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横浜市繁殖センター特別見学に参加。内容と感想を述べる。2023年10月22日

2023年10月22日、よこはま動物園ズーラシア(神奈川県横浜市旭区上白根町1175-1)に併設する非公開施設「横浜市繁殖センター」の特別公開に参加しました。

その様子と私個人の感想を述べたいと思います。
横浜市繁殖センターについてはこちらをお読みください。





〈事前に予習したこと〉

横浜市繁殖センターの見学はまたとない機会!
事前に公式サイトに載っている「研究事業報告書(令和5年5月)」をしっかりと読み込みました。

ズーラシアで実際に出会った動物を、「繁殖」という視点から科学的に理解する。

それが今回の見学の目的の1つです。

どのホルモンが出た時に発情が起こるのか、どのホルモンが出たら雄雌を同居させるのか、個体差はどのくらいあるか…文系なのでさっぱり分かりませんでしたが、自分なりにたくさん調べて考えて、それ以上の学びが得られることを期待して、当日を迎えました。



〈特別公開当日〉

ズーラシア 北門

当日までにセンターから伝えられていた情報は…

・集合場所は「よこはま動物園ズーラシア北門」
・集合時間は12:50

ほぼこれだけ!

数年前同施設を見学した人の記事がネットにありましたが、集合場所はズーラシア正門で、そこからバスに乗って繁殖センターへ向かったようです。

北門からは歩いて5分くらいだったので、集合場所を変えて正解!と思いました。

北門のすぐ右にあった看板!特別感があってワクワク
この扉から奥が非公開エリアです

参加者は20名ほど。一眼レフカメラを持っている人が多かった印象ですが、家族連れやカップル、ご高齢の夫婦もいらっしゃいました。20代女ひとりでの参加は、もしかしたら私だけだったかも。

皆、大勢の申込者の中から抽選を潜り抜けて来た者たちだ。面構えが違う。

パンフレットのイラスト上手い。原画あるなら買わせてくれ。

受付は名前を言うだけ。靴の裏を消毒して、参加証とオリジナルパンフレットを手渡されました。

所長の尾形さんからご挨拶と、簡単な施設の紹介。とても物腰低く、優しそうな方でした。

リカオン舎の裏

歩いて繁殖センターへ向かいます。



めちゃ逆光

こちらが繁殖センター!
第一印象は、「図書館っぽい。」

入り口で待機していると、職員さんがゾロゾロ出てきました。
ここからは2班に分かれて行動するそうです。

私の班はまず、研究棟から見学します。



⚫︎【研究棟編】半永久年後の動物たちへ

研究棟の中

研究棟に入ると、ますます「本のない図書館」感が。私が卒業した大学の体育館もこの色と造りだった気がする。

和室の仮眠室が2つ…
動物を飼育している研究施設だから、動物の状態によっては帰宅できない日もあるんだろうな。仮眠室の存在だけで「動物ファースト」なのが分かる気がする。



こちらが研究室!
何が何だか分かりません。分かるのはキムワイプだけ。プラスチックの黄ばみ具合が歴史を感じさせる。

あ!これも分かる!
資料で予習してきたから。これらはホルモンの名前。例えばE2はエストラジオールP4はプロジェステロンという発情に関するホルモンです。

でも、「作」ってなんだろう?
「2/7作3分の2本」=2月7日に3分の2本のエストラジオールを作った(採取した)ってこと?

袋を開けるとニオイが。

私の班の引率は石井さん(ライチョウ担当)。
冷凍庫からあるものを取り出して見せてくれました。

それは…スマトラトラ「デル」(♀)の糞

デル(よこはま動物園ズーラシアにて撮影)

冷凍庫では、飼育員さんから担当動物の糞を定期的に採集してもらい、冷凍で保存しているらしい。血液からホルモンを採取する方法もあるけど、糞からだと人も動物も負担が少なくて済みます。

でも、血液中のホルモンと糞中のホルモン、成分や濃度が異なるんじゃないかな?どちらで測っても、採取したいホルモンは採れるということかな。専用の試薬があるのかな。

糞を乾燥させてアルコールに浸けると、ホルモンが溶け出してくるんだそう。発情の可能性がある時とそうでない時、両方のデータを取ることで発情を確定的なものとして認識できるようです。

穴の数は96個

ホルモンを検出するためのプレート。よく見ると液体の色の濃さが違いますよね。
色の濃さとホルモンの量が反比例していて、色が薄いほどたくさんのホルモンが含まれているんだそうです。

でも、ホルモンを採取してもすぐ数値が出るわけではありません。ネズミなどの妊娠期間が短い動物は、数値が出ている頃には既に出産していることもあるそうで…
それだと採集した日から出産までのことが分からないよね?周期が同じなら次回は採取日を早めることで分かるのかな?など考えました。



次は、加持リョウジを彷彿とさせる(?)こちらのタンク。

開けていいんだ

中は液体窒素で満たされています。
タンクに保存されているのは、動物の精子や卵子。現在も生きている個体のものもあれば、既に亡くなってしまった個体のものもあります。

保存された配偶子は、半永久的に保存できるそう!

人工授精の技術は、「家畜」の分野では発展していますが、野生由来動物に関してはまだまだ発展途上。横浜市繁殖センターで人工授精が成功したことはこれまでありません。
いつか技術が向上したその時のために、動物たちの生きた証を大切に保存しておくのです。

石井さんが色々説明してくれている時、後ろのこの掲示が目に入りました。

そもそも死亡個体からも配偶子を集めるということを知りませんでしたが、生体と死亡個体とでは採取方法が違うこと、そして何より「冷凍動物園」という言葉にも衝撃を受けました。

動物が亡くなった時、私たちは思い出を振り返りながらたくさん悲しみますよね。繁殖センターの職員さんたちはそれだけではなく、あるいはそうしている時間はなく、種を途絶えさせないためにやることがたくさんあるんだと分かりました。動物のために使命を全うしている、すごい人たちです。

動物は亡くなったら終わり、ではないのだと分かった研究棟見学でした。彼らは半永久的に、希望とともに生き続けています。



⚫︎【飼育棟編】非公開動物の「生き様」を見る

そして動物たちがいる、飼育棟へ!

こちらを目的としている参加者がほとんどなのかな?と思ったのですが、「研究棟の機械や資料、データなどについてもっと詳しく知りたかった」と言っている人もいて、皆それぞれの目的があるんだなと思いました。

個体ごとのごはん。名前の下には「ふすま」「マグリンカル500(塩やマグネシウム補給のための飼料用リン酸カルシウム)」と書かれています。

まずは、横浜市繁殖センターで飼育している唯一の哺乳類である「マレーバク」のところへ。

横浜市繁殖センターには2023年10月現在3頭のマレーバクが暮らしています。

ご飯は乾草、人参、梨、キャベツ、さつまいも。他の動物園とほぼ同じですね。
全て私に不足している栄養素です。

乾草の中には固形飼料が混ざっています。

動物がいない檻が結構たくさんあった。

ところで、施設に入る前…尾形所長が言っていました。

「ここは『見せるため』の施設の構造にはなっていません。」

と。
私たち人間はもちろんそれでいいんです。動物の生活・職員さんの研究活動にお邪魔している身ですから。

でも、飼育動物の生活環境が杜撰だったらどうしよう…という心配が少しありました。



・マレーバク「ハイジ」

まず会えたのは「ハイジ」
2013年8月14日、安佐動物公園(広島市)で生まれた10歳の女の子です。石井さんのそばで鼻を上げ下げしていて、人懐っこい性格のようです。

ハイジにはお兄ちゃんとお姉ちゃんがいます。お兄ちゃんのサンゴとトーヤは亡くなりましたが、姉の「ロコ」は安佐動物公園からとべ動物園(愛媛県)を経てズーラシアへやってきて、お母さんになりました(安佐動物公園のロコに関するブログはページが削除されていました、残念)。別々の場所とはいえ、姉妹が近くで暮らしていることはなんだか嬉しいです。

ハイジは、木の枝がたくさん設置してあった私の目の前に来てくれました。普段は鼻に隠れて見えないマレーバクの口の中が見えました。

動画も撮影しました。
マレーバクって瞬きを縦ではなく横方向でするんですよね、不思議。

奥に屋外エリアが見えます。

床はコンクリートですが、足が楽になるようにとゴムの床を広めに敷いていました。そして1番安心したのは、草が茂った屋外エリアとの行き来が自由だったこと。

ハイジはよく外に出ていました。

日光を浴びて、土を踏んで、水が浴びられる。
少しでもマレーバク本来の暮らしが実現できていてよかったです。そして、姉のロコと少しでも同じ空気が吸えているという事実に感動しました。

ハイジ、公式サイトに載っている体重(385.6kg 2021年の情報)より90kg重くなってる!3頭のうち1番大きいマレーバクです。にしても450kg越えって…デカいなぁ〜。




・マレーバク「ブレンディング」「ミミ」

ハイジの隣の部屋にいたのは、「ブレンディング」。1996年9月27日、スラバヤ動物園(インドネシア)で生まれた27歳の男の子です。横浜市繁殖センターでは20年ほどの時を過ごしています。
(スラバヤ動物園はかつて「死の動物園」と呼ばれていたことを思い出す…)

ブレンディングは平均寿命の25歳を超えた、高齢個体。体重はハイジより150kgほど軽く、ハイジを見た後だととても小柄に見えました。

ブレンディングは加齢により目が見えていません。先を確かめるようにゆっくりと歩き、ご飯を食べていました。彼は幸せでしょうか。数分では推測もできませんが、長生きしていることが少しでも彼の幸せの証明だと思いたいです。



綺麗な背中を見せてくれたのは「ミミ」。1993年1月6日、ゲンビラロカ動物園(インドネシア)で生まれた女の子です。

ミミは食後だったようで、外を見ながらのんびりとくつろいでいました。30歳のミミは、どんな表情をしていたのでしょうか。



・マレーバクの繁殖歴について

2頭は2021年頃まで、約15年間ペアリングが行われていました。現在は健康管理に重点を置いて飼育されているようです。

ブレンディングはこれまで、3回の繁殖に成功しています。2008年9月3日、ミミとの間に「ノジアマ」という男の子を。
そして現在は亡くなっていますが、メスのマヤとの間に「ラジャ(2006年8月31日生まれ♂)」「ラバチョ(2008年10月12日生まれ♂)」を授けてくれました。

ラジャは2022年5月20日に亡くなりました。2019年5月16日、前述のハイジとの間で繁殖が成功しましたが、残念ながら死産でした。

ノジアマとラバチョの情報は出てきませんでしたが、おそらくラジャよりも先に亡くなったと思われます。

彼らについての研究は、平成23年度研究事業報告書に書かれていました。マレーバクは糞中ではなく、血液からホルモンを採取できるようです。トレーニングに協力してくれる優しい個体ばかりなのですね。

繁殖センターで生きているからといって、繁殖を成功させなければならないわけでは当然ありません。マレーバクとして生きることが一番です。

ブレンディングとミミはこれまで何年も本当によく頑張ってくれました。遅いかもしれませんがこれからは、自分のためだけに、健康に生きてほしいです。



横浜市繁殖センターでは、生息数が減少している「ムカシツチガエル」(2022年8月に名付けられた新種)の保全にも取り組んでいます。マレーバクの放飼場を改修して、カエルたちの産卵場にしているようです。

他にもニホンアカガエル、トウキョウダルマガエル、サドガエルなどの貴重な両生類を飼育しています。



・カンムリシロムクの希望

2階に上がると、ガラス張りの廊下が。
ここはインドネシアのバリ島のみに生息する固有種「カンムリシロムク」の飼育エリアです。

横浜市繁殖センターでは約100羽を飼育しており、国際的な保全活動を通して野生復帰に貢献しています。

インドネシア国内では、動物園の他、個人でこの鳥を所有しているケースが多く見受けられます。しかし、保護鳥であるカンムリシロムクを飼育するのには国の許可が必要なので、多くの場合は違法飼育です。従って、どのくらいの数が飼育されているのか、十分に実態が把握出来ていないのが現状で、一説には500羽とも1,000羽とも言われています。

横浜市繁殖センター公式サイトより


カンムリシロムクの「744」君。
真っ白な体と、鮮やかな青色の顔がカンムリシロムクの特徴です。

744君の個体情報

横浜市繁殖センターのカンムリシロムクは、1羽ごとに血統をしっかりと管理されています。

▼744君の個体情報

  • 2018年9月13日生まれ

  • 出身地はPRC(中国)

  • 性別はオス(Male)

  • 両親(Pedigree:血統)は163と634

  • メタルリングが右脚に、水色のリングが左脚についている


埼玉生まれの個体も。

2005年日本平動物園(静岡県)生まれの個体、2006年プラハ(チェコ)生まれの個体も。
カンムリシロムクの平均寿命は飼育下で約15年。2羽はとてもご長寿だとわかります。

日本平動物園のカンムリシロムク(2023年10月7日撮影)

にしても海外からとてもたくさんの個体を導入しているんですね。個体情報を見ると、ほとんどがPRC(中国)の出身でした。何か理由はあるのでしょうか?

外の空気も日光も感じられます。安心。

つがいの様子も観察できました。
カンムリシロムクは昆虫や小動物を食べますが、果実もよく食べ、野生では乾期につがいで一つの果実を一緒に食べるのだそうです。

横浜市繁殖センターはこれまでに15年かけて計160羽のカンムリシロムクを、野生復帰のためにインドネシアへ送っています
その甲斐もあり、野生では絶滅したとも言われていたカンムリシロムクの生息数は、2020年時点で355羽にまで回復しました。これでも回復した数字なのです。

現在は繁殖をさせすぎないようにしているそうで、それはつまり、それくらい増えたということだと前向きに捉えました。

この子達は1羽ずつケージに入っていました。
理由は、複数羽での飼育でいじめられてしまったり、性格に難があるため。

この子達の将来はどうなるんだろう?群れに戻せるような方向で飼育するのか、1羽のままなのか。中には物音ひとつで一定時間飛び回るくらいビビリな子もいました。

この子達についてはまず種としてではなく「個」として接し、1羽1羽の幸せを考えてあげなければいけないなと思いました。



・カグーのさまざまな顔

ここからは屋外飼育の鳥類たちに会いに行きます。

まずはニューカレドニアの本島、グランドテール島のみに生息する固有種「カグー」から。日本ではここと、野毛山動物園(横浜市)でしか会うことができません。1989年に野毛山動物園で飼育を始めたのを機に、繁殖の研究が始まりました。

野毛山動物園のカグー「ミドリン」(左)と「ムラリン」(右)
どちらもオスです。

ニューカレドニアは、大昔に存在したと考えられている超大陸「ゴンドワナ」の破片。生きた化石と呼ぶに相応しいいくつもの固有種が残っており、カグーはその代表的な生き物です。分類的にも近縁種が存在しない、珍しい鳥。

目の前にいました。カグー!
薄い水色の体と、真っ赤な目がとても美しい。石井さんによると、この子は人懐っこい個体なんだそう。

カグーの面白い瞬間を撮影したので、こちらの動画を見てみてください。

冠羽が半端じゃない追い風でブワァっとなった瞬間です。これはカグーの感情を表していて、威嚇や求愛はもちろんですが、興味がある時や嬉しい時なども同様に立ち上がるんだそうです。

顔はキリッとしていますが冠羽のせいで可愛く見えてしまいます。ハシビロコウと同じ原理(?)ですね。

別の個体。この状態のまま動かず、ますますハシビロコウみを感じました。

もしかしたらこの子、実は高齢だったりするのかも?というのも、カグーは30年〜40年も生きる鳥で、ゆっくり大人になっていくため外見の変化が分かりにくいのだそう。
卵は一回に1個しか産まず、子育て熱心な鳥だというのも知りませんでした(ただ親が育児放棄をすることもあるようです)。

もう一つ重要なこと。
カグーは飛べない鳥です。

森の中でスーッと地面を歩くことや体の色合いから、「森の幽霊」と呼ばれることもあります。

カグー舎の中

横浜市繁殖センターのカグー舎も、森が再現されていて奥まで見えませんでした(良いこと)。

こんなに隠れられる場所があるのに、私たちの近くまで来て姿を見せてくれたカグー、ありがとう!
今回は全7羽のうち、3羽の姿を観察することができました。

横浜市は、ニューカレドニア南部領土政府と「横浜市とニューカレドニア南部領土政府の野生動物に関する交流合意書」を締結し、カグーやその他の希少動物の保全に関する学術交流と動物交換を行っています。



アフリカ唯一のクジャクであり、コンゴ共和国とコンゴ民主共和国にのみ生息している「コンゴクジャク」は、姿が見えませんでした。

コンゴクジャク舎の中

あとで少しでも写ってるかなと思い撮りましたが、いませんね。
上手に隠れています。



・ミゾゴイは世界で初めて

こちらの写真、左側にある鳥がいるのですが、見えますか?

拡大すると…
びよ~んと伸びた鳥が!これは「ミゾゴイ」といいます。

サギの仲間で、日本には繁殖のため夏に飛来する渡り鳥。日本以外での繁殖はほとんど知られていないそう。首を伸ばしているのは危険を感じているからで、くちばしを上にあげて、木に擬態します。

横浜市繁殖センターでは、2004年から野生で傷ついて保護されたミゾゴイを全国から集め、2015年に世界で初めてミゾゴイの繁殖に成功しました。以降毎年繁殖を続け、飼育下の個体群の維持に貢献しています。



・ホオアカトキを愛してほしい

たくさんいる!

最後は「ホオアカトキ」の観察です。
トルコとモロッコに分布していて、繁殖は河川や海岸沿いの崖、岩場などで行います。

17世紀まではヨーロッパにまで分布していましたが、現在はトルコとモロッコなどに僅かに生息しているだけで、絶滅危惧種に指定されています。トルコではシリアとの国境に近い東部のBirecikに55羽と、モロッコのSouss-Massa国立公園などに220羽前後が残されているに過ぎず、アルジェリアに生息していた個体群は絶滅に近い状態と考えられています。

一方飼育下では、ヨーロッパの動物園をはじめ、世界でおよそ1,000羽が飼育されており、一部の機関では野生復帰計画も進められています。

横浜市繫殖センター公式サイトより

東部の個体群は移動を制限されているという情報があります。渡り鳥であるホオアカトキは、「渡り」ができないと命をつないでいけません。

ヨーロッパでは、ホオアカトキを「渡り」ができる状態にしてから野生復帰させる取組が行われています。ヒナのうちに、軽飛行機を用いて一緒に飛ばせる(刷り込みを活用する)ことで野生復帰したときに「渡り」ができるように訓練するのです。

ホオアカトキの将来は飼育個体と飼育個体の育て方にかかっていると言っても過言ではありません。

横浜市繫殖センターパンフレット

「ホオアカトキが禿げるまで」って…(笑)

石井さんが言っていました。「パンダみたいに、希少でかつ可愛ければ愛されるんだけどねぇ。ホオアカトキは希少だけど可愛くはないから…」と。

いやいや、めちゃくちゃ可愛くて美しいです!
この羽の光沢、ずっと見ていられます。禿げていることで体色のメリハリが出て美しさに磨きがかかっていると思います。

ホオアカトキの繁殖や保護に力を入れているスイスのバーゼル動物園では、1950年代に初めてホオアカトキの繁殖に成功しました。ここで生まれた個体が世界各地の動物園へ送られ、現在も命をつないでいます。

横浜市繫殖センターでは、横浜市の動物園と協力してホオアカトキの繁殖に取り組んでいます。もちろん全羽、血統管理下に置かれ、大切にされています。



〈特別公開を終えて〉

参加証、返そうとしたら「差し上げますよ」と言われた。やったぁ

こうして1時間ちょっとの見学が終了しました。
すべてが初めての、充実した時間でした。

…ということを踏まえて、私個人の感想を述べたいと思います。


●思ったこと

・人の手が介入した動物の繁殖は、動物が幸せであることが前提で行われる必要がある。動物が本来の生息環境を感じられて、ストレスなく健康であって初めて、繁殖の取り組みを進めることができる。

・動物はどこで暮らしていようが皆同じ。つまり野生のマレーバクも、動物園のマレーバクも、繁殖センターのマレーバクも、本人たちからしたら皆同じマレーバク。繁殖センターの個体だから檻の中で生活させてもいい!しょうがない!という考え方はしたくないな、と思う。じゃあ何ができる?って感じだけど…。

・動物には個体差があることを改めて感じた。繁殖力がある個体、性格や環境に問題があって繁殖計画に入れられない個体、様々だった。でもどんな個体に対しても「平等」にではなく「公正」に、幸せを考える必要があると思った。

・絶対に事前に資料を読み込んでから参加することをおすすめする。重要な研究器具や掲示資料、動物の情報を素通りすることも多かったので、その存在に自分で気づくことができるかどうかが、この特別公開を良い学びにできるかどうかの要潤になると思った。


●よかったこと

・資料に書かれている以上のことを知ることができたこと。特に研究棟の見学において、ホルモンの採取方法や、「冷凍動物園」の資料、配偶子を実際に保存しているタンクを見ることができたことが大きな学びになった。

・飼育動物に会えたこと。動物たちの長い人生のほんの一点の瞬間に立ち会えただけだが、一頭一頭、一羽一羽が大きな役割を果たしている姿をこの目で確かめることができてよかった。

他、この記事の随所にもよかったことは書きました。


●よくなかったこと(もっとこうだったらよかった…)

・もっと最新の活動個体ごとの繁殖実績など教えて欲しかった。たとえば前述したマレーバクの繁殖実績などはまったく説明されず、後で自分で調べたものです。また、動物の説明は動物園のツアーなどとあまり変わらなかった印象。繁殖やほかの施設との取り組み等にフォーカスしてくれたらもっとよかったと思う。でないと2回目以降の参加者は同じ説明を受けることになる。

・職員さんがどんな思いで動物と接しているかもっと知りたかった。

・案内されなかった動物もいた(コンゴクジャクのように案内されたけど見られなかった、というわけではなく)。それはもちろんよいのだが、どんな動物がいて、なぜ見られないのか知りたかった。例えば今回は石井さんの担当であるライチョウや、カワラヒワ、ベトナムキジなど。単に時間の関係かな?

・最後に質問タイムがあったが…シーンとしていて、参加者全員の前で手を挙げなければいけなかったので、質問しづらかった。知らんがなって感じかもしれないけど学校の授業とはわけが違うから…。私は性格上挙手できなかったので、あとで少しだけ個人的に質問させてもらった。

・家族連れの参加者、赤ちゃんがずっと泣いていて職員さんの声が聞こえない時があった。飼育棟の時は落ち着いていたみたいだけど…動物たちの前であんなに泣かれても、「赤ちゃんだから仕方ない」で片づけられるのかな?あと、親も集中して見学できないよね。

ありがとうございました。

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