日本ブチハイエナ物語ー今会えるブチハイエナ全頭の情報ここにありー(1933年~2023年)
先日、日本の「シマハイエナ史」を紹介する記事を書きました。
続いては、ブチハイエナ史!
2023年現在ブチハイエナを飼育している動物園を中心に、その飼育の歴史をたどり、今会えるブチハイエナ全頭の情報を紹介していきます。
大変に長いので、覚悟してお読みください。
「多摩動物公園ユキヒョウ物語」の2倍以上あります。
動物園ごとの飼育史にしているので、目次を見て好きなところからお読みいただいてもいいと思います。
日本のブチハイエナは、シマハイエナの減少とともに飼育数が増加しました。関連性があるかは分かりませんが、世界的に見てもブチハイエナよりシマハイエナの方が生息数は少なくなってきたため、時の流れとともに自然とそうなっていったたのだと思います。
▼ハイエナ科の4種について違いをまとめてみました。
まず大前提として、ブチハイエナの飼育についての資料が残っている動物園は、非常に少ないです。
飼育されていたことが確実である動物園の過去の資料を見ても、そこにはブチハイエナの名前や写真がまったく掲載されていないことがあり、過去の園内マップにもその名が省かれていることもしばしば。
また、資料にハイエナの名前があっても、それはほとんどの場合ライオンやヒョウのことを説明するためだけに一瞬登場しているだけにすぎません。
それは、ブチハイエナが古くから人間によくないイメージを抱かれ、人気動物たちの情報を充実させることを優先された結果だと思われます。
そんな中で、ブチハイエナの情報を昔から今も残し続けている動物園がいくつかあります。
それは天王寺動物園、日本平動物園、大宮公園小動物園です。こちらの3園に関しては飼育歴も長いため、かなり詳しく紹介していきます。
また国内のブチハイエナの家系は大きく分けて3つあります。
「天王寺家系」(「愛」と「秀」から)
「日本平・大宮家系」(「キラ」と「ホシ」から)
「のいち家系」(「エナ」と「ブッチー」から)
紹介するブチハイエナがどの家系に属するかについても記載しています。
①ブチハイエナ飼育園の推移
日本では1930年ごろからブチハイエナを飼育していますが、2000年以前は飼育園がかなり少なかったようです。
2010年以降、ブチハイエナの飼育園がかなり増えました。SNS等の情報発信に力を入れる風潮も高まってきたことから、近年になってやっと、ブチハイエナの魅力が誤解なく、広く伝わることとなりました。
2000年以前:5園
天王寺動物園、東山動植物園、日本平動物園、徳山市立動物園(不確定)、アドベンチャーワールド(不確定)
2006年:3園
天王寺動物園、日本平動物園、大宮公園小動物園
2009年:4園
天王寺動物園、日本平動物園、大宮公園小動物園、池田動物園
2010年:6園
天王寺動物園、日本平動物園、大宮公園小動物園、池田動物園、円山動物園、のいち動物公園
2017年:11園
天王寺動物園、日本平動物園、大宮公園小動物園、池田動物園、円山動物園、のいち動物公園、宇都宮動物園、アフリカンサファリ、しろとり動物園、秋吉台サファリランド、ノースサファリサッポロ
2023年:13園(現在)
天王寺動物園、日本平動物園、大宮公園小動物園、池田動物園、円山動物園、のいち動物公園、宇都宮動物園、アフリカンサファリ、しろとり動物園、秋吉台サファリランド、ノースサファリサッポロ、千葉市動物公園、とくしま動物園
それでは物語の始まりです。
②日本のブチハイエナ史⑴現在も会える動物園
【1933年~】天王寺動物園(大阪府大阪市)
現在飼育されている個体:「愛」(2003年~)「レイ」(2011年~)「ハナ」(2017年~)
天王寺動物園は、資料が残っている中ではおそらく日本で初めてブチハイエナの飼育を開始した動物園だと思われます。
▼天王寺動物園のブチハイエナ史
1933年6月28日:ブチハイエナ初来園(東アフリカより)
1943年9月4日~1944年3月15日:ブチハイエナ戦時処分
1966年8月31日:ブチハイエナ来園(戦後初)
2003年3月11日:「愛」「秀」タンザニアより来園
2004年7月12日:「優」誕生(初の繁殖)
2006年9月9日:アフリカサバンナゾーン完成
2007年8月15日:「蓮」誕生
2008年3月31日:「優」天国へ
2010年6月2日:「秀」天国へ
2011年3月28日:「蓮」池田動物園へ、「レイ」池田動物園より来園
2017年3月23日:「ハナ」上海動物園より来園
2020年9月28日:「愛」非公開エリアで隠居開始
<戦前のブチハイエナ>
●1933年
天王寺動物園では、1933年6月28日にブチハイエナが初めて来園しました。ところがそのブチハイエナ含むほとんどの猛獣が、戦前に処分されてしまいます。
<「愛」の来園まで>
●1965年
そして戦後21年になる1966年(1965年?)8月31日、ブチハイエナが再来園しました。
天王寺動物園広報誌『なきごえ』に掲載されているブチハイエナのエピソードから、その歴史をたどっていきます。
・「どうもうな面構え、おおかみの仲間は口がとがっているが、ハイエナの仲間は、このように口が大きく丸い。しまハイエナより珍種で、なき声に特徴があるが、早朝によくなく。」(1965年【VOL.01】6月号)
・「ヨーロッパオオカミが隣室のぶちハイエナとけんかをして後足をかまれました。」(1965年【VOL.01】5月号)
●1966年
・「ぶちハイエナ同士の大げんかがありヒン死の重傷を負いました。」(1966年【VOL.02】12月号)
・「ぶちハイエナが仲間にひどく噛みつかれ、首筋や、肩の皮がなくなるほどの重傷を負いました。早速治療鑑に移して手当をしています。」(1966年【VOL.02】6月号)
→けんかのエピソードばかり…。ブチハイエナはシマハイエナやオオカミと同じ空間で展示されていたのでしょうか。
●1968年
・「このハイエナを隣室に移すのに締り具合の悪い扉に直径1.5cmの麻縄を結び付けて、寝室に帰れないように締めるようにして戸外に出したのですが、寝室から出て来た彼は何やら気に喰わぬものがあると、アッ!!という聞に一噛でこのロープを喰い切ってしまいました。私達は今更ながらぺンチのようなその歯の強いことに驚きました。」(1968年【VOL.04】12月号)
●1969年
・「ブチハイエナの檻にある雨の日に6本もの『コーモリガサ』がつっこまれて、いずれもズタズタにされていたという飼育担当者の報告があった。」(1969年【VOL.05】9月号)
●1983年
・「開園のチャイムにあわせてコヨーテが鳴き始め、つづいてオオカミ類が一斉に鳴き、ハイエナやアビシニアライオンまでもなきだします。ただしアビシニアライオンはハイエナがなかない時はなかないようです。」(1983年【VOL.19】9月号)
→このエピソードはのちのとある伏線になります。
●1984年
・“天王寺動物園の長寿動物”「当園の長寿動物もすべて戦後っ子となりました。~ブチハイエナ(オス)昭和41年8月31日来園(18年2ヶ月)全国1位」(1984年【VOL.20】11月号)
<秀と愛の来園>
●2003年
・「2003年2月24日、ブチハイエナのオスが1頭来園しました。」(2003年【Vol.39-04】4月号)
→「秀(しゅう)」です。
・「2003年3月31日ブチハイエナのメス1頭が来園しました。4月14日から展示開始。」(2003年【Vol.39-03】【Vol.39-06】3月・6月号)
→「愛(あい)」です。2023年現在も天王寺動物園で暮らしています。
・「ハイエナというとサバンナの掃除屋のイメージがありますが、実際は統制の取れた群れを作って、狩りをする優秀なハンターであることが分かってきました。ライオンのほうが、ハイエナのおこぼれを頂戴することがあるそうです。」(【Vol.40-07】)
→天王寺動物園はブチハイエナの正しい情報を昔から伝えてくれています。
<優の誕生>
●2004年
・「ブチハイエナが2頭生まれました。1頭は残念ながら17日に死亡しましたが、残る1頭は順調に育っています。ブチハイエナの繁殖は、当園では初めてです。」(2004年【Vol.40-09】9月号)
→「優」誕生です。愛と秀が親になった日であり、天王寺動物園で初めてブチハイエナが誕生した日でもあります。
・「こんなに大きくなりました!2004年生まれの赤ちゃん」
生後1日目:生まれてすぐに歩くことができるのには驚かされました
生後13日目:耳も立ちしっかりとしてきました
生後28日目:生まれた時から歯は生えていましたが、もう立派な歯並びに
生後49日目:生まれたときの体重は1kgでしたが、この日で4.5kgに
生後162日目:真っ黒だった毛色も親と同じような斑紋が現れてきました
(【Vol.40-12】)
・ブチハイエナ優ちゃんの成長日記
「メスの愛の方が強く、オスの秀は逃げ回り、隅にいることが多く、交尾は観察されませんでした。そんなわけで、妊娠しているとは思われませんでした。~出産当日、朝早く出勤するとオオカミ舎で何かイヌかネコの赤ちゃんのような鳴き声がしました。管理通路に入って周囲を観察をすると、ブチハイエナのメスの寝室が血だらけになっていました。出産を疑いましたが、赤ちゃんの姿が寝室内のどこにも見当たりません。しかし、鳴き声は聞こえるので、声のする方へ探しに行きました。すると、排水溝の中で真っ黒な赤ちゃんが2頭鳴いていました。」(【Vol.41-07】)
→優は発見が遅れたら亡くなっていたかもしれません。助かって本当によかったです。
▼「ブチハイエナ優ちゃんの成長日記」ぜひ全文読んでみてください
●2005年
・「優の体重測定と記録写真は1週間にごとに行い、1年間続けました。」(2005年【Vol.41-07】7月号)
<アフリカサバンナゾーン完成>
●2006年
「ビューポイントの前には床暖房の入った岩や、冷風の吹き出し口を設けてライオンやハイエナを誘い、冬でも夏でもガラス越しにライオンやハイエナを間近に見ることができるように工夫しました。」(2006年9月9日【Vol.42-10】10月号)
●2007年
・「ブチハイエナの愛の出産に備え、寝室にベニヤ板を張り、ビデオカメラでの記録を開始しました。」(2007年【Vol.43-08】8月号)
→優の誕生から3年後、愛は再び妊娠しました。秀との相性はとてもよかったようですね。
・「2007年8月15日、ブチハイエナが2頭生まれました。一頭はすぐに死亡しました。」(2007年【Vol.43-09】9月号)→「蓮(れん)」の誕生です。
・「ハイエナ展示場内にウェットミスト装置を大阪市水道局のご協力を得て設置しました(11月まで)。」(【Vol.43-10】)
・「8月14日に生まれたオスの蓮。生まれて間もなくは全身真っ黒でしたが、頭部から少しずつブチ模様が見られ始めました。11月10日に屋外デビューを果たし、元気に遊びまわっています。」(2007年【Vol.43-12】12月号)
<優の短い生涯>
●2008年
・「ブチハイエナの子どもが堀に落ちないよう放飼場に設置していた臨時の柵を撤去しました。また放飼場に新しい土も入れました。」(【Vol.44-03】2008年3月号)
・「朝から降りだした雪が積もったためアジアゾウ、アミメキリン、ブチハイエナ、ライオン、ウンピョウなど寒さに弱い動物たちを早めに収容したり、寝室の扉を開放し中に入れるようにしました。」(【Vol.44-03】2008年3月号)
→職員さんの優しさが伝わるエピソードです。
・「2008年3月31日、ブチハイエナの雌の優の虫歯の抜歯手術を行いましたが、残念ながら手術後死亡しました。」(Vol44-4【2008年4月号】)
優は天王寺で初めて生まれたブチハイエナ。3歳半という短い生涯でした。
・「硬い子牛の骨もへっちゃら、アゴの力が強いので噛み砕いて食べてしまいます。」(【Vol.45-03】)
・「大阪小児歯科専門医臨床研究会の協力を得て「歯を大切にしようデー! ~人も動物も歯が命~」を開催しました。~ブチハイエナの歯の掃除のための牛骨給餌とワンポイントガイドを実施しました。」(【Vol.46-06】)
<秀天国へ>
●2010年
・「2010年6月2日、ブチハイエナの雄の秀が消化管通過障害で死亡しました。」(2010年【Vol.46-07】7月号)
→「秀」は恥ずかしがり屋の可愛いハイエナでした。資料が残っている中では、日本で2番目にパパになったブチハイエナです。
<レイの来園>
●2011年~2012年
・「2011年3月28日、ブチハイエナの雄の蓮(レン)を池田動物園へ搬出し、交換に雄のレイを搬入しました。レイは5月19日から展示。」(【Vol.47-04】)
→蓮は現在も、移動先の池田動物園(岡山県)で元気に暮らしています。
・「ハイエナ舎では町出係員の持つ牛の大腿骨にひかれて、ブチハイエナの雌の愛がよだれを垂らさんばかり。けして、ガラスの前の子をねらっているのではありませんよ。」(【Vol.47-07】)
・「肉食動物の“おやつタイム”は火曜日から金曜日の午後1時30分から、日替わりで実施しています。~ハイエナビューに設置している、餌の投入口から豚の骨を与えます。骨をバリバリ食べるブチハイエナの迫力ある姿をご覧いただけます。」(【Vol.48-08】)
・「2011年12月6日、ブチハイエナのレイと愛を初めて同居させました。」(【Vol.48-01】)
・「2012年9月3日、ブチハイエナの愛とレイを同居させ様子を観察しました。」(【Vol.48-10】)
・「2012年10月2日、ブチハイエナの愛とレイを同居させ様子を観察しました。」(【Vol.48-11】)
・「2012年11月1日、ブチハイエナの愛とレイを同居させ様子を観察しました。」(【Vol.48-12】)
→秀が亡くなってからは、愛とレイのペアリングを行っていました。2011年~2012年は怒涛の同居期間でした。2頭の相性はよかったのでしょうか。
●2014年
・「野間馬の福ちゃん、ブチハイエナの愛とご対面。」(【Vol.50-01】)
・ハイエナ夫婦
「天王寺動物園には4月で7歳になるレイ君と13歳になる愛ちゃんのブチハイエナの仲がいい夫婦が暮らしています。夫婦円満の秘訣(ひけつ)は2011年に岡山県の池田動物園からおむこさんとしてやって来たレイ君が、来園以来アイちゃんに逆らったことがないからなのではないでしょうか。~“おやつタイム”の時にいつもエサを食べるのは愛ちゃんで、一歩後ろで欲しそうに我慢しているレイ君には、哀愁がただよってきますが、これも夫婦円満のためなのです。朝、展示してすぐ愛ちゃんに忠誠の意味を込めて、足を上げ自分の体の臭いを嗅いでもらったり、愛ちゃんの機嫌が悪い時には「ヒーヒー」と甲高い声を出し、逃げながらご機嫌取りに頑張っています。」(2014年【Vol.50-02】2月号)
→レイがあまりにも健気でかわいそうと思ってしまいますが、ハイエナ界では序列を守ることが非常に重要なルールなのです。
・「2014年2月15日、ブチハイエナのレイと愛が交尾しました。」(【Vol.50-03】)
・「2014年4月8日、ブチハイエナのレイと愛が交尾しました。」(【Vol.50-05】)
→レイと愛の相性はよく、無事に結ばれました。しかし…
・「2014年9月27日、ブチハイエナの愛の帝王切開を行いましたが、胎子は死亡していました。」(【Vol.50-10】)
→赤ちゃんは愛のお腹の中で死亡してしまっていたようです。帝王切開ということで、愛の体にも相当な負担がかかったでしょう。愛の健康が心配されます。
●2015年
・「2015年6月22日、ブチハイエナの雄のレイと雌の愛を同居させました。」(【Vol.51-07】)
→帝王切開から9か月後、レイと愛は再び同居を再開しました。
・「ライオン、ブチハイエナ、小型ネコ舎、大型ネコ舎、オオカミ舎の動物たちに与えている1日分の餌の全量は鶏肉35羽、牛肉20kg、馬肉4kg、鶏の胸肉6kg、鶏頭40本、牛レバー4kgにもなります。オオカミ、ブチハイエナはほぼ丸のみで一瞬で食べてしまいます。」(【Vol.52-02】)
・「「ハイエナのような」という言葉や死肉をあさったりライオンの獲物を横取りするイメージが強いからか悪役のキャラクターで描かれがちなブチハイエナですが、レイ君を見てください!クリクリの目、大きな耳、こんなにも愛らしいお顔をしているんです。パートナーの愛ちゃんを遠慮がちにひょっこり覗(のぞ)き見たり、テンション高くプールではしゃぐ様子も必見です!」(【Vol.52-10】)
<「ハナ」来園>
●2017年
・「6月29日から7月9日にかけて募集したブチハイエナ(雌、2013年9月22日生まれ)の命名式を行いました。投票の結果、名前はハナに決定しました。」(2017.10月[秋号])
・「ブチハイエナのハナは3月に中国の上海動物園からやってきました。ブチハイエナは雌のほうが体が大きくなります。 先輩には雌の愛と雄のレイがいますが、今は雄のレイと同じぐらいの大きさです。これからのハナの成長とレイとの間に誕生するベビーが楽しみです。」(2017.10月[秋号])
→少し高齢になってきた愛に代わって、ハナがレイのお嫁さんとしてやってきました。
●2020年
・愛が入眠するだけのブログが投稿(可愛い)。(2020年5月21日)↓
<「愛」の隠居>
・「ブチハイエナの愛は高齢のため足腰が弱くなってきたため斜面が多い展示場から、フラットな非展示エリアへ移すことになりました。そこで、寝室の中に移動用の檻を設置し中に入る練習を始めました。」(2020年:Vol.56-03【秋号】)
・「アイは推定2001年野生生まれで、今年で19歳になります。最近は少し足腰に衰えが見え、目も白くにごってきました。移動後は、アイの姿をみなさまにお見せすることができなくなってしまいますが、高齢のアイのケアを優先させていただきたいと思います」(2020年8月14日)
●2021年
・「ブチハイエナの咆哮に対してほえて存在をアピールするライオン一家の様子をYouTubeで配信しました。」(2021年:Vol.57-01【冬号】)
→何年たっても天王寺のライオンたちは、ハイエナが鳴くと鳴くんですね(笑)伏線回収の瞬間です。
・「雄のレイは雄のハナの顔色をうかがいつつ同居練習を続けています。一日中仲良くすごせる日が来ることを願っています。」(2021.4月[春号])
・「オオカミ舎のバックヤードで暮らしているブチハイエナの愛の様子をFacebookで動画配信しました。」(2021年10月15日)
こうして2020年9月28日から、高齢のため非公開エリアで暮らすことになった「愛」。立派なお母さんハイエナとして、そしてハイエナのボスとして、たくさん活躍してくれました。私たちは愛に会えなくなってしまいましたが、これからは自分のために、健康に楽しく生きてほしいと思います。
愛の隠居生活の様子は、公式ブログやSNSで発信されています。
●2023年
▼最近、久しぶりに愛の様子が投稿されました。(2023年11月21日)
<天王寺動物園のブチハイエナ>
愛(アイ)(メス、野生由来個体。2003年にタンザニアから来園)
レイ(オス、2007年4月5日大宮公園小動物園生まれ。2009年に池田動物園へ。2011年に天王寺に来園)
ハナ(メス、2013年9月22日生まれ。上海動物園から2017年に来園)
以上、天王寺動物園のブチハイエナ史でした。
非常に長かったと思いますが、まだ1つ目です(笑)
まだまだ続きます。
【1988年~】日本平動物園(静岡県静岡市)
現在飼育されている個体:「ツキ」(2004年~)「セレン」(2009年~)
続いては、日本で初めて生まれたブチハイエナが暮らしている、静岡市日本平動物園のブチハイエナ史です。
▼日本平動物園のブチハイエナ史
1988年4月:ブチハイエナ初来園
2001年4月26日:「ホシ」来園
2003年6月20日:「キラ」来園
2004年5月20日:「ツキ」誕生
2005年2月28日:キラ・ホシの第2子誕生(間もなく天国へ)
2006年7月31日:「キラ」「ホシ」大宮公園小動物園へ
2009年3月16日:「セレン」来園
日本平のブチハイエナ「ツキ」と「セレン」は兄弟。生まれた場所が異なるため互いに兄弟の認識はありませんが、両親は同じです。彼らの両親は、大宮公園小動物園で暮らしている「キラ」と「ホシ」。2頭は2007年まで日本平動物園で暮らしていました。
ツキは、前述の天王寺で初めて生まれたブチハイエナ「優」と同い年。2か月だけツキのほうが早く生まれました。セレンは、天王寺で暮らす「レイ」と一緒に生まれた双子です。
ここからは日本平動物園情報誌『でっきぶらし』より、ブチハイエナのエピソードをたどっていきます。
<ブチハイエナ初来園>
●1988年
日本平動物園に初めてブチハイエナがやってきたのは、1988年4月のことでした。天王寺動物園と同じく、ハイエナの誤解されたイメージを払拭するべく、昔から正しい情報を伝えています。この最初のブチハイエナがどんな生活をしていたのかは情報がありませんでしたが、見つけ次第追記していきます。
<キラ・ホシ来園>
●2001年
まず来園したのは「ホシ」。
ホシはアフリカで生まれ、推定7ヶ月で日本平動物園に来園しました。
●2003年
2年後に「キラ」が来園。このとき推定5~6歳でした。ホシと同じく、アフリカ生まれの個体です。
キラとホシは結構歳の差があるカップルなんですよね。
<ツキの誕生>
●2004年
→キラは来園してすぐホシと仲良くなったようです。当時の日本平動物園はブチハイエナの出産成功例がありませんでした。そんな中でも順調にペアリングを進めていったようすがわかります。
そして…
→キラがホシといることはストレス緩和になるけど、ツキがホシのところに行くことには母として、警戒してしまう。それってキラがちゃんと子どもの立場になって考えることができる性格だからだと思います。
職員さんたちは初めてのブチハイエナの赤ちゃんを無事に育てるため、キラ・ホシと協力しながら、様々な試行錯誤を繰り返していたことがわかります。そのかいあって、ツキは無事に育ちました。
●2005年
→しかし2005年に生まれたツキの姉弟は、すぐに亡くなってしまったようです。
<キラホシ大宮公園小動物園へ>
●2006年
→キラとホシは、繁殖を目的とした動物の貸し借り「ブリーディングローン」によって、大宮公園小動物園(埼玉県)へ一緒に旅立ちました。
ツキは一頭になり、しかも工事のため急遽ホッキョクグマ舎へ移動(異様な光景だったそう)。そんな大忙し(?)だったツキですが、いつも元気だったため、検査の際は麻酔の効きが非常に悪く、獣医さんを困らせていたようです。
<セレン 大宮公園小動物園から来園>
●2009年
→「セレン」の来園です。セレンはキラとホシのブリーディングローンの成果として、日本平動物園に帰ってきました。
キラとホシはとても相性のよい夫婦。大宮公園小動物園に移動した翌年に、セレンを授かりました。もしかしたらキラは移動中にすでに妊娠していたのではないでしょうか。
こうして、現在の日本平動物園のブチハイエナ兄弟がそろいました。
<ツキとセレンの日常>
・「今動物園では猛獣館を建設していて、その建設で大きな音が発生するのがストレスになり、ハイエナが自分の足を噛むからと入院していました。」(191号(2009年12月)実習生だより)
●2015年
・「ブチハイエナの兄弟は、今年で11歳と8歳になりました。ブチハイエナの寿命は約30年、まだまだこれからなお年頃です。気になるのはお嫁さん問題ですが、当園では繁殖が成功したとしても飼育できるスペースがないことや、飼育している動物園が少ないため子どもの引き取り手もなかなか現れないことを考えると、難しい問題です。無計画に繁殖させるわけにはいかないのです。しかし今後ブチハイエナの人気がもっと高まり、たくさんの動物園で飼育するようになれば、ツキとセレンがお嫁さんをもらう日も来るかもしれない・・・と淡い期待を抱きながら、飼育担当者は今日もブチハイエナの魅力をみなさまに伝えるべく奮闘しています。」(227号(2015年12月))
→日本平動物園では2013年に「猛獣館299」という、ネコ科の猛獣やホッキョクグマを展示する施設がオープンしました。ブチハイエナも猛獣ですが、諸事情により元の古い展示場で暮らすことになりました。ツキとセレンに気づかず猛獣館に入ってしまう来園者が増えたことで、職員さんがブチハイエナの魅力について熱く語っています。
ちなみにこの投稿から間もなく8年になりますが、ツキとセレンのお嫁さんは見つかっていません。
●2016年
・「ブチハイエナ、世間一般に拡がっている悪いイメージとは正反対の動物で、極めて高度な身体能力と知能を持った非常に優れたハンターであり、しかも、群れの中にいる弱った仲間の面倒を、とても良くみている様子が目撃されている生き物です。」(230号(2016年06月))
→一般的に弱った仲間の面倒は見ない動物が多いのに、ブチハイエナは弱った仲間の世話を献身的に行う動物である、ということを解説しています(知らなかった)。
●2018年
・ハイエナスポットガイド(ツキのお誕生日会)
「「うわあ、嬉しいね、ツキ。すごいね!」とツキに声をかけたところ、早くプレゼントをよこせ、という目線でのアピールしか返って来ませんでしたが、みなさまの熱気は伝わったようで、ツキとセレンの兄弟はその日1日満ち足りた表情で過ごしていました。」(243号(2018年08月))
●2021年
・「ハイエナは嗅覚がとても優れているので、見えなくても寝室にお肉がないことはお見通し。いつもなら扉を開けるとダッシュで寝室に帰ってくるのに、絶食日は扉を開けても座っていたり、そっぽを向いたり。「ごはんがないなら帰らないよ!」というように、無言の抗議をしてきます。声をかけてもこちらをチラリとも見向きもしません。」(259号(2021年4月))
日本平動物園のブチハイエナについての情報発信は、常に正しい生態を伝え続けていることがわかります。日本で初めての繁殖を成功させた動物園としての責任や信頼感が感じられます。
一方で独特のポップなイラストや、砕けた言葉づかいで、ブチハイエナのことを楽しく理解してもらえるように努めてもいます。
▼日本平動物園のブチハイエナ
ツキ(オス、2004年5月20日日本平動物園生まれ)
セレン(オス、2007年4月5日大宮公園小動物園生まれ。2009年3月16日日本平動物園へ)
ツキはこのあと登場する母「キラ」に、セレンは父「ホシ」に似ています。
以上、日本平動物園のブチハイエナ史でした。
【2006年~】大宮公園小動物園(埼玉県大宮市)
現在飼育されている個体:「キラ」「ホシ」
続いては、ツキ&セレンの両親「キラ」と「ホシ」が暮らす、大宮公園小動物園のブチハイエナ史について紹介します。
▼大宮公園小動物園のブチハイエナ史
2006年7月31日:「キラ」「ホシ」来園
2007年4月5日:「レイ」「セレン」誕生
2009年3月16日:「セレン」日本平動物園へ
2009年6月8日:「レイ」池田動物園へ
2010年4月8日:「ブブゼラ」双子で誕生
2010年5月7日:赤ちゃん一頭が天国へ
2012年12月14日:「ブブゼラ」宇都宮動物園へ
2013年7月27日:ハイエナ舎リニューアル
<キラ・ホシ来園>
●2006年
→2006年、キラとホシの来園です。
ブチハイエナは2007年時点で6頭しかいなかったこと、関東の動物園では1975年頃からブチハイエナの飼育歴がなかったこと、とても驚きました。
1975年頃までは一体どこの動物園で飼育していたのでしょうか。
<レイ・セレンの誕生>
●2007年
キラとホシが日本平動物園からやってきて1年後、2頭の赤ちゃんを授かりました。「レイ」と「セレン」の誕生です。
「セレン」はアフリカにあるセレンゲティ国立公園、「レイ」は当時の飼育実習生(女性)の名前に、それぞれちなんで名づけられました(由来に幅がありすぎる…!)。
なお同年、大宮公園小動物園は「エンリッチメント大賞」を受賞しています。ツキとセレンの繁殖成功に関しても高く評価されました。
※エンリッチメント大賞:エンリッチメント(飼育動物の行動の多様性を引き出すための工夫)に取り組む動物園や飼育担当者を応援すると同時に、来園者である市民がエンリッチメントを正しく理解・評価することにより、市民と動物園をつなぎ、市民の動物園に対する意識を高めることを目指して、2002年度より実施している取組。
なおここからは、大宮公園小動物園飼育日誌に基づいて、ブチハイエナのエピソードを紹介していきます。
●2008年
・「ずっと仲が良かった兄弟「セレン」と「レイ」でしたが、6月頃から頻繁にケンカするようになりました。ケンカといっても彼らには順位があるようで、やられるのはいつも「セレン」でした。」(8月18日)
→セレンは麻酔科での治療が必要になるほど深い傷ができてしまい、以降2頭は別々で飼育されることに。
・「3つのグループに分けて飼育しています。ですから、運動場に出ているのはいつも1頭か2頭です。彼らは当園の人気物なので、たびたび会いに来てくださる方が多くいます。みなさんにも見分けてもらいやすいように、全頭顔写真入りの看板を作りました。」(10月31日)
・セレンとレイの性別判定(10月31日)
調査方法:PCR法(毛根細胞のDNAから調べる)
結構抜くんですね。毛を一気に抜かれても気にしないハイエナ一家、肝が据わっています。
そして調査の結果は…
1:「レイ」
2:「セレン」
3:「キラ」(母親)
4:「ホシ」(父親)
→白い線がないとオス!3のキラだけ線がありませんね。ということで、レイもセレンもオスだと判明しました。
<レイとセレンの旅立ち>
●2009年
前述したように、セレンは3月16日に静岡市日本平動物園に旅立ち、兄のツキと暮らすことになります。
レイは6月8日に岡山県にある池田動物園へ旅立ちました。池田動物園はこの時初めて、ブチハイエナの飼育を開始したことになります。
息子たちを見送った父「ホシ」のようすはというと…
大好物のウマの腸を吊るして与えられたところ、緊張で腰が引けて近づかなかったそう。ヒモが怖かったのかも?
<ブブゼラの誕生>
●2010年
・「レイとセレンが旅立って半年。2009年末から、繁殖を目的とした同居を再開。」(1月30日)
→服従の証として牙を見せるなんて不思議ですね。特にハイエナはあごの力が強いですから、牙を見せる行為は一番の威嚇になると思ってしまいますが…。ホシはキラと何度も子を授かっているので、キラの扱い方がわかっているのでしょう(?)
そして…
4月8日、双子の誕生!
→キラは、ツキを出産したときも体をなめて、懸命に世話をしました。今回もレイとセレンに続いて双子の出産でしたが、2頭とも落ち着いて世話をしていました。
「ブチハイエナ成長アルバム」には、3週目までの双子の成長の様子が残されています。
ところが…
→双子のうちの1頭は、生後1か月を迎える前に亡くなりました。本来野生で暮らす動物の赤ちゃんは、無事に育つ確率が非常に低いです。ブチハイエナは仲間を見捨てない動物だ、と前述しましたが、そうしなければならないこともあるということです。
当然ですが、キラは悪くありません。そもそも「悪い」とか「責任」とかいう概念はこの出来事に存在しないのです。
そして、生き残った赤ちゃんは、6月20日に公開されました。
公開時には両親のふるさとであるアフリカの音楽が流されたそうです(笑)
びっくりしてしばらく出てこなかった赤ちゃんは一旦さておき、名前募集の話が始まりました。
6文字の2つは日本人にはかなりパンチのきいた名前に思えますよね。個人的には楽器が由来となった2つの名前が素敵だなと思います。
10日間の応募期間があり、結果は…
「ブブゼラ」!
アフリカ音楽にビビっていたブブゼラは、アフリカの楽器の名前をもらいました。
<ブブゼラの旅立ち>
●2012年
立派に成長したブブゼラは、2歳で宇都宮動物園(栃木県)へと旅立ちました。
兄のセレンは日本平動物園へ旅立つとき、輸送箱にすんなり入ったというエピソードがありましたが…
ブブゼラはやっぱり少しビビりさんのようで、麻酔で眠らせての輸送となりました。
彼は現在も宇都宮動物園で元気に暮らしています。
そうして2012年に子育てを終えたキラとホシは、現在も2頭で穏やかに暮らしています。
<キラとホシの日常>
●2013年
ハイエナ舎リニューアル!
檻がほとんどガラス張りになったハイエナ舎。土や落ち葉が敷かれ、植物が植えられ、池や水たまりもあります。
この池についてなのですが…
●2021年
職員さんたちの優しさがわかるブログでした。
ホシはハイエナ界のルールに忠実なハイエナです。同居を解消しても、キラが池をたくさん使っていたことはずっと覚えているようです。
「ホシ専用のプール」ですが、お気に入りの場所に水をためて、そこで水浴びをすることがあるようです。よかったね、ホシ!
▼大宮公園小動物園のブチハイエナ
ホシ(オス、推定2000年アフリカ生まれ。2001年4月26日日本平動物園に来園)
キラ(メス、推定1998年アフリカ生まれ。2003年6月20日日本平動物園に来園)
2頭は2006年7月31日、一緒に大宮公園小動物園に来園。優しい性格の仲良し夫婦です。キラは2023年現在、国内最高齢のブチハイエナです。
以上、大宮公園小動物園のブチハイエナ史でした。
【2010年~】円山動物園(北海道札幌市)
現在飼育されている個体:「カミ」
舞台は移って、北海道。
札幌市にある円山動物園のブチハイエナについて紹介します。
天王寺動物園、日本平動物園、大宮公園小動物園のブチハイエナたちはアフリカ出身で、血縁や引っ越し等で関連がありましたが、円山動物園のブチハイエナはまったく新しい血統の、韓国出身の個体です。
▼円山動物園のブチハイエナ史
2010年10月6日:「カミ」「カムトリ」韓国オー・ワールドより来園
2014年9月:メスだと思われていた「カミ」、オスだと判明。同時に2頭の個体名と認識が逆であったことも判明
2015年7月22日:アフリカゾーン カバ・ライオン館へ引っ越し
2016年6月4日:「カムトリ」九州自然動物公園アフリカンサファリへ
<カミ・カムトリ来園>
●2010年
円山動物園がブチハイエナの飼育を開始したのは2010年10月6日。
韓国大田広域市と札幌市との姉妹都市提携を記念して寄贈された個体「カミ」と「カムトリ」です。
円山動物園はこの動物交換の際、リスザルを8頭、韓国に寄贈しました。
カムトリは2008年3月8日生まれ(父オルパンイ・母ハイ)、カミは2009年9月3日生まれ(父チョムパギ・母カムスミ)です。
2頭の名前の由来は、ブチハイエナの赤ちゃんは体が黒いことから。韓国語で「黒い」を意味する「カマッタ」、黒いイメージを表す「カム」に、オスにつけられることが多い「トリ」を付けて、オスは「カムトリ」、メス(だと思われていた個体)は「カミ」と名付けられました。
2頭は北海道唯一(唯二)のブチハイエナとして、2010年10月21日に一般公開されました。来園当初は、「熱帯動物館」という施設の屋内で暮らしていました。
2頭のお披露目時にはセレモニーが開催され、多くの報道陣が集まりました。
ここからは円山動物園公式ブログより、カミとカムトリのエピソードを紹介します。
●2011年
●2012年
→ブチハイエナのうんこの臭さは結構上位にランクインしていますね(エゾタヌキの得票数は投票数の3割だったそうで、それもすごい)。
ブチハイエナは動物の骨までかみ砕くので、白いふんをすることが知られています。色だけ見ると臭くなさそうですが…いくら骨の割合が高くても、臭いものは臭いということですね。
●2013年
→2頭は繁殖を目指して何度も同居していたのですが…
<カミ、オスだと判明。しかも…>
●2014年
2012年8月、同居していたカミとカムトリの間に激しい闘争が起き、それがきっかけで別々に飼育されることになりました。
2014年9月、検査の結果、どちらもオスであることが判明。それに加えて、カミと呼んでいた方がカムトリ、カムトリと呼んでいた方がカミだったということも確認されたのです。
性別の誤認はさておき、個体名の認識がなぜ逆だったかというと、来園時の輸送箱がそもそも逆だったからだそうです。そのため、2014年までのブログや資料は、カミとカムトリが逆になっています。
※この記事では可能な限り修正して掲載しています。
<アフリカゾーン完成>
●2015年
▼アフリカゾーンの詳細についてはこちらの資料を見るとわかりやすいです。
こうして2015年7月に新しい施設に引っ越したカミとカムトリ。2頭にゆっくり慣れてもらうために、かなり長い期間、非公開になっていました。
「これは室内展示場のカミです。朝の10時だというのに、ぬくぬくと眠っております。カミの寝ているところは、実は、室内に設けたプールです。なぜか彼はこの水を張っていないプールの底が好きで、ここに乾草を持ち込んで寝ています。」
「カムトリは、同じように乾草をもらっているのですが、土の上でそのまま眠っています。写真の時は丸くなっていますが、おなかを出して寝ていることもよくあります。」
動物ファーストの円山動物園。2頭のペースに合わせて時間をかけ、2015年12月23日、アフリカゾーンが一部観覧可能となりました。
<カムトリの旅立ち>
●2016年
2016年6月、カムトリが大分県にある九州自然動物公園アフリカンサファリへと旅立ちました。移動は陸路とフェリー。とても長い旅になったと思います。
・「ブチハイエナのカムトリとの交換で、エランドのオペルが5月26日来園しました。」(豪華二本立て その2 エランドのオペルが仲間入りしました 2016年5月28日)
カムトリの大分ライフについては、のちほど紹介します。
<カミの日常>
●2021年
一頭になったカミは、現在も北海道の公営動物園の中では唯一のハイエナとして暮らしています。
寒さが苦手なブチハイエナですが、カミは雪がたくさん積もった日でも外に出て雪を掘って遊ぶことがあります。室内の暖かさが一番のようではありますが♪
●2022年
→カミの飼育担当である佐々木さんのインタビュー動画が掲載されました。
佐々木さんとカミのトレーニングのようすや、カミが展示場でどんなふうに過ごしているかを知ることができます。
動画内にあったカミの体重は54kgということで、オスにしてはかなり大きめのブチハイエナだとわかります。
・「野生のハイエナは、食べきれなかったエサを、土や水の中に隠す習性があります。隠したエサを嗅覚を使って探したり、土を掘って取り出すため、動物園でも穴を掘って埋めることがあります。」(「円山動物園だより」2022年秋号)
→寒い地域には生息していないブチハイエナですが、飼育員さんたちはカミの野生本来の行動を引き出そうと、さまざまな工夫をしています。
●2023年
・「これまで4回ほど屠体給餌していますが、最初はどのように食べれば良いのか分からず、とりあえず噛んでみたり、水につけたり、とにかく時間がかかりましたが、今は効率よくおいしい部分から肉を剥ぎ取るように骨まできれいに食べています。 」(「サポクラ通信」2023年6月号)
▼円山動物園のブチハイエナ
カミ(オス、2009年9月3日韓国大田広域市オーワールド(O-World)生まれ。2010年10月6日円山動物園来園。)
以上、円山動物園のブチハイエナ史でした。
【2010年~】のいち動物公園(高知県香南市)
現在飼育されている個体:「エナ」「ブッチー」(2010年~)「カロア」(2023年~)
続いてはブチハイエナ3家系の中では最も新しい「のいち家系」を紹介します。高知県にあるのいち動物公園がその舞台です。
ここで、とてもややこしいことをお伝えします。
★現在、国内のブチハイエナにはメスの「エナ」と、オスの「エナ」がいます。メスの「エナ」がいるのが、のいち動物公園。
★「ブッチー」と「ブッチ」もいます。「ブッチー」がいるのが、のいち動物公園。
★メスの「アズキ」と、オスの「あずき」もいます。メスの「アズキ」が生まれたのが、のいち動物公園。
これからもれなく全員登場しますので、整理しながら読んでみてください。
▼のいち動物公園のブチハイエナ史
2010年:「エナ」「ブッチー」来園
2012年10月2日:「トーフ」誕生
2013年8月20日:「アズキ」「ダイズ」誕生
2015年3月:「アズキ」「ダイズ」アフリカンサファリへ
2020年~2021年:「ブッチー」にガンが見つかり手術
2022年8月27日:「トーフ」無麻酔で採血に成功(当園初)
2023年10月10日:「カロア」千葉市動物公園より来園
2023年10月11日:「トーフ」千葉市動物公園へ
2023年11月~:「カロア」、「ブッチー」との同居開始
<エナ・ブッチー来園>
●2010年
エナとブッチーは、推定2008年にタンザニアで生まれた個体。2010年に一緒に来園しました。
2010年、のいち動物公園ではリニューアル工事が行われていました。内容は、ブチハイエナ・ハシビロコウの新展示、アナホリフクロウ舎の移設、テナガザル舎のタワー改修、トイレ改修など。
工事が終わり、万全の態勢で迎えられたエナとブッチー。来園したのは夏休み期間中でした。
<トーフ誕生>
●2012年
エナとブッチーは非常に相性が良く、すぐに良い関係を築きました。そして2012年10月2日、のいち動物公園で初めてのブチハイエナの赤ちゃん(オス)が誕生しました。
名前は、生まれた日にちなんで「トーフ」。
トーフは生後1か月で屋外展示場に出ました。エナは立派に世話をしていますね。
現在は削除されてしまっていますが、当時はトーフの成長記録も公開されていました。
●2013年
生後約半年で、お父さんのブッチーとも一緒に展示場に出ることができました。ブチハイエナはメスが上位ですが、ブッチーはオスでありしかも息子でもあるトーフに対しても低姿勢なパパでした。
実はブチハイエナの序列は、遅く生まれたほうが上だと言われています。若い遺伝子を少しでも残せるようにそうなったのではないかという説もあります。
<アズキ・ダイズ誕生>
生後10か月のトーフに、妹ができました。
2013年8月20日、エナが女の子の赤ちゃんを2頭出産しました。2頭は「アズキ」「ダイズ」と名付けられます。
ブチハイエナの序列は、メスがオスより上、そして、遅く生まれたメスがさらに上になります。つまり、5頭のうち、アズキとダイズは生まれた瞬間に「最も上の存在」になったのです。上の動画を見ると、トーフは妹たちと遊んであげているような、遊ばれているような、そんな感じです。
●2014年
2014年から2015年ののいち動物公園では、国内最多の5頭の群れでブチハイエナを展示していました。エナを大黒柱として、野生のハイエナが群れでどんなふうに暮らしているか、観察することができました。
・ブチハイエナ双子 ダイズ、アズキの誕生会(8月17日)
「二姉妹の1歳の誕生日を記念してこれまでの成長記録の紹介と、動物には飼育係特製、肉のケーキをプレゼント。」
<ダイズ・アズキの旅立ち>
●2015年
・ブチハイエナ双子 ダイズ、アズキのお別れ会(3月1日)
「九州自然動物公園にブリーディングローンのため旅立つブチハイエナ雌2頭とのお別れ会を開催、担当者が成長過程など紹介した。成長過程など紹介した。また、来園者からの寄せ書きコーナーを設置。参加者:50名」
→2頭は繁殖のため、大分県にある九州自然公園アフリカンサファリへと旅立ちました。ダイズはそこで生涯を過ごし、アズキはのちに秋吉台サファリランドへと移動します。
兄のトーフよりも先に妹たちが旅立ったのはなぜだったのでしょうか。受け入れ先では、メスのブチハイエナの需要が高かったのかもしれません。
▼こちらのブログは、ブチハイエナ担当の飼育員さんが執筆したものです。エナとブッチーに家族ができるまでのことが書かれています。登録が必要になりますが、内容が充実しているので是非読んでみてください。
さて、のいち動物公園の公式ブログは、2021年以降のものが現在も残っています。
<病気を乗り越えたパパ>
●2021年
・「ブチハイエナの「ブッチー」は腰に皮膚癌が見つかり、昨年に摘出手術を受けましたが、新たに左足脚に見つかり手術しましたので、しばらくの間お休みさせていただきます。経過は順調で、エサもしっかりと食べて元気に過ごしていますので、ご安心ください。」(2021年06月08日)
→約1か月後…
・「6月上旬に皮膚がんの摘出手術を受けたためお休みしていたブチハイエナの「ブッチー」は、傷口がきれいにふさがったので展示場へと戻ってきました!「エナ」との久々の再会に、匂いを嗅いだり鳴き声を上げたりと、お互いに大興奮です。「ブッチー」にとっては「エナ」の尻に敷かれた生活が始まりましたが(笑)、メスをリーダーとするブチハイエナの群れの掟です。いつも温和なブッチーのお陰で、平穏な日常に戻りました♪」(2021年07月20日)
→ブッチーはエナのことが大好きのようです。尻に敷かれ続けても、それがブッチーにとっては幸せなのかもしれませんね。
●2022年
→この写真を見て、ブッチーのガンが治ってくれて本当によかったなと改めて思いました。
【動物ブログ】 飼育日記 ブチハイエナの採血をおこないました。
→無麻酔で首から採血ができたのはこれが初めてでした。ブチハイエナは猛獣ですから、これは本当にすごいことです。
<トーフとカロアの交換>
●2023年
のいち動物公園で初めて生まれたブチハイエナ「トーフ」は、11歳で千葉市動物公園に旅立ちました。たくさんの成長を見せてくれたトーフです。
10月8日に、トーフの送別会が行われました。
トーフにもちゃんと低姿勢だったパパ「ブッチー」との関係は、いつの間にか悪化してしまっていたようです。
そして、「カロア」が無事に来園。
・「輸送箱から出るのに少し時間を要しましたが、職員に警戒することもなく、餌も良く食べています。搬入直後は先住の「エナ」と「ブッチー」が「カロア」の寝室に興味津々。「カロア」も外の様子を気にして鳴き交わすなどしていました。」(2023年10月18日)
カロアはメス。エナよりも年下なので、3頭の中では序列が最も上になります。エナやブッチーは血縁がなくても、カロアが自分たちより若い個体だとわかるのでしょうか。
カロアは今後、ブッチーとの繁殖を目指すことになります。
2023年11月から早速同居の練習を始めているようです。
ブッチーはカロアにも低姿勢でいくのかと思われましたが、なんとカロアの背中を攻撃しに行ったそう!(下剋上狙い??)ですが全く歯が立たず、カロアの不思議な技で投げ飛ばされてしまいました。
カロアに下剋上の無謀さを思い知らされたブッチーは、再び尻に敷かれる生活に。2頭が楽しく、仲良くなっていってほしいなと思います。
▼のいち動物公園のブチハイエナ
エナ(メス、推定2008年タンザニア生まれ、2010年のいちへ)
ブッチー(オス、推定2008年タンザニア生まれ、2010年のいちへ)
カロア(メス、2019年南アフリカ生まれ、2023年10月千葉市動物公園より来園)
以上、のいち動物公園のブチハイエナ史でした。
【2011年~】池田動物園(岡山県岡山市)
現在飼育されている個体:「蓮(レン)」(2011年~)「ブッチ」(2013年~)
池田動物園のブチハイエナは「天王寺家系」に属します。2011年に天王寺で生まれた「蓮」が現在暮らしているのが、池田動物園です。
さきほどのややこしい話で紹介した、
★メスの「ブッチ」は池田動物園にいます。
★オスの「あずき」は、池田動物園で生まれました。
▼池田動物園のブチハイエナ史
2009年6月12日:「レイ」大宮公園小動物園より来園
2011年3月28日:「レイ」天王寺動物園へ、「蓮(レン)」天王寺動物園より来園
2013年11月11日:「ブッチ」しろとり動物園より来園
2015年9月13日:「ジェイ」誕生
2016年3月16日:「ジェイ」しろとり動物園へ
2016年10月13日:「あずき」「みらい」誕生
2017年9月「みらい」秋吉台サファリランドへ
2017年12月18日:赤ちゃん誕生
2018年:「あずき」しろとり動物園へ
2020年8月:ハイエナ舎リニューアル
●2009年
<レイ来園>
大宮公園小動物園で、「セレン」とともに生まれた「レイ」(オス)は、2009年6月12日に池田動物園に来園しました。
<レイと蓮の交換~天王寺動物園~>
●2011年
レイは約1年半池田動物園で過ごし、前述したように天王寺動物園の「蓮」と交換という形で、再びお引越ししていきます。
「蓮」は2007年8月14に天王寺動物園で生まれ、2011年3月に池田動物園へやってきました。愛と秀の息子です。
<ブッチ来園>
●2013年
蓮のお嫁さんとして、2007年しろとり動物園生まれの「ブッチ」が2013年11月11日に来園しました。
ブッチはすぐに池田動物園の環境に慣れたようで、来園から1か月もしないうちに、蓮とのお見合いを始めることができました。
●2014年
どちらも人懐っこい性格ですが、異性のブチハイエナに対しては…少し装飾気味でした。でも、2頭の相性は悪くありませんでした。
<ジェイ誕生>
●2015年
2015年9月13日、蓮とブッチに赤ちゃんが誕生しました。
SNSにその名前は登場していませんが、「ジェイ」という子です。
ジェイの成長の様子は、SNSでたくさん公開されました。
ジェイはその後2016年3月16日、お母さんのブッチの故郷であるしろとり動物園へと旅立ちます。
ジェイは移動先のしろとり動物園で、とんでもない事実が発覚することになります。
<あずき・みらい誕生>
●2016年
2016年10月13日には、双子の赤ちゃんを授かりました。
1頭はブッチが育て、もう1頭は人工哺育に切り替えられました。
「ハイエナの双子はどちらか1頭しか育たないことが多い。」大宮公園小動物園のキラとホシの間に生まれた子どもを紹介した際、そんな話をしました。もしかしたら池田動物園でも、ブッチが1頭だけお世話していたのを飼育員さんが発見して、人工哺育になったのかもしれません。
●2017年
2頭の名前は、投票で「みらい」と「あずき」に決まりました。
ハイエナの双子が、母親の子育てと人工保育で1頭ずつ育つというのは、池田動物園が初めてではないでしょうか。
<赤ちゃん誕生>
2017年12月18日、蓮とブッチはまたまた赤ちゃんを授かりました。
ところが公式からのお知らせは、年が明けてから赤ちゃんの公開が始まったという投稿が最後。
この赤ちゃんの名前や、その後どうなったのかについてはわかりません。
<みらいとあずきの旅立ち>
●2017年~2018年
2017年9月、「みらい」は秋吉台サファリランドへ、2018年、「あずき」はしろとり動物園へと旅立ちました。
<ハイエナ舎リニューアル>
●2020年
蓮とブッチは、新しくなったハイエナ舎にお引越ししました。
引っ越し後はゆっくりと慣れる時間を設け、今ではすっかりリラックスできるようになっています。
●2022年
蓮やブッチが落ち着いて過ごせるように、飼育員さんたちはマッサージを定期的にしているようです。
本来ブチハイエナは人間と触れ合う生き物ではありませんが、2頭がストレスなく暮らしていけるのが一番なので、個人的には素敵なやり取りだと思います。
池田動物園の売店では、数量限定でブッチと蓮の白いふんを樹脂で固めて販売していたようです。現在は販売されていないと思われますが、これは池田動物園だけでしか行われてなかったと思います(笑)
▼池田動物園のブチハイエナ
蓮(2007年8月14天王寺動物園生まれ、2011年3月来園)
ブッチ(2007年しろとり動物園生まれ、2013年11月11日)
これからも、蓮とブッチは仲良く暮らしてほしいと思います。
以上、池田動物園のブチハイエナ史でした。
※ここから民間の動物園等も登場してきます。資料が少ない場合があり、その際は一般の方のSNS投稿やYouTube動画等を貴重な情報として掲載しています。
【2011年~】しろとり動物園(香川県)
現在飼育されている個体:「エナ」「ジェイ」「あずき」「ブッシュ」「ケイシー」「ケリー」「オリー」「ジム」「ブロック」「レンガ」
香川県にあるしろとり動物園のブチハイエナは「天王寺家系」です。
★オスの「エナ」がいるのがしろとり動物園です。これまで4度父親になった、新しい血統を持つ個体です(出身地は不明)。
★オスの「あずき」は、池田動物園で生まれ、現在はここしろとり動物園にいます。
▼しろとり動物園のブチハイエナ史
2011年:「エナ」来園
2016年3月16日:「ジェイ」池田動物園より来園
2018年:「あずき」池田動物園より来園
2018年8月:「ブッシュ」誕生
2019年1月25日:「ガブ」「キュル」「ヤミー」誕生
2019年7月24日:「ケイシー」「ケリー」誕生
2019年11月21日:「ヤミー」「キュル」秋吉台サファリランドへ
2020年1月12日:「オリー」「ジム」誕生
2020年1月末?:「ブロック」「レンガ」誕生
2020年8月31日:赤ちゃん2頭誕生
2022年8月9日:「ガブ」とくしま動物園へ
<エナ来園>
●2011年
しろとり動物園のブチハイエナ史は、2011年の「エナ」の来園から始まります。エナの出身地は不明ですが、海外からの来園だと思われ、当時は国内のどのブチハイエナとも血縁がありませんでした。
<ジェイ来園>
●2015年
そして、岡山県池田動物園で生まれた「ジェイ」が、エナの「お婿さん」として2015年に来園します。
実は、「エナ」はメスだと思われていました。そして、池田動物園の項目で前述した「ジェイ」はオスだと思われていました。偶然にも性別がそれぞれ逆だったのが功を奏して、2頭は無事に(?)夫婦になることができました。
エナ君、ジェイちゃん、です。何度も唱えて性別と一緒に覚えましょう。
<あずき来園>
そして、2016年に池田動物園で生まれた「あずき君」がやってきます。ジェイちゃんの弟ですね。
<ブッシュ誕生>
●2018年
その後、エナ君とジェイちゃんは繫殖に成功し、2018年8月にオスの「ブッシュ」を授かります。
※あずき君とブッシュは、現在は非公開の個体であるという情報があります。
<ガブ・キュル・ヤミー、ケイシー・ケリー誕生>
●2019年
2019年はしろとり動物園のブチハイエナベビーラッシュ期です。
1月25日、エナ君とジェイちゃんは2度目の繫殖に成功。生まれた子は三つ子で、「ガブ」(オス)「キュル」(オス)「ヤミー」(メス)と名付けられます。
ガブ、ヤミー、キュルは誕生から少し成長した姿まで、資料が多めに残っています。
ブチハイエナの三つ子が母子ともに健康な状態で育つのはとてもすごいことですよね。
そして「ヤミー」「キュル」は、生後約9か月で山口県の秋吉台サファリランドへ移動します。
そして三つ子が生まれた半年後、7月にエナ君とジェイちゃんは、またまた赤ちゃんを授かります。2頭生まれた子どもたちは、「ケイシー」(オス)「ケリー」(メス)と名付けられました。
この時点で、しろとり動物園のブチハイエナの序列は…
1位:ケリー(メス・2019年7月生まれ)
2位:ヤミー(メス・2019年1月生まれ)
3位:ジェイ(メス・2015年生まれ)
4位:ケイシー(オス・2019年7月生まれ)
5位:ガブ・キュル(オス・2019年1月生まれ)
6位:ブッシュ(オス・2018年生まれ)
7位:あずき(オス・2016年生まれ)
8位:エナ(オス・2011年来園)
となります。
<オリー・ジム誕生>
●2020年
エナ君とジェイちゃんは、2020年1月にも双子を授かります。
今回は2頭ともオスで、「オリー」「ジム」と名付けられました。
2頭はあまりにもやんちゃな性格だったため、別々の寝室が必要になりました。その関係で、非公開のブッシュとあずきの公開予定がありましたが見送りになってしまいました。
<ブロック・レンガ誕生>
●2020年
2020年1月末頃に再び双子の赤ちゃんが生まれたようです。
この双子は「ブロック」「レンガ」と名付けられました。
2頭の誕生間もない2月5日から、期間限定で抱っこイベントが開催されました。赤ちゃんの成長により、すぐに終了したイベントです。
そして、2020年8月31日にも赤ちゃんが誕生しました。
2頭は首輪をしていたり、母親のようすがなかったりすることから、人工哺育で育てられた可能性があります。
この双子の名前は不明ですが…ブロック、レンガとは誕生日が異なるので別の双子であることは確かです。
●2021年
こちらのブログでは、しろとり動物園のブチハイエナ家族がどんなふうに生活しているか、少し知ることができます。
<ガブの旅立ち>
●2022年
三つ子のうち1頭だけ残っていた「ガブ」。
2022年8月9日、とくしま動物園初のブチハイエナとして出発しました。
●2023年
2023年現在、名前がわかっている個体だけでも10頭のブチハイエナが暮らしています。
一番最近の投稿は「ジム」でした。
Tiktokでもブチハイエナの魅力を発信しています。
▼しろとり動物園のブチハイエナ
エナ(オス、20211年来園)
ジェイ(メス、2016年3月16日池田動物園より来園)
あずき(オス、2018年池田動物園より来園)
ブッシュ(オス、2018年8月生まれ)
ケイシー(オス、2019年7月24日生まれ)
ケリー(メス、2019年7月24日生まれ)
オリー(オス、2020年1月12日生まれ)
ジム(オス、2020年1月12日生まれ)
ブロック(2020年1月末生まれ)
レンガ(2020年1月末生まれ)
2020年8月31日生まれの2頭
国内で最も大所帯のしろとり動物園のブチハイエナ。
今後も家族の動向に注目です。
以上、しろとり動物園のブチハイエナ史でした。
【2012年~】宇都宮動物園(栃木県宇都宮市)
現在飼育されている個体:「ブブゼラ」
▼宇都宮動物園のブチハイエナ史
2012年12月14日:「ブブゼラ」大宮公園小動物園より来園
来園以降、毎年誕生日会を開催。
<ブブゼラ来園>
●2012年
2010年4月8日に大宮公園小動物園で生まれた「ブブゼラ」 。お披露目の時に流れていたアフリカ音楽にビビっていたけど、アフリカの楽器の名前がつけられた男の子です。
2012年12月14日、立派に成長したブブゼラは、宇都宮動物園の初めてのブチハイエナとしてお引越ししました。
それではブブゼラの宇都宮ライフを紹介していきます。
主に担当飼育員の「明太子」さんのブログを参考にしています。
●2014年
→ブブゼラは宇都宮動物園に来園してからすぐに人気者になりました。「ブブ」と呼ばれ親しまれています。
お誕生日会も、毎年開催されています。
→お誕生日会に集まった来園者の数がとても多いことからも、その人気ぶりがうかがえます。
●2015年
→ブブゼラのブブゼラのように大音量の鳴き声です。
定期的に聞いて、ハイエナの故郷アフリカを思い浮かべてみたいですね。
●2015年
→2015年の誕生日プレゼント。これはすごいですね。ブブゼラのいい刺激になりますね。
普通のイヌだったら早食い防止になりそうですが、ブブゼラはどんな形でお肉を出されても、爆速で完食します。
→飼育員さんが大好きなブブゼラ。
「ブブは100%人の印象を変える子です。」という飼育員さんの言葉が印象的なブログです。
●2016年
●2017年
→ブブゼラも、お母さんの「キラ」のように、ちょうどいい枕を作ってもらえたようです。兄の「ツキ」ともそっくりですね。最初は砂場に少しビビっていたブブゼラですが、今では一番のお気に入りスポットです。
→このブログを読むまで知らなかったハイエナの生態です。どこの動物園でもこのことは発信されていない気がします。
そして、2017年のお誕生日会は…
→一段と豪華なプレゼントになっています。「マンガ肉」は人間が食べると骨だけ残りますが、ハイエナは跡形もなく食べてしまいます。ブブゼラは、むしろ骨の方が好きなんだそうです。
●2018年
→2018年のプレゼントは来園者からの花束と、丸鳥2羽付きのわんこ肉でした。もちろん牛骨も。
▼鳴き声の動画もアップデートされました。
●2021年
→ブブゼラのお誕生日会は、年を重ねるごとに豪華になっています。看板や手書きのイラストまで掲載されるってすごいですよね。
そして、2021年のプレゼントは…
→とうとう、お肉でお肉に文字を書いてしまう飼育員さん。
→骨が大好きなブブゼラは、来園者に見せびらかしてから食べました。
●2022年
→ブブゼラお誕生日会の進化はまだまだ止まりません。
→2022年は何と、桜の木をかたどったお肉の盛り合わせ。そういえばブブゼラは春生まれでしたね。
ブブゼラが爆速で完食するようすがtwitterにも投稿されています。
●2023年
→2023年、最新のお誕生日会のようすです。
10回目のお祝いにして満を持して、ブブゼラ自身がお肉にかたどられました。
10年間宇都宮で愛され続けるブブゼラです。
そして2023年は、お誕生日ともう一つ、お祝い事がありました。
「第8回動物美男総選挙」という宇都宮動物園のイベントで、ブブゼラが1位となったのです。
祝勝会でもらったプレゼントは、なんと王冠をかたどったお肉。ブブゼラはいつもいろんな方法で、飼育員さんたちに楽しませてもらっているのですね。これからも宇都宮動物園とブブゼラに目が離せません。
▼宇都宮動物園のブチハイエナ
ブブゼラ(オス、2010年4月8日大宮公園小動物園生まれ、2012年12月14日宇都宮へ)
以上、宇都宮動物園のブチハイエナ史でした。
【2015年~】九州自然動物公園アフリカンサファリ(大分県宇佐市)
現在飼育されている個体:「カムトリ」「ネイト」「ロコ」
▼アフリカンサファリのブチハイエナ史
2015年3月:「ダイズ」「アズキ」のいち動物公園より来園
2016年6月:「カムトリ」円山動物園より来園
2018年初旬:「アズキ」秋吉台サファリランドへ
2018年:「ロコ」来園
年月日不明:「ネイト」来園
2019年5月:「ダイズ」天国へ
2021年:「カムトリ」「ネイト」の子誕生?
※他、非公開個体等いる可能性あり
<ダイズ・アズキ来園>
●2015年
※2015年はダイズとアズキともにまだ公開はされていなかったと思われます。
アフリカンサファリでは基本的に、飼育動物の個体名を公表していません。
ですが、2022年9月まで更新されていた公式フェイスブックでは、ダイズやアズキの愛称が記載された投稿が多くみられます。
アズキとダイズは、のいち動物公園で生まれた姉妹です。2015年3月、アフリカンサファリへやってきました。
<カムトリ来園>
●2016年
円山動物園に北海道初のブチハイエナとして「カミ」とともに来園した「カムトリ」です。
カムトリは2016年にアフリカンサファリにやってきてから、ダイズやアズキと同じようにしばらくバックヤードで過ごしていたようです。
アズキやダイズの個体名が公表されている時期もなぜか、カムトリの名前は公式SNSで一度も登場していません。本記事では、SNSで投稿されたブチハイエナの写真から、外見的特徴で見分けています。
カムトリは他のブチハイエナより体毛の赤みが強く、ややたてがみが長い印象です。
一方、アズキは2016年11月頃から展示場に出る訓練を始めたようです。
2017年からは、展示場でダイズと仲良く暮らすようすが多く投稿されました。
<アズキの旅立ちとロコの来園>
●2018年
2017年12月12日の投稿を最後に、アズキの写真は見られなくなりました。
おそらく年末から2018年の初旬にかけて、山口県の秋吉台サファリランドへお引越ししたと思われます。
そして…
「ロコ」の来園です。
ロコがどこの動物園から来園したのかはわかっていませんが、ダイズのお婿さんとして繁殖する目的でやってきたのだと思います。
まだ幼さが残る外見から、1歳前後での来園だったのではないでしょうか。
→ロコとダイズのペアリングは少しずつ進んでいったようです。
<ネイト来園>
出身や時期は不明ですが、この時期にメスの個体「ネイト」が来園しました。ネイトは体が大きく、毛が長いことが特徴です。
ネイトは来園後、オスの「カムトリ」とのペアリングを開始しました。
<ダイズ、天国へ>
●2019年
2019年頃からアフリカンサファリのフェイスブックは、ブチハイエナの個体名を記載しなくなりました。
2018年5月15日 の投稿を最後に、ダイズの姿は見られなくなりました。
大変悲しいことにダイズは、2019年5月に亡くなりました。2013年8月20日に生まれたダイズは、まだ6歳になる前でした。
死因は「難産」。ダイズはロコとのペアリングが順調に進んでいて、赤ちゃんを授かっていたのです。大変悲しいことに、お腹の赤ちゃんとともに天国へ旅立ってしまいました。
ダイズの母「エナ」が、ダイズとアズキを帝王切開で出産したことも思い出されます。ブチハイエナの出産は、母子ともに安全に終わる可能性が非常に低いことを、ダイズは改めて教えてくれました。
→こちらの写真はロコかカムトリだと思われます。
●2020年
2020年からは、カムトリとネイトがほぼ毎日展示場に出ています。
2頭は一緒に遊んで長い時間を一緒に過ごしてきました。
<カムトリとネイトの日常>
●2021年
SNSの情報では、2021年頃にカムトリとネイトの間に赤ちゃんが生まれたという情報があります。
公式には発表されていないので定かではありませんが、本当ならとても嬉しいことですね。
●2022年
公式フェイスブックは、2022年9月で投稿を終了しました。
その後はTwitter(X)とインスタグラムで情報発信を行っています。
カムトリとネイトの日々はずっと見守っていたくなります。故郷の韓国から、そして北海道から、長い時間をかけて大分県に落ち着いたカムトリ。ネイトと楽しく過ごしてほしいです。
そして、パートナーを失ったロコも、これから何らかの形で家族ができればいいなと思います。
▼九州自然動物公園アフリカンサファリのブチハイエナ
カムトリ(オス、2016年6月円山動物園より来園)
ロコ(オス、2018年来園)
ネイト(メス、2018年頃?来園)
※他非公開個体もいる可能性あり
以上、アフリカンサファリのブチハイエナ史でした。
【2017年~】秋吉台サファリランド(山口県美祢市)
現在飼育されている個体:「アズキ」「キュル」「ミライ」「ヤミー」「ライミー」「ミミー」「ラミー」
▼秋吉台サファリランドのブチハイエナ史
2017年8月?:「ミライ」池田動物園より来園
2018年初旬:「アズキ(メス)」九州自然動物公園アフリカンサファリより来園
2019年11月21日:「キュル」「ヤミー」しろとり動物園より来園
2021年6月15日:「ライミー」誕生(母ヤミー、父ミライ)
2022年5月6日:「ミミー」「ラミー」誕生(母ヤミー、父ミライ)
山口県にある秋吉台サファリランドには「天王寺家系」を中心としたハイエナの家族が暮らしています。2017年に来園した「アズキ」のみ、「のいち家系」に属します。
秋吉台サファリは、2021年、2022年と2年連続ブチハイエナの繁殖に成功した動物園。ブチハイエナの群れ展示を行っている数少ない施設でもあります。
それでは公式Twitterを参考に、秋吉台サファリのブチハイエナ史を紹介していきます。
<みらい来園>
●2017年
「ミライ」(池田動物園では「みらい」表記)は2016年10月13日、池田動物園で生まれた男の子。
2017年8月頃、1歳になる前に秋吉台サファリランドへ来園しました。ミライの来園が秋吉台サファリランドの初めてのブチハイエナ来園だったかどうかは定かではありませんが、恐らくそうだと思われます。
展示場デビューは9月。割とすぐに環境に順応したようですね。
いいものを拾うと飼育員さんに自慢するミライ。好奇心旺盛で人懐っこい性格です。
<アズキ来園>
「アズキ」(「あずき」表記の場合あり。オスの「あずき」と区別するため本記事ではカタカナ表記)は2013年8月20日、のいち動物公園で「ダイズ」と一緒に生まれた女の子。
2015年3月に九州自然動物公園アフリカンサファリへダイズと一緒に引っ越した後、単身秋吉台サファリランドに移動しました。
それまでダイズと仲良く暮らしてきたので、寂しい移動だったかもしれません。でも、ミライが待ってくれていました。
●2018年
来園してから数か月経っての展示場デビュー!ゆっくりと馴致を行ったようです。展示場デビューの前から、先住のミライとのペアリングが行われていたようで、デビューの日には一緒に展示場に出ていました。
<ミライとアズキの日常>
アズキは辛抱強い性格で、メスらしく堂々としています。ミライはアズキに興味津々で、アズキがいるとそわそわしていたようです。
アズキはまだ遠慮があるのか、ミライにお肉を取られることがあったようです。
一緒に遊ぶのも好き。枝の取り合いはブチハイエナをペアリング中の動物園ではコミュニケーションの一つとしてよく見られる行動です。
・「みらいくんは気に入った枝を1ヶ所に集めてコレクションしてます。」(Jan 5, 2020)
ナイトサファリにも一緒にデビュー。
・「彼女のあずきちゃんです。ミライ王子はメロメロです。」
・「(メスが強くなる)とおもいますが、メスのあずきちゃんは最近来たばかりなので、もともといたオスのミライくんのほうが、積極的ですね。」
<ヤミー・キュルの来園>
●2019年
しろとり動物園で2019年1月25日に生まれたヤミー、キュル、ガブの三つ子のうち、「ヤミー」(メス)と「キュル」(オス)は秋吉台サファリランドへ移動しました。
既にミライとアズキでペアリングを行っている秋吉台サファリ。ヤミーとキュルはきょうだいなので、ペアリングはできません。
つまり…
新たなペアを組みなおすことに!
<新たなペアリング~ミライ×ヤミー、アズキ×キュル~>
●2020年
関係をはぐくんでいたミライとアズキですが、ヤミーとキュルきょうだいと、それぞれペアリングをすることとなりました。
▼相性バッチリペア
ミライとヤミーは相性ばっちり。甘えん坊彼氏のミライと、年下姉さん気質のヤミーです。
・「個体差はあるのですが、みらいが(キャットニップに)一番良い反応をします」(Jun 20, 2022)
▼のんびりマイペースペア
アズキとキュルはマイペース。
いつもお互いのペースを大切にしています。
そして、このペアリングの組みなおしが功を奏しました。
<ライミー誕生>
●2021年
ミライ&ヤミーペアが、オスの赤ちゃんを1頭授かりました。2021年6月15日、秋吉台サファリの初めてのブチハイエナ誕生です。
ヤミーは出産当時2歳。初産と育児を見事にやり遂げました。
赤ちゃんの成長の様子は、公式SNSでたくさん発信されました。お母さんの首元を枕にしているようすがとても可愛いですね。
赤ちゃんは生後約2か月で、屋外に出る練習を始めました。
育児に専念していたヤミーとミライは、久しぶりのお外にとても喜んでいるのがわかります。
赤ちゃんは少しビビってしまい、なかなか外に出てきません。それに気づいた両親が赤ちゃんのもとに戻っていくのが、なんとも微笑ましいです。
●2022年
赤ちゃんの名前は、誕生から約10ヵ月経過した2022年4月4日、「ライミー」に決定しました。両親の名前が由来した、素敵な名前です。
<ラミーとミミーの誕生>
ライミーの名前発表から1か月後の2022年5月6日、ヤミーとミライは双子の赤ちゃん(どちらもオス)を授かりました。
まず、お昼に1頭誕生。
なんと屋外での出産でした。産室が用意されていたはずなので、飼育員さんたちも想定外だったようです。
ヤミーは屋外で産んだ赤ちゃんをしっかりくわえて獣舎に運び、少々そわそわしながらも母親としての行動をとっています。
その日の夜中、もう1頭が誕生。授乳も立派にできて今います。
赤ちゃんは生まれてすぐ群れの中で暮らしました。年上のライミーお兄ちゃんも子育てに加わっています。
こちらの2頭は比較的早く(生後10日頃から)展示場に出たようです。2頭となるとヤミー母さんの負担も2倍になるので、外でのびのびと子育てするのがよかったのかもしれません。
赤ちゃんたちはとても仲良しでやんちゃ。行動範囲が広がるとともに、両親と兄の心配事は増えるばかり。
そして、名前が決まるのも早かったです。今回は投票ではなく職員さんたちで決定したようです。2頭は、ライミーと同じく両親から名前をとって「ラミー」「ミミー」と名付けられました。
・「ライミーの時も離乳が始まってからお父さんの子守りの割合が増えてきたので、みらい父さんの活躍はこれからだと思います」(Jun 4, 2022)
ハイエナは母も父も一緒になって、群れで子育てを行います。ヤミーもミライも立派なパパママになりました。
●2023年
現在も、ミライ・ヤミー一家は家族5頭で仲良く展示されています。
母、父、兄、弟たちそれぞれの行動が異なり、ブチハイエナの社会行動を観察できます。
アズキとキュルは、マイペースにペアリング中。いつか2頭の赤ちゃんも見られるといいですね。
▼秋吉台サファリランドのブチハイエナ
ミライ(オス、2017年8月池田動物園より来園)
アズキ(メス、2018年九州自然動物公園アフリカンサファリより来園)
キュル(オス、2019年11月21日しろとり動物園より来園)
ヤミー(メス、2019年11月21日しろとり動物園より来園)
ライミー(オス、2021年6月15日生まれ)
ミミー(オス、2022年5月6日生まれ)
ラミー(オス、2022年5月6日生まれ)
以上、秋吉台サファリランドのブチハイエナ史でした。
【2017年~】ノースサファリサッポロ(北海道札幌市)
現在飼育されている個体:「ウーピー」「ピーター」「アンバー」
北海道札幌市にある、ノースサファリサッポロ。ここには3頭のブチハイエナが暮らしています。
▼ノースサファリサッポロのブチハイエナ史
2017年5月:「ピーター」南アフリカより来園
2021年5月:「ウーピー」南アフリカより来園
2023年3月:「アンバー」誕生
<ピーター来園>
●2017年
資料が残っている中では、ノースサファリサッポロ最初のハイエナは「ピーター」。20016年に南アフリカ生まれたオスで、2017年5月に来園しました。
ピーターは、ノースサファリサッポロが公式インスタグラムを開設してから3つ目の投稿で登場した、園の愛されキャラです。
ピーターはたまに匍匐前進のような不思議な移動方法で遊ぶことがあります。
ピーターは飼育員さんが大好きのようで、すり寄ったり、鳴き声で返事をしたりします。
<ウーピー来園>
●2021年
ピーターがすっかりノースサファリサッポロのアイドルになったころ、南アフリカからお嫁さんがやってきました。
2020年11月南アフリカ生まれのメス「ウーピー」です。
ウーピーはまだ1歳になる前に来園しました。お嫁さんになるには少し早かったので、ゆっくり環境に慣れてもらいながら成長を待つことに。
来園時から人に馴れており、職員さんとのふれあいの様子がSNS等にアップされています(ノースサファリサッポロは猛獣とも触れ合う動物園です)。
ウーピーにも少し不思議な一面があるようで、おもちゃとしてプレゼントされた椅子を椅子として使ってしまうということがありました。
職員さんはきっと、たくさん噛んでボロボロにしてしまうことを期待(?)していたのでしょうが…。
<アンバー誕生>
●2023年
ウーピーの来園から1年が過ぎたころから、ピーターとウーピーのペアリングが始まりました。
不思議カップルの2頭はとても相性がよかったようで、2023年3月、待望の赤ちゃんを授かりました。
6月には名前が発表され、「アンバー」に。
アンバーは「ボンバー」という名前のゴールデンレトリーバーと一緒に育ったようです。
ピーターとウーピーはまだまだ若いカップル。
最近もペアリングを再開しているようです。
アンバーの成長と、ピーター&ウーピーの不思議カップルたちの関係がどうなっていくか、今後も注目です。
▼ノースサファリサッポロのブチハイエナ
ピーター(オス、2016年南アフリカ生まれ、2017年来園)
ウーピー(メス、2020年11月南アフリカ生まれ、2021年5月来園)
アンバー(2023年ノースサファリサッポロ生まれ)
以上、ノースサファリサッポロのブチハイエナ史でした。
【2020年~】千葉市動物公園(千葉県千葉市)
現在飼育されている個体:「イトゥバ」「エサンドワ」「トーフ」
▼千葉市動物公園のブチハイエナ史
2020年7月2日:「イトゥバ」シンガポール動物園より来園
2020年7月21日:ブチハイエナ展示場オープン
2020年12月16日:「エサンドワ」シンガポール動物園より、「カロア」南アフリカ共和国より来園
2022年:オスだと思われていた「カロア」、メスだと判明
2023年10月:「カロア」のいち動物公園へ
2023年10月:「トーフ」のいち動物公園より来園
千葉市動物公園には現在3頭のブチハイエナが暮らしています。
飼育を開始したのは2020年7月と割と最近ですが、現在までにいろいろなことがありました。
<イトゥバ来園>
●2020年
2020年7月2日15時15分、千葉市動物公園最初のブチハイエナ「イトゥバ」が、シンガポール動物園より来園しました。2016年11月17日生まれの女の子です。
千葉市動物公園ではチーターとブチハイエナの展示場が新しく建設され、イトゥバは日本の気候や千葉市動物公園の展示場に慣れるため、展示場オープンより早めに来園しました。
・「イトゥバちゃんの状況報告。やっぱり輸送箱から出てきてくれないので、本日は輸送箱を固定して部屋と行き来できる状態にしました。ゆっくり慣れていこうね。イトゥバちゃん」(2020年7月2日)
・「心配している方もいるようですので8時現在のイトゥバちゃんです。輸送箱から出てきて部屋でしっかりご飯も食べて寝てました。思ってた以上に皆様がハイエナに関心をもってもらえていることに驚いています。愛嬌たっぷりのイトゥバちゃんです。」(2020年7月3日)
来園後はしばらく輸送箱から出なかったイトゥバですが、その後ごはんをしっかり食べ、次の日にはおかわりをおねだりしたり、リラックスして眠る様子も見られました。
イトゥバの公開前から、千葉市動物公園公式X(twitter)にはたくさんのイトゥバの写真や動画がアップされました。
そのおかげで来園してからすぐに人気者に!
多くの人が公開を待ち望んでいました。
2020年7月21日、ブチハイエナの展示場がオープンしました。
記念式典も開かれました。
公開翌日からは早速イトゥバのオリジナルグッズが販売。
イトゥバは展示場が好きなようで、帰宅拒否していたそうです。
<エサンドワ・カロア来園>
イトゥバの来園から4か月後の2020年12月16日、2頭の仲間が増えました。メスの「エサンドワ」(2018年12月27日シンガポール動物園生まれ)と、「カロア」(2019年10月4日南アフリカ生まれ)です。
来園間もないときから、職員さんは3頭の性格を見分けていました。
3頭になってから、さまざまな変化がありました。分かりやすいのは「鳴き声」。イトゥバは「フープ」という外的要因によらず出す大きな鳴き声を、カロアは「ソフト・グラント・ラフ」という獲物を追うときや逃げるときに発する声を出し始めました。
エサンドワは…マイペースな日々を過ごしていたようです。
3頭は性格も外見も異なります。
<カロア、メスだと判明>
●2022年
オスとして、イトゥバとエサンドワのお婿さんとして来園したカロア。
主にイトゥバとの闘争(マウントや噛み付き、追いかけまわす行為など)が続いたため検査を行ったところ、オスだと判明しました。
↑カロアがオスだと判明するまでの経緯は、千葉市動物公園内の掲示で知ることができます。以下に少し内容を紹介します。
イトゥバはシンガポール動物園でのエコー検査、エサンドワは出産の経験があることから、メスであることが確実。カロアのみ性別の根拠がなかったようです。
性別判定のPCR検査で重要なのは、性別が確定している個体のサンプルも使用すること。千葉市動物公園のメス2頭に加え、のいち動物公園のペア「エナ」と「ブッチー」のサンプル(採取日:2021年12月1日)も使用しました。
また、確実性を高めるため、2022年6月1日にエコー検査も実施。するとカロアの陰嚢だと思われていた部分が卵巣だったと判明。
さらに、2022年6月14日、カロアの過去の性別判定の履歴も判明します。南アフリカでの搬入の際にPCR検査が行われており、そこでオスだと判定されていたのです(誤謬)。エコー検査も実施することがいかに重要かわかります。
ブチハイエナの社会では、血縁のないメス同士が同居することはほぼありません。3頭が全員メスだと判明してからは、同居をやめ、新たなペアの組みなおしを検討することとなりました。
<カロアとトーフの交換>
●2023年
こうして千葉市動物公園は、のいち動物公園で2012年10月2日に生まれた「トーフ」を、イトゥバとエサンドワの正式なお婿さんとして迎えることになりました。
カロアはトーフとの交換で、のいち動物公園に旅立ちました。
とても人懐っこい性格のカロアは、展示場への扉が開くとすぐに来園者のもとに走ってきました。立ち上がったり、尻尾を上げて喜ぶ姿もたびたび見られました。
水浴びが大好きなカロアは、展示場の池に飛び込んで独特なフォームで泳いで(暴れて)いました。
のいち動物公園の展示場にも池がありますが、少し深いのかまだ入ることができないようです。
まだまだ若いカロア、歯もきれいで立派。
ブチハイエナは獲物の骨まで食べるので、年齢とともに歯がすり減っていきます。
2023年10月9日、カロアは高知県へ出発しました。
前述したように、現在はオスのブッチーとのペアリングを行っています。
トーフも無事に千葉市動物公園に到着しました。
一般公開の開始時期は未定ですが、ゆっくりと千葉の環境に慣れてくれています。
これからイトゥバとエサンドワとどんな関係を築けるか、とても楽しみですね。
▼千葉市動物公園のブチハイエナ
イトゥバ(メス、2016年11月17日シンガポール動物園生まれ、2020年7月来園)
エサンドワ(メス、2018年12月27日シンガポール動物園生まれ、2020年12月16日来園)
トーフ(2012年10月2日のいち動物公園生まれ、2023年10月来園)
以上、千葉市動物公園のブチハイエナ史でした。
【2022年~】とくしま動物園(徳島県)
現在飼育されている個体:「ガブ」(2022年~)
現在ブチハイエナを飼育している動物園の中で、最も最近飼育を開始したのがとくしま動物園です。
2019年1月25日にしろとり動物園で生まれた三つ子、ヤミー、キュル、ガブ。ヤミーとキュルは、秋吉台サファリランドに移動しました。ヤミーは母となり、キュルはアズキというパートナーが見つかりました。
<ガブの来園>
●2022年
しろとり動物園で一頭残された「ガブ」は、展示スペースの関係で非公開となっていましたが、ヤミーとキュルが移動してからやく3年後の2022年7月、とくしま動物園へ移動となりました。
とくしま動物園のブチハイエナ史が始まります。
ガブが来園することは、徳島県のさまざまなメディアで取り上げられました。
ガブの来園はなんと四国放送ラジオでも発表されました。
ブチハイエナ一頭の来園でもとても歓迎されているようすが分かり、嬉しくなります。
ガブは来園から3日後の8月11日に一般公開されました。
とくしま動物園では、ガブにさまざまな種類のお肉をあげているようです。どの動物園でも、ブチハイエナはお肉を丸飲みするのですね。
公式インスタグラムで、ガブがしろとり動物園にいるとき、ほかのブチハイエナたちとは別居していたこと、人前に出るのは2年ぶりであることが明らかになりました。
ガブは2年間同じ飼育員さんとだけ過ごしてきたことから、知らない人間が苦手。来園者の数が多いと寝室に戻ってしまいます。開園時間のほとんどは展示場と寝室との間の通路にいて、展示場に全身出ていることは珍しいそうです。
●2023年
ガブの来園から1年が経ちますが、まだまだ慣れるのには時間が必要。人前に出ていなかった生活の方がまだ長いですからね。
暖かい日は展示場に出て寝ていることが少し増えたようです。
動物にとって「眠る」という行動は、その場所が安心できるという証拠。
ガブも少しずつとくしま動物園を安心できる場所だと認識し始めているようです。
とくしま動物園とガブのブチハイエナ史はまだ始まったばかり。これからもガブが楽しく暮らせるように、見守り続けたいと思います。
▼とくしま動物園のブチハイエナ
ガブ(オス、2019年1月25日しろとり動物園生まれ、2022年8月9日来園)
以上、とくしま動物園のブチハイエナ史でした。
③日本のブチハイエナ史⑵現在は飼育していない動物園
最後に…
現在ブチハイエナを飼育していない動物園で、飼育歴があった動物園を紹介します。資料はほとんどないので、定かではないものもあるかもしれません。
【1952年~】東山動植物園(愛知県名古屋市)
愛知県名古屋市にある東山動植物園では、1952年からブチハイエナを飼育していました。
シマハイエナの飼育歴もあるため、同じ環境で暮らしていたと思われます。
ただ、飼育個体の情報などは見つかりませんでした。
【1990年頃】徳山市立動物園?(山口県 ※現在の周南市徳山動物園)
徳山市立動物園(現在の周南市徳山動物園)では、「ハイエナ」がいたという資料があります。
ただ、ブチハイエナかどうかは不明です。
【1990年頃】アドベンチャーワールド?(和歌山県)
アドベンチャーワールドでも、「ハイエナ」がいたという資料があります。
ただ、ブチハイエナかどうかは不明です。
【2015年頃?】おびひろ動物園?
北海道帯広市にあるおびひろ動物園でも、ブチハイエナが飼育されていた可能性があります。ただ、一般の方の口コミであること、「ハイエナ」とだけ書かれているためブチハイエナではないかもしれないことから、確かではありません。
③おわりに
いかがでしたでしょうか。
日本でこれまで生きてきた、生きている、ブチハイエナの歴史です。
ブチハイエナは非常に個性が豊かで、感情をたくさん表に出してくれる動物です。この記事を読んで、少しでもブチハイエナに関心を持ったり、愛情を抱いたりしてもらえたらと思います。
ブチハイエナの飼育には難しいことがたくさんあります。性別判定に始まり、ペアリングや出産・育児の成功率の低さ、環境の変化に順応できない個体のケアなど、さまざまなことが挙げられます。
そんな中で戦前からブチハイエナの飼育を継続してきた日本。
今はもうこの世にいないブチハイエナたちが、たくさんのことを教えてくれたはずです。
主に3つの家系から、確実に命が繋がれてきました。2010年以降2倍に増えたブチハイエナの飼育園で、たくさんの情報が共有されている証拠でしょう。
ブチハイエナに会ったことがない人は、ぜひ会いに行ってみてください。
イメージが変わると思います。
私が初めて会ったブチハイエナは千葉市動物公園の「エサンドワ」。メスなので想像の1.5倍は大きくて、声が振動で伝わってくる、顔が整っていてつぶらな目がとても可愛い、など新たな発見がたくさんありました。
今後は日本全国のブチハイエナに会いに行って、その個性をこの目で見て、どんな環境で生きているのか、しっかりと知ることが目標です。
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