氷は自分にも突き刺さる-蛙化現象経験者から見た「ICY」-
初めてのnoteがこれになるとは思いませんでした。
でも今回は書かずにはいられず、一気に書き上げてしまいました。
ある種沼落ちnoteなのかもしれません。今まで、一コンテンツにここまで心動かされたことはなかったから。
早速本題に入る前に一つ。FFのいないアカウントだけど念の為。
以下の内容は、一新規JAMによるただの自語りと戯言なので「こんなこと思う人いるんだ」くらいのノリで受け止めていただけると幸いです。あとメンバーにはほぼ触れていませんので悪しからず。
「ICY/JO1」とはまずどんな曲なのか?
まずは曲について。ICYはJO1 9thシングル「WHERE DO WE GO」に収録された曲である。曲紹介はこんな感じ。
「ふとした瞬間に恋に落ちたが、相手の感情も同じと知ってまたすぐに心が冷めてしまった。そんな複雑な感情と申し訳なさを歌った曲“ICY”」(参考: Tower Record onlineのニュース)
要するに、「蛙化現象」をテーマにした曲である。しかも好意を持つ相手が自分に対して好意を持っていると分かったことがっかけとなってその相手に嫌悪感を抱いてしまう、という本来の意味の方。(よく使われる「相手の行動に幻滅した」というのは厳密にいうと違うらしい) タイトルで言及している通り、私は一度これを経験しているため、この曲情報が出た時にとても驚いた。こんな一見意味不明な現象が歌になるのかと。そしてどういうふうに描かれるのかとても気になった。
「ICY」PVの衝撃と、疼く古傷
そんなことを思っている間にCDが発売された。解禁後曲も聴いたけれど、ただ「歌詞はちょいヤバめだけど、普通にいい曲じゃん」くらいで流せていた。今日(10/13)、突然「ICY PERFORMANCE VIDEO」が公開されるまでは。
軽い気持ちで見たのが間違いだった。映像を見て、印象が変わってしまった、そして苦しかった。端的にいうと過去の私を見ているようで。
数年前私は好きだと思える人と付き合ったはずだったのに、関係性が「恋人」に変わった瞬間、何かが抜け落ちた感覚がしたことがあった。所謂蛙化現象。今まで楽しかったはずの会話も、上手くできなくなった。成立はしているし向こうは笑っているけど自分的には何か変で。だんだん会うことさえ出来なくなって、避けはじめて、結局すぐ別れてしまった。別れの言葉さえも直接言えず、LINEで終えてしまった。
あの時私に語彙力や表現力があればきっとこう表していたと思えるし、あの当時、この曲があったらどうなってしまっていたのか怖いくらい自分の過去の過ちと重なる、そんな作品だった。氷が突き刺さったまま溶けて、自分の心の奥底に届いているような感覚が、今でも続いている。
歌詞と振り付けと自らの経験から考える、「ICY」の主人公。-前半-
全体的に、この曲は振りも込みで一曲の世界が完成していると思う。心内描写が振りにかなり表現されている気がするから。
初め。ずっと好きと言っていたのに、向こうからの愛を告げられて一気に感情が変わる。自分にとっては急に体温が下がった気がして、時が止まったような感覚だったけれど、主人公(以下「僕」)もそうだったのだろうか。
サビ前に一度停止し、機械的な振りになるのは、急な変化への戸惑いか、それとも感情が徐々に冷えていき、無になったことを表しているのか。あるいは両方か。振りがあることで、主人公の気持ちの変化が音源のみよりもダイレクトに伝わる。(センター木全くんの目もすごい。)でもまだこの時は「なんか、冷めてきたかも。」という事実を認めただけな感じ。
その後「僕」はなんで冷めたのか考えてみたが、目につくのは相違点ばかり。「君」のことを考えるほど自分が冷めているという事実や、相手との温度差を感じる。好きだったはずなのに、どうして。もう全て無かったことに出来たら、どれだけ楽だろうか。昔の私がそう思ったように、「僕」もそう思ったのだろうか?
そして過去に戻りたいと思う。彼が思うはじまりはどこなのだろう。出会った時なのか、それとも冷めた瞬間なのか。
先に「僕」が愛を伝えていたのかもしれないけれど、「君」に愛を伝えられたこの段階で「ごめん、その気持ちには応えられない」と言えていたら、ここまで自分も相手も苦しんで、悲しむ結末にならなかったのではないか、そういう「はじまり」に戻りたいのかもしれない。
歌詞と振り付けと自らの経験から考える、「ICY」の主人公。-後半-
そして2度めのサビ。1番でもそうだが、「ICY…」の振りがつたう涙のようで。実はここが自分と重ねてしまう最大のポイントだった。
「君」からしたら泣きたいのは自分だって思うでしょう。というか皆さんそう思いますよね笑
ただ、個人的にこの表現が凄く腑に落ちた。冷めた側にも多少まともな感情はあるけど、管理は出来ていないことを示していると思うから。先程自分の過去の経験を描いたが、その時心の大部分を占めていたのは「相手への罪悪感」だった。相手と交流するたびに、向こうからへ自分への好意を感じるのに自分は返せない、その温度差がとても申し訳なくて苦しかった。相手は何も悪いことはしてないのに、愛を感じたから冷めるとか酷すぎて。一度は好きな人だったから悲しませたくもなくて正直に伝えることも出来なかった。自分の相反する感情にもうどうすればいいか分からなくて勝手に涙が出る日もあった。
完全にエゴだし、最低な奴であることには変わらないのだけど、もしかしたら「僕」もこういう人で、そういう涙なのかもしれない。勝手に出る意味のわからない涙。
まずサビ。
「You got me ICY」と相手のせいにする部分もありつつも、
「I can't be your hero (ヒーローにはなれない)」
「I could be your sorrow(私はあなたの悲しみになるかもしれない)」
という相手への少しの優しさは持ち合わせているなら、相手への罪悪感も多少はあるのではないだろうか。もちろん自己保身と言われればそうなのだけれど。
あとこのフレーズ。
「情けないと思ってる 僕もちゃんと思ってる 自分の知らない感情に振り回されて振り回して」
最初音源のみの時は、これが言い訳で薄っぺらいものなのか、本心からなのかわからなかったけれど、PVを見て割と本心なのではないか、と思った。表情や動きに少しの苦しみと悲しさが見えるというか。きっと誰にも理解されないし、自分が悪いのはわかってるけど、少しの許しに期待しているような、そんな複雑な感情。許されるならば許されたいという本心が建前から溢れているというか。
酷いけれど、感情を制御できなくなった人の末路とも言えるような感じ。
変えられない事実への戸惑いと罪悪感、葛藤。それによる苛立ち。その積み重ねがラスサビの「ICY…」の怒りや苦しみを持つような振りに帰着したのではないだろうか。機械的な振りの中にこういう一つ強い表現があるのが不安定さを感じてまたちょっと狂気的。壊れかけているのかもしれない、そう感じさせる。
結局「僕」と「君」の関係は、どう帰着したのだろう。ストーリーのあるMVで見たいようで、見たくない、そんな感情を抱いている。冷めた側にも氷は突き刺さることがあると、自らの身を以て知ってしまっているから。
あとがき
気づいたら3000字超えていて驚きました。この駄文を最後までお読みくださった方、本当にありがとうございます。
蛙化現象をする側視点で見ているので、この主人公に激甘判定となってしまいました。申し訳ございません。大分少数派の感想になるのかな、と思います。
人生で一番共感、というか心に突き刺さる一曲と言っても過言でないくらいの出会いでした。
あとメンバーの表現力もさすがとしか言いようがないです。
実際蛙化とは程遠いであろうに、魅入ってしまうほど世界観に入り込んでいて最高の作品でした。今度はちゃんとした沼落ちnoteをかきたいところ。