めぐるピープル10 「I do hair donation」
こんにちは、めぐるスイッチのスイちゃんです。地域で活動する人たちを紹介していく連載記事「めぐるピープル」。今回は、板橋でヘアドネーションを広める活動をしている、なんと中等教育学校4年生(高校1年生!)の田淵羽音(はおと)さんをご紹介します。
子どもたちの笑顔を取りもどすために
いきなりですが「ヘアドネーション」ってご存知ですか? 「ドネーション」は英語で「寄付」の意味。ヘアドネーションは、小児がんや脱毛症などにより髪の毛を失ってしまった18歳以下の子どもたちに人毛のウィッグをつくるため、髪の毛の寄付をするボランティア活動です。
小児白血病をはじめ、小児がんと闘う子ども達は全国に年間2千人以上と言われています。抗がん剤や放射線治療によって髪がぬけてしまうため、せっかく日常生活に戻れても、前向きになりにくく、精神的に落ち込んでしまう子どもたちも多いのだといいます。
人口繊維のウィッグは安価ですが、見た目ですぐにそれとわかってしまいます。でも、自然となじむ人毛のウィッグだと数十万円と大変高価です。
羽音さんは、中学一年生のときに学校の課題研究で「ヘアドネーションマーク」をデザイン。以来、オリジナル缶バッチの配布などを通じて、ヘアドネーションを広める活動を続けています。
日常生活の中でできるボランティアの形
もともと体があまり丈夫ではなく、介護やゴミ拾いなど身体を使ったボランティアは難しいという羽音さん。家族の知人にドネーションのために髪を伸ばしている方がいることを知り、髪をのばすことなら自分にもできる!と取り組み始めました。
その後、ヘアドネーションのイベントで髪をのばしている同い年の男性に出会い、男性は長い髪でトイレに入ろうとすると変な目で見られたり注意されたりするなど、ヘアドネーションしにくい現状があることを知りました。
ウィッグを1体作るには30〜50人分ものヘアドネーションが必要です。なのに、気持ちをもっている人が制限されるのは残念ですよね。「少しでもドネーションしやすい環境をつくりたかったんです」と羽音さん。周囲の理解を得やすくなるよう、意思表示できる缶バッジを作り、配布しました。
ブルーのマークは「I do hair donation(私はヘアドネーションをしています)」という意思表示。オレンジのマークは「We support hair donation(私たちはヘアドネーションを応援しています)」と意思表示ができます。
自分にできることから
バッジをつけると「このバッジなに?」と聞かれたときも「どうしてそんなに髪をのばしているの?」と聞かれたときも、マークの意味を説明し、自然とヘアドネーションを知ってもらうきっかけになります。
実際に、バッジをきっかけにヘアドネーションをしてくれた同級生の男性もいるそうです。また、学校の校則で髪を伸ばせずオレンジのマークをつけている人同士が出会い、つながるきっかけとなったことも。
これまでに配られたバッジはなんと4千個! 「はじめは男性の利用が多いかなと思ったんですが、意外にそうでもないんです。幼稚園生から年配の方まで、年齢層もかなり幅広いですね」と話す羽音さん。現在はいたばし総合ボランティアセンターや板橋区内の地域センター、賛同する全国の美容院などで配布されています。近くで手に入らない方も、メールなどで問い合わせれば対応してもらえるそうです。
ボランティア活動に取り組む中高生コンテスト「ボランティア・スピリット・アワード」でも3年連続で受賞されている羽音さんのこの活動は、現在月額制クラウドファンディングにも取り組んでいます。
成人式や七五三などで髪を伸ばす人も少なくないと思いますが、せっかく伸ばした髪をただ切るだけではなく、どうせなら誰かの笑顔につながる形を選んでみてはいかがでしょう。わたしもまずは、オレンジのマークをバッグにつけてみようと思っています!
I do hair donation 代表 田淵羽音さん
公式サイト: I do hair donation
写真提供:I do hair donation、写真AC
取材日:2021.10.22(記者・スイちゃん)
活動分類:医療・健康
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