警察嫌いっていう言説が大嫌い。5月の500円
別の記事にて、必要以上に話が膨らみ過ぎたため、こちらに移すこととする。
それは高校時代に遡ることになる。
私が通っていた高校は、どうしようもない人間が他の高校に進学して迷惑をかけないように収監するための檻のようなところだった。不良になるほど知能が低くもないが、モラルを解する共感力や読解力を持ち合わせていない。スポーツも並、学業は下の中、何者にもなれない半端者しかいなかった。ある昼下がりに、私と同じ教室で交わされていたある会話を、私は鮮明に覚えている。
数人で構成された輪のうちの一つが、このようなことをほざいた。
「俺、警察嫌いなんだよね〜」
と。
声の主は、決して不良ではない。というか、他人を殴ったことなどなさそうな、肌のうすら白い男だった。
いったい、彼のような善良そうな市民が、市民の味方である警察官のことを嫌いになるような出来事があろうか。そう思った。
彼は何部だったか。文化部であったのは覚えている。喫茶店でバイトをしているという話も聞いたことがある。
バイト先の器物を破損したところを、客として来ていた私服警官にでも捕えられたのだろうか。いや、そんなことは、絶対にない。
一文にもならない思案ののち、彼の話に耳を傾けることにした。
要旨はというと、通学やバイトの通勤で自転車を活用している彼は、ここ一年くらいで数回警察に呼び止められたことがあったらしい。
私はいま、とんでもない学校の、とんでもない教室にいるのだな。
その時の私は、ひどく痛感した。
あれからしばらくの時間が経ち、私はある病院内のカフェの片隅に腰を下ろしていた。
左の奥歯のさらに奥に血餅の根城があるため、かれらに配慮しながら熱すぎるくらいのコーヒーを飲んでいた。
「患部の治りをはやめるために、運動はしばらく控えてくださいね」
看護師はそんなようなことを言っていたが、熱いコーヒーを少し飲んだくらいで血行がよくなるのならば、現代病など存在しないだろう。
そんな腹積りで、私はコーヒーをホットにした。強気で。
カフェでコーヒーを飲みながらの読書は、空間に色をつけてくれるようだ。
同じ時間、同じ本を、同じコーヒーを飲みながら自室で読むのとでは、何かが違う。
そこでは、時間が経過するという避けられるのならば避けたい事実を、甘んじて受け入れることができる。
私はそんな時間が好きだ。
右に血餅があった時は、ドグラマグラを。左の時はエミールを。自分でもよくわからない選書ぶりだが、エロ本を読んでいる訳でもないし、店に迷惑はかかっていないだろう。
一口呑み下すと、スピンを引き上げた。
ここからは、エミール記事の通りである。
ルソーのとある主張に出会った時の話だ。
その主張の内容を箇条書きで纏めよう。
・医者は人間であるため、信用できない。
・死にかけた場合は、医者を呼ぶほうが死ぬよりマシだから、呼ぶことにする。
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