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非凝縮性ガス(NCG)とは?内腔器材の滅菌で気をつけるポイントを解説します。

高圧蒸気滅菌器で適切な滅菌を行う上では、蒸気の質についても考慮しなければなりません。

蒸気の質に影響を与える要因の1つとして、非凝縮性ガス(NCG:non-condensable gas)があります。

「そもそもNCGってなに?」
「ガイドラインではどのように記載されているの?」
「NCGは高圧蒸気滅菌にどんな影響を与えるの?」

そんな疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

この記事では、NCGの基本やガイドライン等における位置づけ、日常の高圧蒸気滅菌で気を付けるポイントついて解説します。


1. 高圧蒸気滅菌における蒸気の質

1-1. 高圧蒸気滅菌における重要プロセス変数は「温度」「時間」「飽和蒸気」

プロセス変数とは、洗浄・消毒・包装・滅菌など、それぞれのプロセスにおいて、その変化が有効性に影響を与える特性のことです。その中でも、特に影響が大きいものを重要プロセス変数といいます。

高圧蒸気滅菌における重要プロセス変数は「温度」「時間」「飽和蒸気」の3つです。これらの条件が達成されることにより適切な滅菌が可能になるため、化学的インジケータ等を使用して日常的にモニタリングする必要があります。


1-2. 飽和蒸気とはある一定の温度・圧力にて飽和した状態の蒸気

ある密閉された空間で水を熱すると沸騰を始め、蒸発すると水蒸気という気体になります(気化)。しかし、ある量が蒸発するとそれ以上は気化できなくなります。その状態の蒸気を飽和蒸気と言います。

飽和蒸気は、温度の低い物質に触れると即座に凝縮し(水に戻り)、接触した物質に熱を伝え急速に加熱します。このような特性を持つことから、飽和蒸気は熱を伝導させるために最も効率が良く、高圧蒸気滅菌に用いられます。


1-3. 滅菌する器材によって蒸気浸透のしづらさは異なる

器材を適切に滅菌するためには、器材のあらゆる側面に蒸気が浸透する必要があります。鋼製小物などの単純な形状をした器材であれば、器材の外表面に蒸気が暴露していることを確認すれば問題ありません。

しかし、内腔器材や構造が複雑な器材の場合は、空気および蒸気の流通が阻害され蒸気は浸透しづらくなります。そのため、器材の外表面だけでなく、器材内部レベルにおいても蒸気が浸透していることを確認しなければなりません。

医療現場における滅菌保証ガイドライン2021(以下ガイドライン2021) p119には、器材の蒸気浸透のしづらさについて、以下のように記載されています。

下記に記載した1)~4)の順で空気排除を強化すべきである。
1)鉗子や鑷子などの鋼製小物類
2)硬性内視鏡やラパロ用トロッカーなどの中空を有する器材
3)リネンやフィルタなどの空気を含む器材
4)複雑な構造をもつ器材


1-4. 内腔器材への蒸気浸透を妨げるのは空気溜まり

高圧蒸気滅菌において、特に内腔器材の内部に蒸気が浸透するのを妨げる要因は空気溜まりの存在です。空気溜まりがあると蒸気が浸透せず、熱伝導を妨げるため、滅菌不良の原因となります。


2. 非凝縮性ガス(NCG)とは

2-1. 凝縮できず気体のまま存在するガス

非凝縮性ガスとは液体に溶け込んだ微小なガス粒子のことで、室温でも高圧蒸気滅菌時でも、凝縮できず気体のまま存在します。身近な例として、ビールや炭酸飲料などに用いられている炭酸ガスが挙げられます。



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