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ウェグナーが自邸の為に作った椅子:PP701 minimal chair

PP701は、私が北欧家具に魅了されるきっかけとなった椅子です。
この椅子を初めて見た時に”美しい”と思いました。
当時の私は家具のことを何にも知らないど素人。
どこからきたのか、誰がデザインしたのか、どんな材料で出来ているのかもわからないけれど、PP701が佇む姿から凛とした気品を感じたのです。

私が何よりも惹かれたのは背のデザイン。十字のちぎりがとても印象的でその繊細な作りに職人の技を感じました。
後にそれがただのデザインではなく、パーツの接着強度を高める為のもので”隠せないなら美しく見せる”というハンス・J・ウェグナーの理念だということ知った時には感銘を受けました。

上下左右のパーツに挟まれているちぎりと同じ色の薄い板のパーツは、ちぎりが不自然に目立たなくする為にデザインされたそう。
削り出しによって現れた結合部の木目さえも美しい。

PP701はウェグナーデザインには珍しいスチール脚です。
真っ直ぐではなく曲線を描くことで、スチール脚ながらも柔らかさを感じさせます。
スチール脚を採用したことによって見た目にも、実質的に重さも軽くなっています。

ハンス・J・ウェグナーがインガ夫人に”自分がデザインした椅子の中でどの椅子が一番好きか”を尋ねたところ、”PP701が好き”と答えたといいます。
ウェグナーが自分の為にデザインしてくれた椅子。それだけでもうすごい特別感ですが、インガ夫人がPP701を選んだ理由の1つとして”座り心地”があるのではないかと思います。PP701は本当に”座り心地”がいいのです。

PP701に腰掛けると、滑らかな丸みをおびた背もたれがちょうど腰のS字カーブの部分を支えてくれて、スッと背筋が伸びるような感覚があり、そっと肘を下ろすと自然に腕がのる位置にアームがあります。

触れるとスベスベと気持ちのいい質感のアームは背もたれから自然なカーブを描き、腕をしっかり支えてくれる適度な幅があります。
アーム位置が低いので、テーブルに仕舞い込めるのも◎。

座面もクッション性があり、中心に向かって緩やかにカーブしている為、すっぽりと包み込んでくれるような座り心地です。


PP701は当初販売の予定はなかったそうですが、当時ウェグナーがデザインした椅子を製作していたヨハネス・ハンセン社の要望から製品化に至ったそうです。
ヨハネス・ハンセン社からの要望がなければ、私達はこんなに素晴らしい椅子に触れることも見ることも出来なかったかもしれないですね。
500脚以上もの椅子をデザインしたウェグナーが自邸のために作った特別な1脚。
まさに名作家具です。

次回はどのようにPP701が製作されているのかさらに深掘りしていきます!


ホリノウチ

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