Apple II ▷ IIeの修理
▷ Apple IIe メインボードの故障
ぼくは,Apple II plus の Rev.4 本体と RFI メインボードを1枚,IIe本体とメインボード3枚を所有しています.後者のうち2枚はジャンクボードとして譲り受けたものです.そのジャンクボードのうちひとつの起動時のディスプレイの様子を写真1に示します.
同様のディスプレイ表示の画像とともに「故障している.どうすればいい?」という相談・質問がときおりFacebook愛好家グループの"Apple II Enthusiasts"や老舗サイト"Applefritter.com"などに投稿されることがあります.たいする回答は「メモリ不良」がおおく,じっさいに的を得た回答と言えるでしょう.ぼくも2枚のメインボードについて故障原因を調べた当初,教科書通りメモリ不良を疑いました.が,この確定検査が大変なのです.
▷ Apple IIeのメインボード
初期のApple IIではウォズの意向によりICはソケットに取り付けられていました.これはいつでも部品を交換できることを意図していたからです.ところがApple IIeの代になると,Apple IIにおいて74シリーズで構成されていた回路がカスタムICに取って代わられるようになり,しかも部品がメインボードに直にはんだ付けされるようになったのです.
もちろんメモリICもメインボードにしっかりとはんだ付けされています.メモリ不良の簡単な検査法は,動作しているメモリと交換する,あるいはメインボード上で配置を入れ替えるが簡単なのですが,はんだ付けされているととても難儀なことになります.ましてやその作業でメインボードやメモリICそのものを破損してしまうと悲劇です.
▷ カスタムIC MMU(344-0010-#)
ここで慌ててはいけません.メモリ不良とひとくちに言いますが,それはメモリICが壊れていることを意味しているとは限りません.メモリを管理するシステムに不具合が生じていると考えるべきでしょう.このとき目を向けるべき対象としてMMU(344-0010-#,#は世代を表す記号A〜D)と呼ばれるカスタムICがあります.MMUは"Memory Management Unit"の略称であり,その名のとおりメモリ管理の役割をになっています.幸いにしてMMUはソケット上にあります.メインボードを複数所有するメリットは,動作している個体(ドナーボードというそうです)から部品を一時的に借用できることです.じっさいにジャンクボードのMMUを交換して検査してみると,MMUが壊れていることが判明しました.
▷ 40年前の部品を探す
問題は40年前の部品が入手可能であるかということです.
ぼくと同様に故障の原因がMMUにあると特定したひとたちもいて,「344-0010-#を探しています」という投稿もあります.ところがとても入手困難なようで,みなさんたいそう苦労されているのです.ぼくも部品をストックしていそうな業者に問い合わせをしましたが,つれない返事ばかりでした.さすがに40年前の部品が出てこないのも当然かと自ら納得させ,ここ数年はジャンクボードを放置していました.
ところが・・・・
今年になって思い立って調べなおしてみたところ,米国,英国,仏国,台湾,香港,中国の業者が結構な数量を在庫していることが芋づる式に判明しました.在庫品の写真提示をもとめてみると,なんと正規品なので驚きました.ただしいずれの業者も最低販売個数を設定していること,荷造り送料が高額になることから,購入をためらいました.いくらなんでも10個も必要ありません.そこで共同購入を米国の知人に提案したところ,話をうまく進めることができました.彼ら自身もMMUを分配するアテがあったようです.
結果としてはぼくはその知人たちと共同購入して,分けてもらうことができました.航空便で配達してもらったので送料もわずかでした.写真2は入手できたMMUです.3個入手できたので1個はスペアです.
▷ MMUを換装する
MMUを換装してみました(写真2,左上40ピンのIC,右隣は65C02).問題なく起動しました.ちなみに知人たちが購入したMMUもすべて検査して問題なしだったそうです.
現存するApple IIeの故障原因のひとつとしてMMUの不良が結構あると推察しています.IIeを修理したい愛好家とMMUの在庫をかかえる業者とのあいだには共に益するところがありそうですね.この話にはおまけがあって,写真2のMMUの直下にあるIOU(344-0020-#)もまた在庫があることがわかり,共同購入の知人は喜んでいました.う〜ん,それにしてもあるところにはあるものですね.うまくリンクさせたいものです.
▷ 余談
Apple IIeのメインボードを都合3枚所有することになりました.そのうち1枚は普段使いのマシンとなっており,プログラムや工作で活躍しています.Apple II plusの Rev.4 はぼくにとってメモリアルマシンなので動態保存用としており,RFIボードが普段使いとしています.いずれも上手に使用していけばこれからも楽しみをもたらしてくれるでしょう.