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美は細部に宿る:PP701minimal chair

前回のブログではPP701の魅力についてお話しさせていただきましたが、
今回はPP701のデザインがどのようにして形作られていくのかというお話しを中心にPP701についてのストーリーなどをお伝えしていきたいと思います。
前回のブログよりも少々マニアックな内容になるかと思いますが(笑)、最後までお付き合いいただれば嬉しいです。

PP701は、ハンスJウェグナーが自邸を建てた際に使用するダイニングチェアをコペンハーゲンの街を1日中探して回ったけれど、いい椅子が見つからなかった為に自分でデザインすることになったといいます。
そう話すハンスJウェグナーにインガ夫人が
”ウソでしょ。欲しいものはあったけれど、お金がなかったから買えなかったんでしょ。(笑)”と言っていたという一説も…(笑)

ウェグナー自邸

兎にも角にも、自分でダイニングチェアを作ることになったウェグナーは、完成を急ぐこともあり、当時ウェグナーがデザインした家具を製作していたヨハネス・ハンセン社の工房にあった端材を集めてダイニングチェアの製作を試みました。
PP701の背板は上下左右の4パーツとそれを繋ぐ為の契り、そして上下に挟み込まれた薄い板と全て細かなパーツで構成されていますが、これは端材で製作した為だったのですね。
端材からあんなに美しいデザインが生み出されていたとは驚きです。

細かなパーツの組み合わせで出来ている背板


PP701を構成しているパーツをさらに細かく紐解いていこうと思います。

まずは背板から。
現在は、右と左のパーツ・上と下のパーツで同じ木材を使用し製作されていますが、PP701の製作当時は端材をしていた為、木目が揃いません。
そこでウェグナーは背板の上下のパーツの間に異なる色の薄い板を挟み込むことによって、上下の木目が揃っていなくても違和感が出ないようにデザインしました。
また、十字の契りは左右のパーツ繋ぎ合わせ強度を高める役割を持っていますが、薄い板と同色にすることで背板全体にまとまった印象を与える役割も担っています。
木工職人であり、家具デザイナーでもあるウェグナーのこだわりを感じますね。

契りに目がいきます

次に曲線が綺麗なスチール脚ですが、スチールの厚さが薄いスチール棒を曲げて加工しようとすると折れてしまう。
そこで、厚みのあるスチールの板を溶接して円柱にしてから曲げの加工をすることで、曲線を生み出すことを可能にしました。
これは機械技術では出来ない、職人の技術があってこそのデザインですね。

今でも脚と脚の繋ぎめは人の手で溶接作業が行われているそうです。

スチール脚はクールな印象がありますが、脚を曲線にしたことで全体に柔らかな印象をもたらしています。

現在販売されているウェグナーデザインのスチール✖️木の組み合わせの椅子、PP701とCH88

最後は座面の裏側を見ていきましょう。座面をひっくり返してみると、張地を止めているタッカーはわずか2つだけ。
通常であれば1周ぐるっとタッカーで張地を止めているのことが多いのですが、PP701はペーパーコードをはめ込むことによって張地を固定しています。
目に見えない細部にまでこだわりを持って作られているのがよくわかります。まさに”美は細部に宿る”を感じられる部分です。

小さなタッカー2つでペーパーコードを固定している
1周ぐるっとはめ込まれたペーパーコード

ウェグナーは晩年、施設で生活していたそうですが、そこで使用するのに選んだのはPP701だったそうです。
ウェグナーが最後に生活を共にした1脚。
たくさんのこだわりと工夫が詰まった1脚です。

ホリノウチ

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