見出し画像

松井一郎、裏金・萩生田を叱咤激励「萩生田さん、皆さんの期待、信頼を裏切ることになりました」

 「本当にごめんなさい。萩生田さんになり代わりお詫びを申し上げます」。選挙戦も中盤に差し掛かった土曜日の昼下がり、八王子駅前には前大阪市長・日本維新の会前代表の松井一郎の姿があった。裏金問題で自民党公認を得られず、無所属で戦う元経済産業相・萩生田光一の応援に駆けつけた。政界引退して1年半となる松井は「20年来の友人」のため、浪花節を全開に久々のマイクを握った。

演説する松井一郎・日本維新の会前代表

 「萩生田さん、皆さんの期待、信頼を裏切ることになりました。でも人間っちゅうのは、反省してもう一度やり直すっちゅうんならチャンスを与えてやりましょうよ。ぜひお願いしますよ。仲間として、長年の友人として一緒に頭を下げて〝もう一度やり直すチャンスをください〟と謝罪に参りました。どうぞよろしくお願いします」

 「身を切る改革」を訴える維新の顔であった松井がなぜ、よりにもよって〝裏金議員〟の応援に立ったのか。2人の縁はおよそ20年前に遡る。知り合ったのは自民党青年局。当時、青年局長を務めていたのが萩生田で、自民党大阪府議だった松井は大阪府連の青年局幹事長を務めていたという。「ちょうど40歳くらい。歳も同じなんでね、この国のためにしっかり働いていこうよということで知り合って。それから二人で党派は違うけれど、さまざま協力しあいながら働いてきました」

顔を見合わせ握手を交わす萩生田光一・元経産相と松井一郎・日本維新の会前代表

 松井は1年半前に大阪市長を任期満了で退任して以来、街頭に立つなどの表立った政治活動とは距離を置いてきた。「僕も悩みましたよ。一般人やから、僕自身の生活にも大きく関係があるわけで。悩みましたけど…」と応援に葛藤があったことを明かしつつ、13日に87歳で亡くなった父・松井良夫さんの教えを大事にしたと説明した。「親父が僕に一つ教えとして〝友達を大事にせえよ。そして苦しいとき、ただ応援するだけじゃないんだよ。叱咤激励してやるんだよ。ダメなものはダメとはっきり言えるのが友達だよ〟と」

抗議する人のなかを練り歩き聴衆と握手する萩生田光一・元経産相

 この日の演説会には萩生田に抗議するプロテスタントも集結した。野次が飛び交うなか、松井は「僕は萩生田を応援しに来たわけじゃありません。とにかく仲間ですから一緒に頭を下げてね。ごめんなさいね、ごめんなさい。頭を下げてね、皆さんに謝ろうと思って来ました。もう一度反省して、もう一度八王子のために、この国のために働いてもらおうと僕はその思いでここに立っております」と声を張り上げた。「政治とお金の問題、ダメだよ。応援してくれている大勢の人の信頼を失っているんだから、こんなことやっていたらダメということもはっきり、申し上げました。大事なのは今後、政治とカネの問題をクリーンにするため一番槍になって働いていく、その覚悟でやりたいというから。それであるなら再チャレンジを皆さんにお願いしたいわけです」。松井らしい浪花節の叱咤激励だった。

萩生田光一・元経産相を応援する松井一郎・日本維新の会前代表

 「友情と打算の二重構造」。かつて聞いた言葉だが、松井と萩生田の演説会を見ているとそんな言葉が頭をよぎった。演説会では「万博やめろ」「カジノをやめろ」との野次も飛び交った。維新と自民党との関係では、故・安倍晋三氏や自民党副総裁・菅義偉の名前が思い浮かぶが、萩生田も大阪万博やその後の開発を巡って、欠けてはならない存在なのだろう。すでに政界を引退している松井だが、この日は関西テレビや読売テレビといった在阪局も取材に来るなど注目度は衰えていない様子だった。

聴衆に手を振る松井一郎・前日本維新の会代表

 ところで、萩生田の立候補する東京24区には日本維新の会の公認候補も出馬している。「ここへ来るって言ったんでね、維新の会のメンバーからは勘弁してくれっていうメールがいっぱい来ていた」と明かしつつ「政治の世界から1年半離れていると情報に疎くなりまして。この選挙区に維新の会の公認候補が出てるのは知らなかった」と釈明した。「ちょっとカミカミのところもあるしね。すごく野次もあってなかなかうまく喋れなかったけどね」。笑顔で演説を締めくくった松井。まだまだ脂ぎっている。

「ガンバロー」と拳を突き上げる松井一郎・日本維新の会前代表ら
歩道橋の上からの野次に「はいはい、ごめんなさいね。ごめんなさい」と謝る松井一郎・日本維新の会前代表
プラカードを掲げる人たち
演説を終えると聴衆と触れ合うこともなく迎えの車に乗り込んだ松井一郎・日本維新の会前代表
演説する萩生田光一・元経産相
東京24区で萩生田光一・元経産相らと争った有田芳生・元参議院議員

いいなと思ったら応援しよう!