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アイドルに「生きろ」といわれた5年前を振り返って
なんだかえげつないタイトルになったけど、決して大そうな話ではないのでサラっと読んでほしい。
2017年 夏-大学3年生
カリキュラム上、大学3年の夏から1年間留学に行く学生が多い大学で大学生をしていた。
長期留学に行き、5年で卒業がむしろスタンダードコース。
そもそも何故その大学に入ったのかと言う話を少しだけすると、
高校生の頃の私は「将来は外交官になるんだ!」なんていうでっかい夢を思い描いていた。
さらに遡ること小学生時代。
中国に居たことから、日中関係には関心があり、中国語を専門的に学べて、国際関係学も勉強できるということで国際社会学部を受験。
でも、合格したのは国際社会学部韓国語科だった。
(中国語科を第一志望にしていたが、中国語科には一歩及ばず…。)
心の底から行きたかった第一志望校には受かったものの、
一番やりたかった中国語の勉強はできない状態。
これなら地元の大学に行った方がよかったなんて思うこともあった。
韓国語科でも必死で勉強すれば中国に長期留学できただろうけど
中国語科でさえ獲得するのが難しい提携校への留学権は獲得できないだろうなと思って入学早々に夢を諦めたし、
何より卒業に必要な韓国語の勉強で必死だった。
その大学に入ったからには留学に行きたいという思いが自分の中にあったので、英語圏に行こうかなどとぼんやり考えて、
どこに行きたい?
何を勉強したい?
自問自答したけど、全然答えが見つからなかった。
「周りが行っているから」
「かっこいいから」
「海外で一人暮らしがしたいから」
多分このくらいの感覚だった。
友達の中には「とりあえず留学行ってくる!」みたいな子もいたし
「かっこいいから」くらいの感覚でよかったのかもしれないけど
「何のために?」が無いと行動できない私としては
その状態で留学に行く決断はできなかった。
周りのみんなは、この2017年の夏に次々と海外へ飛び立って行った。
留学に行かないなら、どうする?と考えると
「就活」という2文字にぶち当たった。
何を仕事にしたい?
どんな業界に興味がある?
将来どんな自分になりたい?
何度も自問自答したけど、わからなかった。
留学のために海外へ飛び立って行く友達やインターンへ応募する友達を横目に、
バイト漬けの日々。
「何もやりたいことがない。自分には何もない。」
このままじゃいけないと思っていたけど出口が見えない日々だった。
沼にハマる
私は生粋のテレビっ子。
特にドラマは毎クール7~8本は見る。
YouTubeや動画配信サービスが普及し、
家にテレビがないという人も珍しくないと思うけれど
テレビがなかったら私は生きていけない。
2017年夏はとても好きなドラマがあった。
錦戸亮主演の「ウチの夫は仕事ができない」だ。
錦戸君はグループとしてデビューする前に出ていた朝ドラ「てるてる家族」で見ていたころから、我が家では役名の「かずちゃん」の愛称で親しんでいた。
そのあといろいろなドラマに出ていたのは知っていたし、
関ジャニ∞として活動しているのももちろん知っていた。
だけど、特に意識して見たことはなかった。
人生を振り返ると、幾度となく関ジャニ∞にハマるタイミングがあったのだけれど、錦戸君だけでなく、関ジャニ∞にはそこまでハマることはなく20年を生きてきていた。
久しぶりにテレビドラマで見た錦戸君は「仕事ができない夫」という、本人とはかけ離れた役どころで、
イベント制作会社の花形部署に肩たたき人事で異動したサラリーマンを演じていた。
大学院でキノコの研究をしたけど、就活でうまくいかず、なんとか受かったイベント制作会社で10年間頑張って働いてきたサラリーマンになんだかシンパシーを感じたのかもしれない。
松岡茉優演じるかわいくてちょっと妄想癖がある奥さんと一緒に、お仕事も家庭もがんばる!というホームドラマだったのもあって、
かわいい感じでフワフワ優しい錦戸君を見て
「こんなにかわいい人だったっけ・・・?」と衝撃を受けた。
そしてYouTubeを見漁っていき、あれよあれよという間に流れ着いたのが関ジャニ∞の沼だった。
アイドルに「生きろ」と言われる
見れば見るほど関ジャニ∞に魅了される日々。
歌番組でのにぎやかなイメージのまま、バラエティー番組は底抜けに面白く、気が付いたら家で声を出して笑っている自分がいた。
それまでの数週間は悩みに悩んでいたので、笑うことなんてなかった。
彼らを見て笑っているとなんかもうどうでもよくなってきて、何とかなると思うようになっていた。
そういえばと思い、高校の時から愛用しているWALKMANを見ると、関ジャニ∞の曲が1曲だけ入っていた。
「オモイダマ」
高校の部活の最後の大会の会場でかかっていた曲。
歌詞がよくて、大会会場で号泣した記憶がある。
部活引退後に、CDを借りてWALKMANに入れていたのだった。
久しぶりに聞いてやっぱりいい曲だと思い、そのまま近所のTSUTAYAに行って関ジャニ∞のCDを片っ端から借りて聞いた。
2017年6月にちょうどNEWアルバム「ジャム」をリリースしており、1stアルバムから最新アルバム、追える範囲のシングル曲を聞きこむのに2週間もかからなかった。
「ジャム」は2017年当時の関ジャニ∞の集大成ともいえるアルバムで、自身の冠番組「関ジャム完全燃SHOW」で縁あって繋がりを持ったミュージシャンからの提供曲やメンバー制作曲がふんだんに入っている。
まさに熟れた果実が煮詰められて美味しくなる「ジャム」のように
完熟したアルバムだ。
その中に「生きろ」という楽曲がある。
クレジットには「作詞・作曲・編曲:渋谷すばる」。
ストレートすぎるこのタイトルのまま、彼らしいストレートな歌詞の曲だ。
なにも無くたっていいから やりたいことなんて
夢や希望なんて無くたっていい
ただ一つだけ あなたを生きて
誰でもないあなたを生きて
生きて
今となっては、このアルバムを出した1年後にグループを抜け、事務所も辞めた彼が書いた詞と考えるといろいろ深読みをしてしまうのだが、当時の私にはこの楽曲が刺さりまくった。
ぐるぐると自問自答をしている日々の中で、実はいくつかインターンシップに応募していたのだが、ESを書くのが何よりもしんどかった。
自分が生きてきた軌跡を振り返って、それをいかに「良く」「きれいに」書くか。この作業がとにかく苦手だったのだ。
先に書いたが、私は確固たる「何のために?」が無いと行動できない。
それまでの人生で選択してきたすべてのことには自分なりの「何のために」があった。が、それはその時々の自分が感じていたことをベースに選択しているので、振り返ってみると「なんであの時、あの選択をしたのだろう」と思うこともある。
まあ人間そんなもんだと思っている。考えが変わってなんぼ。
過去の自分に向かって「あの時ああ言っていたじゃん!」は通用しない。
だから過去の自分の行動をそれらしい理由をつけて美談のようにESに書くことができなかった。(もっと器用にやりなよって社会人になった今は思うけど。)
「なにも無くたっていいから やりたいことなんて 夢や希望なんて無くたっていい ただ一つだけ あなたを生きて」
この詞を聞いた時、それまでドロドロと自分の中に渦巻いていた何かが昇華した。
なにもカッコよく言えるものが無くてもいい。
私を生きよう。
飾らず、背伸びせず、私のまま生きよう。
そう思ってからは、生きるのが楽しくなった。
関ジャニ∞の楽曲を聴いて、日々が色鮮やかになった。
彼らに出会ってやりたいこともできたし、夢もできた。
2022年夏-社会人4年目
あれから5年が経った。
その間に大好きだった7人は5人になって、今はそれぞれの場所で自分の道を歩いている。
大学3年生だった私も社会人になり、なんだかんだ楽しく生きている。
大学3年の後半から出版やメディアに興味を持ち、出版社でバイトをしたりしていきついた先は番組制作。
1年間めちゃくちゃに働いた後にコロナ禍になった。
テレビ業界では仕事がなくなるわけではなかったけど、働き方と自分の将来を考えて、転職した。
人生は選択だらけだ。
今もいろいろ悩んだり、迷うことはある。
「どうしたらいいんだろう?」
自分にとっての正解がわからなくなったときは「生きろ」を思い出して、一回リセットし、フラットな状態に戻るように心掛けている。
関ジャニ∞のメンバーは「アイドル」「ミュージシャン」というある種特殊な職業ではあるけれど、
自分の人生をどうしたいかとか一人の人間としての生き方を教えてもらった私の人生の先輩。
5年前、「関ジャニ∞」と検索していなかったら、今頃どんな人生だったかななんてたまに考えるけど、多分今より楽しくはないだろうな。
関ジャニ∞に出会って本当に良かった。
全国デビュー18周年 おめでとうございます。
2022.9.22