【出会いは漫画広告vol.1】世相反映した話題作『しょせん他人事ですから ~とある弁護士の本音の仕事~』って?
数多くの漫画賞や、漫画好きを公表してる芸能人たちのレコメンドなど、とにかく「おすすめの漫画」というコンテンツが世の中には溢れている。時に、普段の自分なら手に取らないような意外性に溢れた作品と出会うこともあるので、漫画好きの私にとってこの存在は非常にありがたい。
だが、新たな漫画と出会う一助となるコンテンツとして、私が最近特に注目しているものがある。それがSNSなどで流れてくる漫画広告だ。
漫画広告で流れてくる作品の特徴としては、いわゆる今旬の漫画ではなく、不倫、復讐、成り上がり、異世界モノ...など少々尖った切り口の「隠れた&ネクスト話題作」。広告によっては、公開しているシーンやコマのチョイスが本当に秀逸で、思わず1話を購入してしまいたくなる広告と出会った時は、作品はもちろん、この広告クリエイティブを作った方に拍手を送りたくなる。
というわけで、タイトル通り漫画広告で出会った面白い作品たちを毎週紹介していこうと思う。「あ!これ漫画広告で見かけて気になってた!」という方の参考になれば幸いである。
"ひやっとする人もいそう”な漫画広告
1月中旬からよく見かけるようになった、電子書籍配信・販売会社「BookLive」さんによるこちらの広告。とある女性がSNSにママ友の悪口を投稿し続けていたら、ある日突然プロバイダから発信者情報開示請求の書類が届き慌てふためく...といった内容だ。
この他にもママブロガーとして活躍する女性が誹謗中傷に苦しむエピソードが流れたりなど、2〜3パターンほど見かけたが「ネットの誹謗中傷」がテーマの作品なのだとストレートに伝わってきた。
誹謗中傷の主戦場になりがちなTwitterでこの広告を流したこと、そして発信者情報開示請求の書類や裁判など、具体的な法的手段にまで踏み込んでくれそうな作品だという期待感を抱かせる構成が面白い。この広告を見て加害側としてひやっとする人もいれば、反対に被害者として頭を悩ませている人なら、思わず興味を持つ内容になっているのではないだろうか?
ネットの誹謗中傷に特化した法廷ドラマ
「BookLive」さんの漫画広告で紹介されていたのは『しょせん他人事ですから ~とある弁護士の本音の仕事~』(左藤真通 / 富士屋カツヒト / 清水陽平)という作品だ。
ジャンルとしては昨今大ヒットした『99.9』のように法廷や弁護士事務所が舞台となった法廷ドラマであるが、本作は取り扱う事件を「ネットの誹謗中傷」に特化しているところが斬新かつ世相とマッチしていて面白い。
ネット案件に強い弁護士・安田理(やすだおさむ)が、彼の元に訪れた相談者のネット炎上やSNSトラブルを解決してく物語で、漫画広告には「人妻風俗で働いている」というデマと名前、電話番号などの個人情報をネットにさらされ炎上した主婦の話の一部が掲載されている。
法で裁かれるまでのリアル
深刻な社会問題となっているにも関わらず、実際に被害に遭った時の対処法がいまいち明確化されていないネット上の誹謗中傷。本作では、加害者を法で裁くまでのリアルを徹底的に描いている。
基本的には加害者を徹底的に追い詰める展開であるため読後感は爽快だが、ネット上の誹謗中傷を法で裁く上で被害者が被る、金銭的、精神的な負担についても言及している。
長い時間とそれなりの金額がかかるわりに、裁判を起こしても高い賠償金が取れるわけではない...。
残念ながらこの日本において名誉の価値は低い
『しょせん他人事ですから ~とある弁護士の本音の仕事~』1巻より
本作を読んでいると、作中に登場する弁護士・安田理(やすだおさむ)のこのセリフが嫌というほど沁みる。
ネットの誹謗中傷は本作のタイトル通り"しょせん他人事"かもしれないが、SNSなどのプラットフォームサービスの更なる普及に伴い、被害者または加害者となり、他人事ではなくなる日がくるかもしれない。
今を生きるすべての人にとって必読の一冊だ。
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