#23 金髪フランス白人ティーン少女に男は皆色めきだつ 夢見るシャンソン人形 30代からの英国語学留学記 2018年2月20日
テストの結果が出る。
案の定、リスニングだけ壊滅的に酷かった。
ドミニクおじいさん先生に、家でもっとリスニングの勉強をしろ、と言われるのだが、何がベストな方法なのかわからない。
家でテレビを見たりインターネットで英語を浴びるほど聞くのが良い、と言われるのだが、残念ながら中学生時代から洋楽を浴びるほど聞いているのにこの惨状である。
どうすれば良いのか。
そもそもネイティブ英国人にとって、リスニングスキルなんぞ意識せずとも元来身に付けているものである。
彼ら自身にとって英語を母語としない人間が如何に英語の聞き取りが困難であるのか、身をもって理解することは永遠に不可能な訳であり、テレビやらネットやらで英語を浴びるほど聞いてトレーニングしろ、と彼らに言われても、正直困ってしまうのである。
せめて英語による会話を増やし実践経験を積もう、と思っても、発音の悪さと年齢からくる共通の話題のなさから、カルロス、オヌールとホームメイトのシナン以外と気軽に話しができる機会がない。折角英国にいるのに実戦経験を積むことが困難な環境にあるのである。
加えて3人ともそもそも英語ネイティブではないため、「正しい」英語を聞き取る訓練になるか、と言えばそれはまた別の話である。
嘆いても仕方がないため、色々と突っ込んだ質問をドミニクおじいさんと、他の先生にした結果、短文のシャドーイングを行うことを勧められた。
加えてシャドーイングに向いているWEBサイト並びにアプリも紹介してもらった(後ほど別エントリで紹介予定)
しかし分かってはいたがシャドーイングは苦行だ。苦痛でしかない。
移動時間や家での自由時間にイヤホンをつけて、無味乾燥な英文を聞きながら、ひたすら繰り返し声に出し続ける。
日本にいる時も何度か試してはいたのだが、ただただ辛くつまらないトレーニングである。自分が成長している、という実感もイマイチわかない。
しかしながら同時通訳者等のエキスパートはブラッシュアップのため必ず行っているトレーニングであると色々な所から聞いているので、泣き言なぞ言っていられない。
幸か不幸か、自分の英語能力がどの程度であるのが、ビビットに分からざるをえない環境に置かれている。フィードバックが痛いほど来る環境にあるので、シャドーイングによる成長の自覚はなくとも、外の実践でその成果がわかるため、辛いが続けようと心に決める。
テスト結果後、新しい生徒が3名クラスに加わることを知らされる。
ここの語学学校は1週間単位で滞在期間を自由に決められるため、毎週誰かしらの出入りがある。
一人は台湾人で、17歳の男の子。精悍な顔つきで男女問わず好感を持たれそうな雰囲気。驚くべきことに母親も彼と合わせて渡英しており、学校の外で息子を常に待っているとのこと。超ボンボンであるが、いい感じの好青年という印象を受けた。
もう一人はタイ人の30代前半の女性。
僕より年上だが見た目は20代前半にしか見えない、綺麗で溌剌とした感じの方である。
渡英前は銀行員だったが、仕事に不満があり、貯めたお金でバカンスを兼ねて語学留学に来たとのこと。僕と目的がほぼ一緒であるため、彼女とは仲良く出来そうである。
そして最後の一人は16歳のフランス出身の白人女性。
フランス人、と一言で言っても移民大国のため、様々な肌の色、出自の人間が多いのだが、彼女は昔のマンガで出てくるようなステレオタイプな白人金髪スレンダーで超美人。
100人中100人が即座に美人と言うレベル。
南北アメリカ人とは違う、昔からずっと欧州にいるプリンセスです感が凄い。
名前もフランソワーズ
ステレオタイプすぎる。
実際、白人だからと言って皆美男美女ばかりではないことは分かっているが、ここまで露骨に欧州白人のヒエラルキーの頂点、と言わんばかりのオーラを嫌味なく放つ人が実際にいることに驚いた。
今まで生で出会った人間の中で彼女が群を抜いて美人。
ルッキズムなんてクソ喰らえだと思っている僕ではあるが、そんな僕でも彼女はキレイ、いや異常にキレイと思わざるを得ないレベルであった。
フランス語訛りの舌ったらずな英語がまた妙に可愛らしく、しかも常に笑顔。他の国の人たちと英語を勉強できることを楽しみにしています、と殊勝な自己紹介をする彼女に、教室の男どもは全員心を奪われた。
美人が現れて教室全体が露骨に色めき立ち妙な空気になる。
80年代の学園ラブコメマンガのようなべたべたな展開。
1時間目終了後、(カルロスに常に怒られている)コロンビアの白人男子、ミゲルが早速彼女に話かける。
授業後、ミゲルの友人である他のクラスの南米系の男ども達が次々と我がクラスに集まり、皆一様に彼女を口説きだしている。
そして中東系の人間までも、他のクラスから次々と彼女を一目見るために教室に殺到する有様。
それなりの広さの教室ではあるが、彼女を口説きたがる男どもで教室はぎゅうぎゅうに完全に埋まってしまった。
そのため、普段ゆっくりと教室で休憩を取っている韓国人女子グループがはじき出される結果になってしまった。
加えてアジア系の男の子たちは、普段は数が多いということもあり、それなりに存在感は出せてはいるが、血走った目で押し寄せてくる南米系中東系連中に完全に気圧されており、皆すごすごと教室を出る羽目になってしまった。
確かに彼女は超絶美人ではあるが、そもそもまだ16歳の少女である。
二十歳そこらであればまだ分からなくもないが、明らかに中年という年齢の男たちまで、色めきだってアプローチかけまくるのは男として、というより人としてどうなのか。
特にカルロス。
お前は妻子持ちで48歳であるのに恥も外聞もなく口説きに行くとは何事なのか。
昼休み終了後、噂が噂を呼び、学校の男どもがドンドン彼女を一目見るため、そして口説くため押し寄せてくる。
そのような状況であれば恐怖を感じるのが普通なのだろうが、フランソワーズは天真爛漫なのか、それともフランス本国でもお姫様扱いになれているからなのかは分からないが、寧ろとても楽しそうな様々な国籍の男たちを丁寧にあしらっているようだった。
このような空気は苦手、というより自分が惨めに思えて堪らなくなるため、自分の息子と同じ年の小娘に夢中な呆れたカルロスを置いて一人外に出る。
するといつものようにオヌールが待っていたが、怒りの表情を帯びた顔つきであった。
「あんな可愛い子がクラスに来たのに何でお前もカルロスも俺に連絡しなかったんだよ!!!」
理不尽な怒りをぶつけられる。
オヌールは僕とカルロス以外友人がいなかったので、情報網から漏れており、昼休みになって件の容姿端麗フランス美女フランソワーズの存在を知ったようだった。
彼女と同じクラスの僕とカルロスは真っ先に奴にその旨連絡してくれることを期待していたようだったが、実際そんなことはなかったため、オヌールはそれを大変な裏切りと感じていたとのこと。
そんなの知るかよ。
ランチは久々にオヌールと二人で食事。
「お前は俺を怒らせたから今日はケバブな」という無茶苦茶な理屈で、ケバブ屋に行かされる羽目になってしまった。
しかし美人一人が来ただけで学校全体が何だか大変なことになってしまった。
僕とカルロスとオヌールのwhat’sappのグループチャットで、オヌールがカルロスをひたすら尋問している。
その結果、カルロスからフランソワーズはわずか1週間しか語学学校に居ない、とうことが分かった。
ホームステイでもなく、母親と一緒にオックスフォードの超高級ホテルに滞在しているようであり、母親がオックスフォードに1週間ばかし滞在する用事があり、昼間はやることがないのでこの語学学校に来ている、とのこと
闇が深いなオイ……
何故彼女は16歳という年齢で、地元の学校は普通にやっているこのタイミングで、何故母親は彼女を1週間だけフランスからイギリスに連れ出したのだろうか。
あまり詮索しない方がよい案件だと個人的には思った。
それを聞いてカルロスも彼女にはあまり関わらない方が良い、とアドバイス。口説きの輪に入った彼が言うのだから謎の説得力がある。
1週間しかいない、加えて母親と一緒という情報がオヌールにもネガティブに移ったのか、彼も深入りはしないことを決めたようだった。
ディナーの時間、シナンにフランソワーズというフランス人の美人が来たことを話す。
シナンはいい奴である。
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