情報#03 | スペイン出産~新生児の医療保険に関するアドバイス
産後すぐ、娘の入院を経験しました。病院の救急外来を受診したものの、保険会社から承認が下りず、大変な思いをしました。同じような苦労をする方を減らすために、当時の出来事と、それを踏まえたアドバイスをまとめました。
(2023年9月にスペインの経営大学院 IESEに入学。在学中の2024年4月にバルセロナで出産。プロフィールはこちら。その他、海外出産・育児に関するお役立ち情報はこちら)
私たちに何が起こったのか?
私立病院で入院に対し、保険会社の承認下りず
生後6日目頃、娘(ひーちゃん)に気になる症状が現れ、翌朝、医療通訳さんに小児科予約を依頼しました。すると、かかりつけの小児科医から「すぐにクリニックに来てください!」と言われ、お昼過ぎにバタバタと準備をしてタクシーでクリニックに向かいました。
クリニックに到着すると、先生から「すぐに総合病院の外来に行き、専門医に診てもらうべき」と言われ、私立総合病院へタクシーで移動しました。(そこは出産した病院であり、産後退院して、こんなに早く戻ることになるとは。。と思いました)
その小児科クリニックと私立総合病院は同じ医療法人グループに属していたため、医師同士の連携があり、私たちが移動する間に、かかりつけの先生が総合病院の専門医に状況を説明してくださいました。14時過ぎに私立総合病院に到着し、専門医から「NICU(新生児集中治療室)に入院し検査を行いましょう。親が付き添い入院できる病室もあります」と説明を受けました。入院手続きを進める間、処置室で待機することになりました。
しかし、保険会社からの承認に時間がかかり、長時間の待機が続きました。医療通訳さんが何度か保険会社にフォローの電話を入れてくださいましたが、進展がありませんでした。そして18時過ぎ、病院から「保険会社が検査入院のリクエストを却下しました。医療保険が適用されないため、このまま入院する場合は10,000€(約160万円)を支払う必要があります」と告げられました。
再度、医療通訳さんが保険会社に電話し状況を説明くださいましたが、「緊急で検査入院をする必要性はないと判断した」とのことで、判断が変わりませんでした。
160万円という高額な医療費は学生にとって負担が大きく、その場で決断ができずにいました。そうすると、救急外来の医師と医療通訳さんから「健康保険証があれば公立病院は無料で医療が受けられるので、公立病院を受診してはどうか」と提案を受けました。翌朝に公立病院に行くことを決め、私立病院をあとにしました。
公立病院への移動と入院
私立総合病院からの帰宅後、「お腹空いた~疲れた~」と泣く娘ひーちゃんにミルクを与え、私たち親も軽食を取っていたところ、医療通訳さんから電話がありました。
私立総合病院での出来事をかかりつけの小児科医に報告したところ、先生から「翌朝まで待たず、今すぐ公立病院の夜間緊急外来に向かうべき」と指示がありました。電話で公立病院の住所を教えていただき、すぐに病院へ向かうことになりました。(夜遅い時間にもかかわらず、医療通訳さんが同行してくださり、本当に心強かったです)
その公立病院は小児科専門の大きな施設(病床数:約350)で、21時過ぎにもかかわらず多くの子どもとその親が待合室で順番を待っていました。受付で私立病院からのレポートを提示し、状況を説明すると、緊急性が認められ、すぐに処置室に案内されました。
処置室でしばらく待つと、医師数名が診察くださり、また看護師さんが尿検査、血液検査、点滴などの対応してくれました。
(採血や点滴針を刺す瞬間、可哀そうで見てられませんでした。。)
処置室では、数名の医師が診察くださり、その後、看護師による尿検査や血液検査、点滴がありました。
(採血や点滴の際、娘の様子が可哀そうで見てられませんでした…)
私立病院と同様に、公立病院でも入院が必要との診断が下されましたが、病室に空きがなく、1~2日は処置室で待機する必要があると言われました。
処置室には簡易椅子しかなく、付き添いの親が横になることはできませんでした。産後1週間ということもあり、私自身も体力的に限界に近かったため、その夜は夫に付き添いを任せ、深夜2時過ぎに帰宅しました。翌日、夫と交代して処置室で過ごしていると、夕方になって病室が空き、ようやく移動ができました。
その後もいくつかの検査と治療が続き、最終的に6日間の入院となりました。
そもそもの状況、その後
プライベート医療保険とは?娘の保険加入状況は?
上記をお読みいただき、そもそも私立病院と公立病院の違いは何か、なぜ私立病院で保険会社の承認が下りなかったのか、などの疑問をお持ちの方もいらっしゃると思います。
スペインの公立病院と私立病院については、こちらのブログの後半にまとめていますので、よろしければお読みください。(私立病院は基本的にプライベート医療保険に加入している患者が対象)
保険会社の承認については、通常の受診では不要な場合がほとんどですが、入院や手術などの場合は、事前に保険会社の承認を得る必要があります。病院側が保険会社に承認リクエストを行う場合もあれば、患者自身が保険会社のフォームを通じてリクエストする場合もあります。
「入院リクエストが保険会社から拒否され、生後間もない娘が私立病院に入院できなかった」という話をすると、「ちゃんと保険に加入していたの?」と聞かれることがよくあります。当時の状況としては、保険加入手続きの途中でした。
ただ、手続き中で正式登録は完了していなかったものの、「新生児は生後30日間は母親の保険でカバーされる」という規約があり、私の保険ポリシーのもとで娘も被保険者でした。
保険会社へのクレーム
今回の件について、保険会社AXAの「緊急で入院する必要性がない」という判断に納得がいかず、大きな憤りを感じました。もし私立病院の救急外来で保険会社が入院を承認していれば、すぐに入院できたはずです。たまたま健康保険証があり、公立病院へ行けたので助かりましたが、そうでなければ160万円を払うしかなかったのかもしれません。
医療保険は大学で団体加入しており、まず大学側に状況を共有しました。大学職員の方も「保険会社AXAの対応はおかしい」と共感してくださり、大学からAXAに正式なクレームレターを出していただけることになりました。
似たような事例
娘の入院から2週間後、お世話になった医療通訳さんから、似たような事例があったことを聞きました。私たちと同じく、新生児のお子さんの入院に際し、保険会社の承認が下りなかったそうです。
医療通訳さんが、病院のベテランスタッフからたまたま聞いた話では、「AXAは規約上、生後30日までは母親のカードで入院までカバーされるとなっているが、新生児自身が保険未加入(未登録)の場合には、入院の承認は絶対に下ろさない。このような対応を行っているのはAXAだけだ」ということでした。
6か月後、ようやく受け取った謝罪レター
規約と実際の運用が異なるなんて許せない!と思い、クレームレターに対して絶対に回答をもらわなければと思いました。何度かフォローした結果、「却下したのは、緊急性がないという判断だったためです」と軽い返信が届きました。
(スペインは謝らない文化だと聞いていましたが、本当でした…)
承認リクエスト時の私立病院の医師レポートを添付し、「これを読めば緊急性が判断できるはずです。実際、その後に公立病院の医師も即入院が必要と判断しました。どうして緊急性がないという判断になったのか、理由を回答してください」と返信し、さらに何度もフォローしました。忘れかけていた6か月後、ようやく謝罪レターが届きました。
AXAには謝罪に留まらず、しっかりと運用を改善してもらい、私たちのような経験をする新生児の親がいなくなることを願っています。
今後スペインで出産予定のある方への2つのアドバイス
AXA側の改善を願いつつも、新たに親となる方ができる対策を2つ、私たちの失敗も踏まえてアドバイスさせていただきます。
1. 保険加入予定であれば、出産後すぐに手続きを
特にAXAの場合、出産後すぐに(当日でも)保険会社に連絡し、新生児の登録を行うことが大切です。
私たちは出産予定日3週間前に保険代理店に連絡し、事前に手続き方法と必要書類を確認していました。そして、出生直後に申込用紙を送付しました。ただその際、保険会社からBirth Certificate(出生証明書)の添付が必要と言われ、スペイン市役所発行のものが必要だと思い込んでしまいました。
「まだ役所から発行されておらず、入手次第送付します」と返信し、証明書の到着を待っていたことが失敗のポイントでした。実際には、スペイン役所発行のものでなくても、病院発行のReport(名前、出生日時、体重等が記載されたもの)でOKでした。この事実を知ったのは入院承認を待つ処置室で保険会社とやり取りしたときで、その後すぐにReportを送付しましたが間に合わず、入院リクエストが却下されました。
もし病院発行のReportでOKと知っていれば、申込用紙を送付した時点で娘の登録もされ、問題なく入院できたのかもしれないと思うと、悔やまれます。
今後スペインで出産される方は、AXA以外の保険を選ぶか、AXAを選ぶ場合は出産当日にでも新生児の登録を行うことをお勧めします。
2. スペインの健康保険証の作成(念のため)
スペインの健康保険証(Tarjeta Sanitaria)を作成することを強くお勧めします。NIEがあれば、非納税者でも作成が可能です。
妊婦健診中、医療通訳さんに「公立病院なら妊婦はインフルエンザ予防接種が無料ですよ」と勧められ、たまたま作成していました。その際は時間がなく、予防接種は全額自己負担の私立病院で受け妊娠期間中は使うことはありませんでしたが、娘の入院では健康保険証が大変役立ちました。入院・検査すべてが無料でした。
(娘が生後間もなかったため、母親である私の健康保険証が適用されました)
プライベートの医療保険がある方にとって、公立病院を使うご予定はないと思いますが、私たちのようになことがあった場合に備え、公立病院を受診できるオプションがあった方が安心だと思います。
以下フォームで申込をすると、1-2週間後に、健康保険証として水色のSalutと書かれたカードが郵送されました。(トップ写真の右側)
健康保険証の申請フォーム
https://salut.gencat.cat/pls/rca/RCAPKTSI.SOLICITAR_TSI
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