SOYJOY食べようとして挫折、そして決意へ
休みの日はズボラを極める。
元々たくさん食べる方でもないし、何しろ今日は暑い。
昼食は既製品を軽くでいいだろう。
インスタで流れてくるリール動画を風景の一部として、SOYJOYの袋を開けようとした。
袋の端のギザギザの中に、意図的に深く切り込みが入れられたところを見つけて引っ張る。
「最後に一つ言わせてくれ」
小さな画面の中で、欧米の方と思しきボクサーが歓声を浴びている。彼はそれを鎮めるように先のように呼びかけた。
「この勝利の喜びをどんな人にも味わってほしい」
私は手元のSOYJOYの袋に開いた穴に爪を引っ掛けた。
「しかし、これは何かに打ち込んだ人にしか味わえない」
SOYJOYを取り出すには小さすぎる穴をどうにか広げたいのだが、そうは問屋が卸さぬ。SOYJOYを食べたことがある人には分かると思うが、あの独特なシルバーの包装は丈夫なのだ。
「誰に批判されようと、ただ真っ直ぐ信じて打ち込むしかない」
どれだけ抵抗されようと、裂けると信じて引っ張るしかない。
「それに逆らえなければ、永遠に変わらない」
ここで諦めては、永遠にSOYJOYが食べれない。
私は穴を広げようと尽力したが、ついに広がりきらなかった穴から無理やり中身を引っ張り出した。穴の端につっかえた部分がぼろろっと崩れた。
これは失敗ではない。敗北だ。
私が抵抗することを諦め、妥協した結果がこれだ。
まだ勢い余って裂けた袋からSOYJOYが噴射されたのであれば、チャレンジの結果「失敗」と言えるだろう。
だが私は、諦めたのだ。
これを敗北と言わず何と呼ぼう。
私はSOYJOYひとつロクに食べられないダメ女なのだという気持ちで、テーブルに落ちたカスを指で集めた。
画面を操作していなかったため、彼の動画がループで再生されている。
先ほどSOYJOYを引っ張り出す際に見損ねた、動画のラストの部分が流れる。
「俺は恵まれている。何度でも何度でもこの幸運を味わうことができる」
……。
諦めちゃあ、ダメだ。
私が変わらなきゃ、この先の人生で私が何度でも何度でも繰り返すのは、敗北ほかならない。
諦めないことを、諦めちゃあダメだ。
そう決意した私は、SOYJOYをあむと口に含み、必要以上に力を込めて咀嚼した。
ふと、SOYJOYの袋をひっくり返した。
……。
別の手段を探ることを、諦めちゃあダメだ。