#18 オックスフォードでSHITと連呼し、英語による大便呼称論争になる 30代からの英国語学留学記 2018年2月17日 その3
2時間待ち、やっと二人と合流。
大遅刻にも関わらず、なんの悪びれもなく登場する件のトルコ人とアルゼンチン人。
何がhow are you?だよ。terrible horribleでしかねぇだろ。
apologizeもsorryも言わない不遜な二人。
予想はしていたが謝罪の一言もないとは。
二人ともバスに乗る前に確認しなかった僕の自業自得だと本気で感じているので何ら謝る必要もない、という認識なのだろう。
言いたいことは山ほどあったが、それを伝えられる英語力が悲しいことにないため、too late! terrible!としか今の僕には言えなかった。悔しい!
毒づいても仕方がないので、早速昨晩遅くまで考えたプランを改めて提示。2時間も待っている間にロケハンも完璧に済ませており動線も美しいプランになっている。
まずは待ち合わせ場所のすぐ側にあるCarfax Towerに上ってOxfordの美しすぎる街並みを一望、と伝えるや否や、二人は再度何ら悪びれもなくこう告げた。
確かに今は13時だがそりゃねぇYO
しかし2対1では不利であるため、僕のプランは初っ端から崩壊。
いきなりランチに入る。
だが折角の土曜日のランチ。平日では訪れられない場所、レストランは高級店しかないため流石に難しいが、土曜日なら昼から空いている本場のブリティッシュパブでお酒を飲みつつパブフードに舌鼓なんてどうかしら、と提案。
しかしこれも二人は却下
僕から言わせにゃ、なんで土曜日なのに平日でも食べられるご飯を食べにゃあかんのか。
確かにイギリスのご飯は美味しくはない(何度も言うが不味くはないが旨くはない)だからと言って気軽に訪れることができない、異国異文化のブリテン島で、平時では食べることができないものにチャレンジしよう、というごく普通の感情が彼らにはないのか。
だが2対1だと勝ち目がない。
この日もわざわざGloucester Green outdoor street marketまで行き、いつもと何ら変わらぬ昼食を摂ることになってしまった。
オヌールは相変わらずケバブ。
こいつはケバブ以外食べると死んでしまう病気なのだろうか。
そしてカルロスも再びパエリア。毎日ここのパエリアは味が違うから俺はオヌールとは違う、と主張しているが流石に毎日パエリアというのはどうなのだろうか。
二人とも自らのナショナリティに即したご飯を渡英先でも平然と食べている。そのことに何ら恥じている様子はない。
食は文化であり譲れない部分があるとは言え、
何故少しも冒険をしないのだろうか。
食に関しては一切の知的好奇心が存在しないのだろうか。分からん!
僕は日本では滅多に見かけることがない、エチオピア料理屋の屋台でインジェラと呼ばれる伝統料理を購入。
テフと呼ばれる謎の穀物から作られたクレープのような生地にインゲンやらペースト状の謎の食材がごちゃごちゃ載っている。
まさに異国の食べ物、という感じで興奮し食す。生地に形容しがたい酸味があるが、餡は辛かったが食べ応えがあるのと謎スパイスで味気と香りがしっかりあり、美味しかった。
定期的に食べたい、とは思えないが、食べれなくはないし、美味しいかマズイか、と問われると美味しい方には入る。
少なくとも毎朝出てくる味のないイギリスのパンよりはずっと個性があり味があって美味い。
奇妙な食べ物を食している僕を見てオヌールが何を食べているのかと問う。エチオピアのインジェラという料理だよ、と答えると彼は信じられないことを公共の場で言い放った
(知ってはいたが)本当にこのオヌールというトルコ人はクソ野郎である。
百歩譲って親しい仲だからこそ通じるブラックジョーク、と処理できなくもないが、多種多様な人種が蠢くオックスフォードの屋台街でリンガフランカたる英語でこのような危険なヘイトスピーチを態々言うのは如何なものか。
この種の暴言は日本では匿名掲示板のスポーツ実況板で黒人選手がやらかした時に散見するくらいである。
面と向かって、音を発し、ヘイトにも通じるような言語を用いて、しかも大声で反笑いで発言するとは、デリカシーのかけらもない。
そもそもこんなことは思っていたとしても口に出してはいけないし、思うことですら罪な考えである。
言うまでもないが科学的根拠もない、誤った偏見である。
それはhate speechだから言うべきではない、と一応釘を指すも、ジョークよジョーク、と予想通り言い逃れしてきたため、面倒になってあまり深入りせず取り合えずスルーする。
本当、このオヌールという奴は何をしでかすが分からない。
だから二十歳そこそこと若いのに同世代の輪に加われず、年上で浮いているオッサンとしか組む他ないのである。
当初の予定とは大分離れた場所に来てしまったとはいえ、食事をしながらプランの修正を済ませることはできた。
色々な意味で冷や冷やしたランチを終え、いざ予定通り観光へ!!
とは、残念ながらならなかった。
またオヌールである。
あいつが大便をしたい!と強硬に主張してきた。
屋台街Gloucester Green outdoor street marketにはちゃんと公衆トイレもあるので、普通にそこでやれよ、と伝えのだが、”俺は綺麗なトイレじゃないとウンコはできない!”と我儘を言ってきた。どの顔でいうのか。
じゃあここに来る前に、家でしてから来ればよかったのに、と当然思ったことを伝える。
そんなん知るかよ。
オヌール、お前の存在そのものがウンコだろ。
友達なら大便が出来る綺麗な便所を探すのが当たり前、というのがトルコでは普通なのだろうか。
友達なら当たり前~というのも文化で違うのか?いやトルコという国籍は関係なく、オヌールという人間の問題であろう。シナンなら絶対言わねぇよ
カルロスもここに来てようやく僕の味方になり、さっさと公衆便所でウンコしろ、と当たり前の主張をする。
だがオヌールというモンスターに、ああだこうだ言っても埒が明かないのはこの1週間で分かっているため、諦めて3人でオヌールのお眼鏡に叶いそうな綺麗な便所を探すことになってしまった。
だがここでちょっとした問題が。
この文章では大便、ウンコと記載しているが、3人とも英語で大便を意味する単語としてswear word、要は放送禁止用語である下品な英語、"SHIT"を使っていたのだ。
オックスフォードの美しい町中で、しかも世界各国の屋台が並ぶ広場でSHIT, SHIT, SHIT,と肥満体系のアジア人、トルコ人、白人アルゼンチン人がクソ汚い単語を連呼し喧嘩しているのである。
日本で例えるなら京都の河原町で国籍バラバラの肥満体系外国人中年男3人組が「きれいな所でクソしたい!クソくらいで家でやれよ。クソなんて公衆便所でやれよクソが!」と大声で連呼しているようなものである。
醜いったらありゃしない。
恥ずかしながら、当時の僕はSHIT以外大便を意味する言葉を知らなかった。
おしっこであればpeeという単語が使われることは知っていたが(卑俗語がpissというのも知っていた)、何故かウンチの方は全く知らなった。
知らないとは言え、流石にSHITという言葉を公共の場で連呼するのは宜しくないことくらいはわかっていた。
誰かSHIT以外にSHITを意味する言葉を知らないのか。せめてそれを使おうと提案する。
しかし驚くべきことに、3人ともSHIT以外、大便を意味する英単語を全く知らなった。オヌールは端から期待していなかったが、スペイン語圏の人間であり、エリート銀行員として英語の語彙力が豊富なカルロスさえも「そういえばSHIT以外知らない!peeは分かるのだが」とのべ、かなりショックを受けていた。
後で分かったのだが、英語でウンチのことをpoopという。幼児語らしいが大人でも親しい友人や家族の間では普通に使うらしい。
丁寧に言う場合はfecesという。または俗語というか隠語でNo2ともいうそうな。因みにNo.1はおしっこのことらしい。
カルロスも大人なので流石にSHIT連呼はマズイと思い考え込む。
ネットで調べれば一発なのだが、何故か当時はその発想が思い浮かばなかった。オヌールの剣幕に押されてテンパっていたのかもしれない。
特にカルロスは基本的な単語は全て知っていて当然だと自負しており、実際語彙力は相当レベルの高い男であったため、まさかウンコを意味する丁度良い単語を知らなかった、という意外な落とし穴があったことにかなりショックを受けていたようであった。
「オヌール。SHITと言ってはダメだ。せめて他の言葉、もしくはジェスチャーで表現しろ。お前も大人なんだから」と妻子持ちインターナショナル一流バンカーとしての扶持故か、オヌールをここに来て急にたしなめだす。
だがSHITを今すぐにでもしたい、それも綺麗な場所でしたいオヌールにとって、大便を如何に問題ない英単語で表現するか、という我々の悩みなんぞどうでも良いようであった。
じゃあ公衆トイレでやれよ、と思うのだが。
気の毒ではあるっちゃあるのだが緊急時は贅沢言っていられないだろ、普通。
ここで日本にいた頃からお腹が弱く、常にトイレ問題の解決を考えていた僕から素晴らしいアイディアが浮かぶ。
学校の反対側にあり、たまに授業でも使う教会なら土曜日も空いていてトイレができるのではないか?
クソオヌールに褒められ、速足で教会へ向かう。
予想は大当たり。教会は土曜日も開いており、トイレも解放されていた。
オヌールの長いクソが終わるのをカルロスと待つ。
カルロスはネット辞書で大便を英語で何と呼称するのか調べていた。
まだショックを受けていた。
彼も一流銀行に勤める妻子持ちのバンカーである。彼のプライドが、卑俗語以外知らなかったことを許せなかったのだろう。
10分くらいしてオヌールは無事帰還。
当たり前の話だが、相当満足した様子であった。
この余計な発言にカソリックのカルロスがブチ切れる。
結構な剣幕でカルロスはキレた。
それを受け、イッツジョーク、イッツジョークと相変わらずヘラヘラして言い逃れするオヌール。
どうしようもない奴である。
僕もカルロスも彼より大分年上であり、それなりに分別はあるため、完全に甘えきっている。
そんなオヌールはまさにthe pile of shit(そびえたつクソ、クソ野郎という意味)と呼べる典型であると改めて思い知った。
クソクソばかり言ってもしょうがない。
今日の目的は美しい町、オックスフォードの著名観光地を回ることだ。合流後もこんな感じで躓いてしまい、果たして無事観光名所を回れるのだろうか。不安は尽きない。