武漢の空港での話
武漢に着陸した時、私は初めての一人旅でとてもワクワクしていた。
武漢(武漢天河国際空港)はタイに行くためのトランジットだったが、空港でWiFiを繋いで、バンコクやチェンマイの観光やお店探しをしようと思っていた。
空港だと、どこでもWiFiはあるだろうし、クレジットカードも使えるだろうと思い、中国元も用意せず、6時間のトランジットを過ごすことに。
これが大きな間違いだった。
空港のWiFi画面を出すと電話番号を入力する画面がでた。どんな仕組みかは忘れたけど、電話番号が確認出来ないとWiFiが使えない仕組みだった。
インフォメーションのめっちゃ美人なお姉さんにダメもとで聞くも、やっぱり中国の番号が必要らしい。出国後のフロアでは使えるとのことだったので、しばらく空港を探検することにした。ちなみにお姉さんが持っていたポケトークみたいな翻訳機の日本語で教えてくれた。ほんとドラえもんの世界に近づいているなあ。
スターバックスが空港にあったので、ラテを購入した。スタバだったらどこでもインターネットが使えると思っていたが、WiFiがなかった。びっくりしてラテを持って、そのままスタバから出てしまった。ラテはね、おいしかったよ。
次に空港によくあるお土産と電化製品が置いているお店に行った。店頭にはアイボみたいな犬のロボットがひっくり返っていて、助けてほしそうに足が動いていた。お店の真ん中に置いていたので、一押し商品だろう、早く助けてあげないのかなと思っていたら、その横でボーッと立っている店員さんを発見。そのアイボらしきロボットがひっくり返っているのに気がついてないのか、すぐに倒れてしまうから助けることもやめてしまったのか、それとも瞑想中だったのかは分からないが、私はそのままお店を出た。
初の一人旅で、ネットもない、中国語も話せない私は空港の外に出る勇気もなく、空港のベンチで休憩することにした。読書でもするか、と電子書籍を読み進めていくと、前に中国人のおっちゃんが座ったのが目に入った。おもむろにスマホを出して、音楽をスマホのスピーカーで聴き出したのだ。その音楽は中国っぽい曲だった。外で聴くには大きな音だった。中国人のおっちゃんがスマホのスピーカーで音楽聴くのは「あるある」なのか、この旅で中国でもタイでもよく見かけた。なんでイヤホンしないんだろう。長時間イヤホンをすると耳が痛くなっちゃうからか、やっぱり音楽はライブ感が必要なので、イヤホンなんて邪道なのか。でもやっぱり読書中に音楽流されたら気になっちゃうなあ。
そうして過ごしているうちにチェックインの時間になり、カウンターに並ぶも、順番を抜かしをされることもなく、スムーズに搭乗券をゲットできた。上海のディズニーランドでは順番抜かししてくる人がいるから、前の人と間隔を開けてはいけないと友人に教えてもらったのだが、ここではそういったこともなかった。
荷物検査場に行き、入り口のお兄さんに搭乗券を見せて、列に並んでいるとさっきのお兄さんが来て、呼び戻された。中国語で色々説明してくれているのだが、残念ながら全く理解出来なかった。何も伝わらない私におろおろしながら、優しいお兄さんはスマホを出して、翻訳サイトで日本語に訳してくれた。ここは国内線だから国際線は別だよと教えてくれていたのだった。ネットがない私は何も分からないので、本当に有り難かった。とりあえず、何回もシェイシェイと言って気持ちを伝えた。
その後スムーズに出国することが出来、出国ロビーでWiFiを発見した。使うためには機械を使ってアカウントネームとパスワードを手に入れる必要があった。よし、これでネットが使える!と思ったら、GoogleにもLINEにも繋がらない。アカウントネームが上手くいかなかったんだと思い、何度もトライするが、繋がらない。
何故・・・あれ?クックパッドは見れる!!
お気に入りに登録していた、クックパッドのレシピは見ることができた。でもレシピは今必要ではない。私に必要なのはタイの情報なのだ。
と、ここで中国ではLINEやGoogle、Yahoo検索は出来ないことを思い出した。WiFiが上手く繋がらないと思い込んでいたので、そのことに気がつかなかった。
深夜便だったので薄暗い空港の中、心細い思いで飛行機を待っていた。完全にスマホに依存している私。あー、1人なんだなと孤独を感じた。今思えば、これも思い出の一つだけど、日本で一人で行動するのと、ここで感じた孤独感は全然違うものだった。周りに日本人は居ないし、ここで何かあったら、自分でなんとかしないとダメなんだなと思った。
幸いにも飛行機の遅延もなくオンタイムで出発することが出来た。
この旅行の後、新型コロナウイルスが武漢で発生し、もう全世界の人が知っている場所になった。おそらく私が訪れていた時にはすでにコロナウイルスが水面下では広まっていただろうけど、感染することなく帰国できたのは幸運だった。また武漢空港でトランジットすることがあるかは分からないが、空港で過ごすだけでも色んな気づきがあって、良い経験だった。