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ベースオイルついて
ベースオイルの分類[1]
潤滑油に使用される原料のうち、割合にしてエンジンオイルでは8割以上、場合によっては9割以上の比率を、ベースオイルが占めています。
ベースオイルはAPI(American Petroleum Institute)によって5種類に分類されています。GroupⅠのベースオイル、とかGrⅠベースオイルとか記載されます。
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GrⅠは溶剤精製法と呼ばれる手法により、原油などから精製される基油になります。ガソリンなどの燃料の副産物としても知られます。
GrⅡは原油由来のVGOを原料とし、水素化精製法で精製して得られます。
GrⅢはGrⅡのプロセスに加えて水素化分解を実施した高性能基油となります。
GrⅣは化学合成により得られる基油のうち、特にポリアルファオレフィン(Polyalfaolefin ; PAO)が該当します。
GrⅤはⅠからⅣに該当しない、他のすべての基油とされており、エステルなどが分類されます。
鉱油か合成油か
潤滑油の製品紹介で鉱油か合成油かという表示があります。いいかえると、ミネラルオイル(鉱油)かシンセティック(合成油)と記載されることもあります。
この鉱油系か合成油系かというカテゴリーは主にどのGrのベースオイルが使用されているかを意味しています。そしてこのマーケティングクレームにおいてはっきりしたルールはありません。
とはいえ、傾向としてはGrⅠからGrⅢまでを”鉱油”、それ以降のⅣからⅤを‘”合成油”と分類する場合もあれば、Ⅰ、Ⅱを鉱油として、それ以降を合成油とするマーケターもいます。
ベースオイルの用途[2]
エンジンオイルでは世界的トレンドとしてGrⅡの使用が増加しています。特に10W-や15W-といったグレードではGrIIが普及しています。従来GrⅠが主流でしたが、世界的な製油所の再編や需要の変化によりⅠからⅡへのシフトが起きています。0W-や5W-といった粘度グレードでは優れた低温特性が要求されることからGrⅢやGrⅢ+の使用が増加しています。
さて、トランスミッションオイルや作動油、タービン油といった駆動系や工業用のオイルにもGrⅢが普及しています。これらの背景には近年GrⅢの供給力が増強されたことがあります。価格的競争力が上昇したことにより幅広いアプリケーションに高性能基油が普及しています。
粘度別では2cst,3cstのグレードはATFやプロセス油に使用される傾向があり、4cst,6cstはガソリンエンジンオイル、8cstはディーゼルエンジンオイルという用途別のすみわけがみられます。
[1]JXTG Technical Review・第59巻 第3号 潤滑油基油の品質と世界動向
[2]トライボロジスト 第 64 巻 第 3 号 潤滑油基油の近年の需給動向