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大人たちの文化祭―ボロフェスタ2024レポート

秋の風物詩のひとつに
五穀豊穣を祝う秋祭りがある

各地でお祭りが開かれるこの季節だが、
昨今は音楽フェスも秋開催が多くなった

毎年記録を更新していく暑さの中では
妥当な決断だと思う

さて、晩秋と言える11月
ボロフェスタという音楽フェスが開催された

毎年、京都御所のおとなり
KBSホールで行われるこのフェスは
記事タイトル通り文化祭のような雰囲気がある

たとえば、ライブの合間に登場する出し物
手作り感たっぷりながら、ユニークな発想で
お客さんを楽しませている

おそらく、今年の干支にちなんだ龍の出し物
この後フロアを練り歩いていた
(2024年11月2日、右京大夫撮影)

さよならポエジーのボーカル
オサキアユはライブ中のMCで
「(ボロフェス)は手垢が見える」と表現していた

全くその通りだと思う

万単位の客が、遠いステージに向けて
あるいは、モニターに向けて
誰とも分からない固まった声援が送られる

そういった大規模で壮大なフェスとは
違った楽しさがあるのがボロフェスだと思う

ライブ概略① Sundae May Club

私が参加したのは11月2日(日)
昼頃に会場へ到着すると
Sundae May Clubのステージが始まっていた

ポップで聞き馴染みのいいメロディと
天を貫くようなVo.浦小雪の歌声が響く

「晴れるな」はやはりキラーチューンだ
ゆっくりと弾き語りのような雰囲気から
一気に加速してサビまで突き抜ける
歌声のまっすぐさがとても活かされて
ライブでも疾走感たっぷりだった

1曲が終わる度に
ありがとう~とお礼を言う感じも
MCでカンペらしきノートを持っている感じも
初見でも打ち解けやすい雰囲気に繋がっていた
また見たいと思う暖かいステージだった


②MONO NO AWARE

東京は八丈島出身の島人バンド
以前から曲はよく聞いていたが
ライブで拝見するのは初めてだった

同じ釜と書いて「おなかま」
小さい頃の思い出を振り返るように
ゆったりと始まるこの曲だが

途中からテンポが上がると
彼らの本領発揮
一気にグルーブが増し
ベースとドラムが主役に躍り出る

セッションを挟み
代表曲のひとつ
「かむかもしかもにどもかも」に繋がると
フロアは完全にMONO NO AWAREの
支配下となった

歌詞のユニークさや独特な曲構成が
目立つバンドだが
こんなにグルーブが凄まじいグループだとは

バンドとしてとても格好良い

早速1月にあるZAZENとの対バンライブの
先行に応募してしまった

③kurayamisaka

邦ロック好きの間で話題のバンド

大学生の頃、きのこ帝国に心奪われ
曲を何度も聞いていたのにも関わらず
お金や時間の問題で
ライブを見に行く機会を逃したまま
解散の報を受けて後悔した記憶がある

社会人となった今、kurayamisakaを聴き
また心奪われ
そして今度こそ
活動が途絶える前にライブを見ることができた

聞く人が聞けば騒音に近い
これでもかと歪ませたギター
音の乱反射の中を縫うように聴こえてくる
透き通ったボーカル

音源化すれば削られるであろうノイズが
バンドの迫力を増加させ
メロディの儚さを引き立てている

たとえば、軽音楽部で出会った仲間と
こんなバンドが組めたら
さぞかし最高の音楽人生を歩めるのだろう

そんなことを考えるくらい
kurayamisakaの音楽は
バンドの楽しさを体現していると思った

④TENDOUJI

冒頭で触れた手作りの神龍が
フロアを練り歩いたあと
くす玉にたどり着くと
中からTENDOUJIと書かれた掛け軸が降ってきた

ご陽気なムードの中、サッカー選手のように
入場してきたTENDOUJI
まずはHEARTBEATでフロアを湧かせていた

以前にDENIMS主催のフェスで見た際は
盛り上げ隊長のようなバンドだと感じたが
ボロフェスのステージでは
しっとりした楽曲も演奏していた

MCで色んなジャンルの音楽好きが
集まるイベントだから
セトリもそれに合わせた旨のことを言っていた

彼らの音楽は基本英語詞で
原色系のカラフルな楽曲が多い
それでいてどんなフェスにも馴染むような
陽気で明るい雰囲気が漂っていた

⑤ZAZEN BOYS

たった30分のステージで
自己紹介を5回以上する
邦ロック界のHENTAIバンド

日本刀のような重さと鋭さ
ライブでは音源よりも間や余韻が多く
なのにバンドとしてのキレは失われていない

曲間で向井秀徳が「ドロップD!」
と発作のように叫ぶと
即座にベースのチューニングが変えられ
次の曲が始まる

演出なのか、はたまた打ち合わせ無しか
分からないその緊張感も 
ステージに釘付けされる原因なのかもしれない

⑥bacho

ZAZENで足が痺れたので
少し休憩しながらステージを見たあと
お昼を食べてなかったので早めの夕飯をとり
戻ってきた頃には
bachoのステージが始まる前だった

bachoは軽音部時代に知ったバンドだったが
長らく聴いておらず
ライブで聴くのはもちろん初めてだった

今日の出演バンドの中では
ZAZENと並ぶおじさんバンドだが
熱量はどのバンドより凄まじかった

きっと各地のライブハウスで
何人もの大人を励まし
熱狂させてきたことだろう

次のリーガルリリーを待つ人たちも
となりのbachoのステージに向かって
声を上げ、拳を上げたりしていた

サブスクもない、MVも見当たらない
そんなバンドがライブで人を巻き込んでいく
この日、1番かっこいいおじさんだった

⑦リーガルリリー

アルバムが出たばかりのリーガルリリー
今年は出す曲、出す曲全て良かったが
ライブでもキラキラに輝いていた

バンドの街、下北沢でできたという天きりん
今年聴いた曲の中でも
相当気に入ってる曲のひとつ

宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』に
着想を得たであろうこの曲は
夏にも野外ライブで1度拝聴した

夏空の下で聴くと
清涼飲料のような爽やかさがあったが
ボロフェスでは、会場の暖かい雰囲気や
bachoが残したライブハウスの空気感が
この曲の「バンドへの想い」を
より強めていたと思う

最後、代表曲の「リッケンバッカー」で
KBCホールのステンドグラスが灯る
サプライズ演出があった

あまりにも出来すぎていて
少し笑ってしまったほど
美しい演出だった

⑧さよならポエジー

右手にはbacho
左手にはリーガルリリー
そして心の真ん中にはボロフェスを宿している

そんなMCをしていたオサキアユ率いる
神戸のバンド、さよならポエジー

ステージが始まるやいなや
今年発売のアルバムのリードトラック
「ボーイング」を爆音のギターで奏で始めた

とにかく、熱と勢いが凄まじい
自然と拳が上がる

コールアンドレスポンスをしている訳ではない
ただ、ギターとベースとドラムが
渾然一体となり攻めてくるのに対して
応戦しているような空気感

ライブに来る目的は
叫ぶためでも、手を上げるためでもない

しかし、耳から入った音楽が
魂を湧かせて
湯気を吹き上げるように
声や腕が自然にあがるのだ

オルタナロックバンドだらけの
バンドファンのために作られたかのような
タイムテーブルの〆に
ぴったりの一品をいただいた

おわりに

ボロフェスは2度目の参加だったが
とても満足感の高いフェスだと思った

会場もそれほど広くなく
こじんまりしたフェスのようにも見えるが
その分フェスを作っている人達の
確かな面影を感じられて好きだ

メインの2ステージが近いこともあって
前後のアーティスト同士が
MCでお互いのことに触れたりしていて
普通のフェスではあまりない光景が見られる

ステージとの距離も近く
自分もこの文化祭の一端を
担ってるかのような仲間意識があり
ほんのり暖かい空間だった

ライブ後は、暖まった体を
晩秋の夜風で冷ましながら帰路に着いた

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