かれて、気付けばこんなところまで来てしまった。遠かったよう長かったよう。一人で焼肉に行ったことは何度かあれど、焼肉屋で鉄板を使わずに冷麺だけ食べて帰る経験は初めてだ。Podcastで事前に「盛岡は焼肉屋さんで冷麺だけ食べても大丈夫」と聞いてはいたが、それでもなお不安はあった。その不安を吹き飛ばすほど、周りの人も冷麺を啜っている人ばかり。飛び交う注文も冷麺ばかりだった。これでいいのね本当に……!

噛めるひかり啜れるひかり飲めるひかり
祈りのように盛岡冷麺/くどうれいん 



届いた冷麺、う、う、美しい。つやんつやんに輝いている。なるほどこれは光ですわ……となるなど。
キュルリンと舞うようにして巻かれた麺はどこから掬えばいいやら分からず、毛糸玉をほどくみたいにして解いて食べる。美しく、かみごたえがあり、美味しい〜!

特に美味しかったのは出汁を絞り出す昆布みたくして添えられた牛肉だ。わたしが犬ならこればかりしゃぶっていたいと思う、ハード系お肉!噛めば噛むほどギュムギュム味が出てくる〜!


こりゃええ始まりですわ、と思ったのも束の間、ここからも、今回の旅は「なぜそうなる?」というほど空回りしまくるのでした。

次回本編、「行きたくてピン挿ししていたところに、片っ端から振られまくる」!
デュエルスタンバイ!

着いた喜びで撮った盛岡駅を添えて。
ここはメインの出口じゃないんよ

変わらず好きなように、おやすみ日記やメンバーシップの何も起きない日記、そして盛岡旅の記録を書き綴っていきます。好きなところを、好きなように、お付き合いいただけるとうれしいです🪴


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