見出し画像

水たまり

ほんわりとした雨上がりの校庭は
穏やかな静寂のなかにあった。

と ――――――

きゃはは
まって、まってよ
ほら、ほら……

耳をすましてみると
小さく
かそけき声が…。

じっと瞳をこらし校庭をみた。
すると
手のひらほどの水たまりの淵で
小さき者たちが、ぱらぱらと
鬼ごっこをして遊んでいた。

「こらっ!」

突然、校舎の一角から大きな声。
どうやら校長室かららしい。
しっとりと雨を含んだ校庭に
無数の足跡をつけられてはたまらない
といったところか。

小さき者たちは目をまん丸にして
一瞬ピタリと止まり
蜘蛛の子を散らすように姿をくらました。

笑い声は
忘れ物の如くこだまして
虹の方角へと流れていった。

まぶたを二度ほど閉じる間の
小さな小さなお話。

いいなと思ったら応援しよう!

Rentaro
サポートいただけたらとっても嬉しいです。励みになります。 「読んでいて楽しいな」と感じていただけるよう、 言葉を紡いでいきたいなって思っています。 クリック、よろしくお願いいたします。