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体温をもつ動物と一緒に暮らすこと

 昨年、今年と続けて、闘病していた伯父が亡くなった。昨年夫を亡くした伯母も、今年夫を亡くした伯母も、伯父たちが亡くなって一人暮らしとなった。

 お線香を上げさせてもらいに、伯母たちの家を訪ねた。伯父たちの闘病中は看病が大変だったし、長年の結婚生活では辛い時期もあったけれど、やはりずっと一緒に暮らした人が旅立ってしまうのは、心にぽっかりと空洞ができた感じだと言う。

 先日、noteのお題企画「#あなたに出会えてよかった」の募集を見た。永遠の愛など誓うことなく、いつまで続くか分からないけれどとりあえず結婚してみただけの私は、このお題でnoteを書くことはないと思っていた。しかし、伯母たちの話を聞くうちに、私は自分の夫への感謝の念が沸いた(少しだけ)。

 たびたびnoteに書いているが、夫と私は全く性格が合わず、小競り合いばかりだ。私にとっては、夫が気の進まないことは決してやらずに怠惰で、家事の負担が私に集中していることが辛い。夫は、細かいことをいちいち指摘する私のことが、うっとうしくてたまらない様子だ。

 とりあえず結婚してみて、とりあえず離婚せずに結婚を継続している程度の愛情の夫婦なのだが、長年一緒に暮らす間に、私は夫に仕事の愚痴を聞いてもらうこともあったし、毒親の父に関する愚痴を聞いてもらうこともあった。

 夫はとにかく怠惰な人間なので、面倒な話など聞かせたら、嫌な顔をするだけ。そして私の方も、誰かに話したところで、問題解決してもらえるような内容ではない、ただの愚痴なのだと、よく認識している。今、辛い気持ちでいることを、誰でもいいから聞いてほしいだけなのだ。

 もし我が家にかわいい猫がいるなら、猫を撫でながら話を聞いてもらう方が、憎まれ口を叩かれる心配もなくて、ずっとよいだろう。でも我が家には猫がいないので、代わりに夫に話す。

 ここ数年は、私も夫の取り扱いに熟練してきたので、自分の愚痴を話す前にまず、「これから愚痴を話すけれど、スマホゲームをしたままでいいからね。私が話し終わったら「うん、そうだね、大変だよね」とだけ言ってね。」と夫に伝える。それからひとしきり、辛い気持ちについて話す。

 夫は私が頼んだとおりに、「うん、そうだね、大変だよね」と言ってくれるのだ。夫の機嫌がよければ、「コーヒーでも飲む?」とコーヒーまで淹れてくれる。

 愚痴だから、ぬいぐるみを相手に話すのでもよい。でも、自分以外に、体温を持つ動物が同じ家で暮らしているならば、そのほのかな温かさを感じながら、辛い気持ちを吐露すると、少し心が落ち着く気がするのだ。夫という他人と暮らすことで貯まるストレスもあるけれど、やはり助けられていることへの感謝もある。

 熱烈な愛情などではない、やけどなど絶対しない温度の、ほのかな温かさ。いろんな夫婦があってよいのだよね、と思っている。私は、華やかで皆から注目される桜よりも、まだ寒さの残る時期にひっそりと咲く梅が好き。結婚も地味なのが合っている。

※このnoteの見出し画像は、私のnoteの下手くそな文章を覆い隠してくれる美しい写真。茨城のカメラマン仲居さん#ナカイフォト からお借りしました^_^