ショートショート 「まもなく地球消滅だというのに、上司からメールが来た。」
窓の外には、煌々と輝く隕石が見える。あと数分で僕らの地球は消滅する。そんな中、メールボックスに一件の通知が届いた。
私の直属の上司、Lさんからだ。そこには、今後のオペレーションに関しての事細かな指示が書かれていた。
『こんな瀬戸際でメールをしてくるなんて、仕事熱心ですね。』
届くかはわからないけれど、そう返事を打った。
すると、1分も経たないうちに返信が来た。
『私にはこれしかないんです。家族もいませんし、最後にやり残したこともありません。ただひたすら、自分の仕事を遂行するだけです。』
Lさんらしい返答だ。地球消滅直前にこんなやり取りをしているのは、きっと私たちくらいだろう。タイムリミットが迫る中、私は再びメッセージを送る。
『最期を目の前にして非行に走る輩で溢れかえる中、それでも人であり続けようとする姿勢。見事だと思います。』
それ以降、Lさんからメールが返ってくることはなかった。
宇宙船の丸窓から、再び地球を見る。
隕石の衝撃波が地面を伝い、地球が砕けていくのが見える。
「さようなら、Lさん。」
私は、天才生物学者Lさんが残してくれた『今後の生存戦略オペレーション』を片手に、船の出力を上げた。