ノマド・リーディング (5) 歩きながら、なにかをつくろう
4月半ばに世界中の電波望遠鏡のシグナルを増強してブラックホールの映像が観測できたというニュースが入ったのを機会に、記念に読んでいたのはハードSF作家として知られるグレッグ・イーガンの「白熱光」です。
奇数章と偶数章とが異なる主人公の、異なる時空から語られるこの小説は、回転座標系におけるみかけの力学から一般相対性理論に至るまでの概略的な知識がなければ筋を追うのも難しくなっています。
以前読み始めたときには本の半分辺りで挫折してしまったので、今回は通勤時間中にメモで計算をしながらの二度目の挑戦です。すると、巻末の解説の図に致命的な間違いがあったのに気づいたり、具体的な数式での説明が可能になったりと、以前よりも少しだけ読書を先に進めることできました。
この一ヶ月、新しい生活に慣れるために必死でしたし、まだまだ家庭の状況も混乱しているのですが、ようやく安定点のようなものが見え始めてきました。
天体の自転と公転が同期している状態のことをタイダル・ロックといいますが、まさにそのようなイメージで、私を振り回す状況に対して私自身が同期しつつあるのです。
それならば、次に考えることはこの安定点からどのようにして次の知的生産を始めるかです。そう、歩きながら本を書くのです。
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