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【DXリアルと予測】#02:電子カルテの将来~標準化とその先~

はじめに

こんにちは!目利き医ノ助の松岡です。

目利き医ノ助の運営を通して全国のドクター方から様々なDX化、業務効率化の相談をいただいている立場から、クリニックにおけるDXのリアルな現状と、私なりの今後の予測をざっくりラフに書いていき、クリニックに関わる方々に少しでもお役に立てればと思いシリーズモノでお伝えしていこうと思います。

#02として電子カルテの将来について書いてみようと思います。


電子カルテの現状

ご存知の方も多いと思いますが、クリニックにおける電子カルテの普及率は約50%※1となっています。また、ここ10年で電子カルテメーカーのシェアは大きく変化し、クラウド化が進み、オンプレ型のメーカーが少数となりました。

電子カルテシステム等の普及状況の推移 ※厚生労働省



ある視点でみると、10年ほど前までは、家電でも知られたメーカー系が大きなシェアをもっていました。しかし、近年ではそれらのメーカーは数社を除き、統廃合やシェア減少の傾向にあります。代わりに他職種から参入してきた、いわゆるクラウド系メーカーがシェアを伸ばしているというのが現状です。

その影響もあり、相談をいただいた先生方の多くが「クラウドの電子カルテがいい」と仰られます。しかし、システム選定のお手伝いをしている立場から、そこにすごく違和感を感じるのです。

市場には完全オンプレの電子カルテは少なく、ほとんどのメーカーがクラウドには対応しているにも関わらず、そのことがあまり認知されておらず、

・「オンプレ=古い、高い、不便」
・「クラウド=新しい、安い、便利」

といった先入観で選定を開始されてしまうことです。

つまり、機能・価格のどちらも、クラウドだからではなく、メーカー個々の機能やサポート内容の差になっており、仕組みとしてベースがオンプレのクラウド対応か、完全クラウド型かの違いでしかないのです。

ただ、以降で触れる「電子カルテデータの標準化」はクラウドが条件となるため、各メーカーの対応状況をみつつ検討していく必要があります。

電子カルテの標準化

次に、今年に入り、特に話題にあがるようになった電子カルテの標準化についてざっくり触れてみたいと思います。

ご存知の通り、「医療DX令和ビジョン2030」の骨子の一角である電子カルテの標準化ですが、平たく言うと「メーカー個々の仕様で記録していた診療データを共通マスタで管理し、共有できるようにしよう。」というものです。

その皮切りとして開始したのが、令和6年度の診療報酬改定「医療DX推進体制整備加算」の算定要件にもあった「電子カルテ情報共有ネットワーク」※2です。これは、「3文書6情報」※3を医療機関、保険者、患者間で閲覧できるようにする仕組みで、すでに健診データや処方歴(お薬手帳情報)などはオンライン資格確認の機能で閲覧できるようになっています。

電子カルテ情報共有ネットワークとは(医療機関向け総合ホーたるサイトより)


※2https://iryohokenjyoho.service-now.com/csm?id=emc_top
※33文書①健康診断結果報告書②診療情報提供書③退院時サマリ
  6情報:①傷病名②アレルギー③感染症④薬剤禁忌⑤検査⑥処方

また、電子カルテ標準化には大きく2つの流れがあります。
ひとつ目が、現在電子カルテを提供しているメーカーが改修、新製品で対応してくる。
ふたつ目は2026年に国が提供予定の「標準型電子カルテ」での対応です。

標準型電子カルテは、現在でいうレセコンのORCAの電子カルテ版のようなイメージになるのではと考えられます。

あくまで私見ですが、標準型電子カルテについては、現在導入している電子カルテから無理に置き換える必要があるわけではなく、患者が少なく新たに電子カルテの導入が難しいクリニックや、コスト重視で考えているクリニックが導入が導入していくのではないでしょうか。

将来の予測(完全に私見です)

このような2030年に向けての流れを踏まえ、今後電子カルテがどう変わっていくかを完全に私見ですが述べさせていただきます。

まず、電子カルテデータが標準化されることで、記載する項目が多少なりとも整理されると思います。(所見や経過等は別ですが)

それに合わせて、診療報酬改定DXの流れから、現在の複雑な診療報酬算定ロジックが簡素化される可能性もあると思います。
(現在の出来高の複雑な診療報酬算定ロジックから、病院のDPCと同様の「病名包括」のシンプルなロジックに変わる可能性がある)

もしそうなれば、電子カルテは多機能な基幹システムではなく、必要なことを以下に効率よく「記載・記録」できるシステムか。と変わっていく可能性があると思います。

語弊を恐れず極端な表現をすると、将来電子カルテは「記録できれば良い」システムになり、代わりに患者接点や売上に直結する予約システムがある意味では基幹システムとなることも考えられるのではないでしょうか。
(逆を言えば、現時点でも予約システムの選定はものすごく重要!)

さいごに

電子カルテ選定は現時点での機能や価格だけでなく、国の施策への対応力なども情報収集しながら進めていくことが必要になっています。
また、本当に怖いのが、Web、SNSなどの広告、コラム記事での宣伝が当たり前になったことでの印象操作です。
虚偽とまではいかないが、時代遅れの情報偏った情報を提供しているメーカーも見受けられます。(今日現在も、大手電子カルテメーカーのWeb情報で、時代錯誤の情報を当たり前のように提供しているものがあります)

当然、企業は利益を追求するものなので、やり方は様々ですが、影響力のある企業が、自社の優位性のため偏った情報提供をするのは個人的にすごく憤りを感じることです。

一部の情報だけでなく、ドクター同士、メーカー、ディーラーなど様々な立場から情報収集し、一旦整理してから選定を進めていくことが重要です。

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