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緊急時避難訓練です
出航した翌日、避難訓練がありました。ありがちな形だけの訓練と思いきや、結構しっかり行われました。
というのも、事故が起きると本当に太平洋の真っただ中で遭難してしまうし、沈没しそうな船に取り残されても困ります。安全?(そもそも海のど真ん中で安全な場所があるとは思えませんが・・・)に逃げる方法を個人が身に着けておく必要があります。
自分のことは自分で!とても人のことを構う余裕がないから。
消火、防水(浸水)、密閉区画救助(船はいろいろな区画に仕切られている)に関して、それぞれの役割が細かく決められています。
火災では、実際に使用する放水装置や各種消火器の使用方法を説明されます。場合によっては医務部といえども自分で初期消火をしないといけません。医務室の周囲で、どこにどのタイプの消火器があるかを確認します。
そういえば家庭や職場の消火器って、使用期限とか気にせず置いていたりしませんか?でも、船の中は一度火災が起きて初期対応が遅れると取り返しがつかないことになるので、消火器具の点検はきちんと行われています。
自分の家の消火器も点検しないとなぁ~"(-""-)"(反省)
火災や浸水時の医務部の役目は、医務室や現場における救護活動です。被災した人を現場から医務室に連れてこられる状況ならよいのですが、動かせない場合は現場で応急処置をしなければいけません。また、可能なら現場から安全に医務室に運ぶ必要があります。
しかし、船内は通路が狭いうえに曲がり角も多く、担架での搬送も困難です。階段も急で水平に運べないだけではなく、担架をほぼ垂直にしないと通れない場面もあります。
そもそも現場に近寄れない場合も多数想定されます。例えば火災で高温・低酸素・有毒ガスなどが周囲に充満していたら救助自体ができません。浸水していて水や漏電などで安全に救助ができない場合もあり得ます。密閉区画内で有毒ガスなどのため近寄れない場合があります。
まずは、救助者(自分たち)の安全を確保(被災者を増やさない)することが第一で、その次に救助です。
引き続き行われた各部署の視察に同行した際、いろいろな状況をあらかじめ想定した救助訓練が必要だと痛感しました。これが、この後さまざまな救助訓練をT氏と始めるきっかけになりました。
退船命令(船を捨てて救命ボートで逃げる)が出た時の集合場所やメンバーも決められており、実際に集合します。服装は、作業着、ヘルメット、軍手、ライフジャケット、白いタオル(首に巻く)。これだけ!!それ以外は一切持ち出せません。
もし事故が起きて退船になるときは、いろいろ荷造りする余裕はないし、万が一荷物を持ち出そうとして退船が遅れると自分だけでなく他人の命も危険になります。
命を守ることが最優先!と言っても、こっそりウエストポーチにクレジットカードや身分証明書、現金、携帯などを忍ばせてくる人(強者?)もいるとのことですが(‘_’)。
救命ボートは幌つきのゴムボートが船のあちこちにたくさん装備されています。ボート1艘に10人くらい乗ります。訓練では、実際には使用しませんが、決められた番号の船の前で整列します。すべての乗組員はそれぞれ決められた番号の船の場所を覚えておく必要があります。
船医は船長・通信長・機関長の3役その他、各部署の長と一緒に乗ります(T氏は別のボート)。これには訳があって、ベテラン船員と乗ることでできるだけ生存の可能性を高め、事故調査において証言できる立場の人間をより多く生き残らせるためということでした。
ボートの中には、発煙筒など救援要請に必要なもの、簡易治療具、水、携帯食料が備え付けられています。医務室の救命キットを持ち込もうかとも考えましたが、ゴムボートなので刃物類は持ち込み禁止であること、退船時にかなり重い救命キットを持ち込む余裕はないことなどから、退船時はやはり規定通りの行動をすることにしました。
陸上にない海上ならではの厳しさを垣間見た訓練でした。