プリオン病とは?ガイドラインを基にハイリスク器材の適切な再生処理(洗浄・滅菌)について解説します。
認知症を中心とした神経症状を呈する、進行性で致死的な神経疾患であるプリオン病。
2020年にはプリオン病の感染予防に関するガイドラインが改定され、その後、厚生労働省から手術器材を介したプリオン病二次感染予防策に関する通知も出されました。
「そもそもプリオン病とは?」
「ハイリスク手技に該当する手術は?」
「どのように再生処理(洗浄・滅菌)すればいい?」
「プリオンサイクルの滅菌保証はどうすればいい?」
こんな疑問をお持ちの方も、いらっしゃるのではないでしょうか。
本記事では、プリオン病感染予防ガイドライン(2020年版)(以下ガイドライン)を基に、プリオン病の基本やハイリスク器材の正しい再生処理の方法を解説します。
1. プリオン病とは
1-1. プリオンとは伝達性海綿状脳症の伝達因子
プリオンとは、クロイツフェルト・ヤコブ病などの伝達性海綿状脳症の伝達因子のことです。伝達性海綿状脳症は、脳内に異常プリオン蛋白質が蓄積することで発症する神経疾患で、その伝達因子(感染因子)である異常プリオン蛋白質そのものを「プリオン」と呼びます。
1-2. プリオン病はプリオンにより引き起こされる疾患の総称
プリオン病は、ガイドラインで以下のように定義されています。
つまり、プリオンにより引き起こされる疾患の「総称」がプリオン病ということになります。
1-3. プリオン病は大きく3つに分類される
プリオン病は、その由来により①特発性プリオン病(プリオンの由来が不明)、②遺伝性プリオン病(遺伝子変異によるプリオン病)、③獲得性プリオン病(プリオンに暴露した病歴が明瞭)の3つに分類されます。国内のサーベイによると、プリオン病は76%が特発性、20%が遺伝性、2%が獲得性という内訳になっています。
1-4. クロイツフェルト・ヤコブ病はヒトが罹患するプリオン病の代表的疾患
「プリオン病とヤコブ病は何が違うの?」という疑問をお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、クロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt-Jakob disease: CJD、以下ヤコブ病)は、ヒトが罹患するプリオン病の代表的疾患です。ヒトのプリオン病の約76%は孤発性ヤコブ病と言われています。つまりヤコブ病は、ヒトが罹患するプリオン病の中の1つという位置づけになります。
1-5. 動物が罹患するプリオン病で有名なのはウシ海綿状脳症(BSE)
動物が罹患するプリオン病の例としては、ウシ海綿状脳症(bovine spongiform encephalopathy: BSE)が挙げられます。「狂牛病」というと、ピンとくる方もいるかもしれません。ちなみに、狂牛病はヨーロッパのマスコミがつけた名称mad cow diseaseの和訳であり、ウシ海綿状脳症が正式名称です。
1-6. プリオン病の発症率は約0.0001%~0.0002%
プリオン病は、急速に進行する認知症を特徴とする神経疾患で、年間人口100万人あたり約1~2人が罹患する極めて稀な疾患です。
1-7. 通常の社会的接触を介しては広がらない
プリオン病の原因は中枢神経系に存在する異常プリオン蛋白質とされており、伝達性(感染性)を持つと言われていますが、通常の社会的接触を介して人々の間に広がることはないと言われています。
1-8. 現時点で有効な治療法はない
現時点では、プリオン病に対する有効な治療法はありません。孤発性ヤコブ病は初老期に発症し(平均64歳)発症から数ヶ月以内に無動性無言に至り、平均15.8ヶ月で死亡すると言われています。
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