[ショートショート]水は血よりも甘い
ずっと。
そう。ずっと、私は守られてきた。
間違いなく今まで。
そして、これからもそうなんだ。って思う。
よくもまぁ。簡単に私の心を独り占めしたものだ。
そのくせ、あなたはの隣には、いつも、誰かがいる。
なんてヤツだ。
私があなたに、「好き」「愛してる」なんて言ったところで
笑って逃げられる。
いつも。
そう、いつも。
いつも笑って、逃げられてきた。
だけどね。
それじゃ、ダメなんだ。って最近気が付きはじめた。
あなたがちゃんと私のことを見てくれなきゃ、私のあなたに対する想いは、あなたにちゃんと伝わらない。
それは今までと変わらず、私の一方通行の愛。あなたから返ってくることのない、私の一方通行の愛。
むなしいワケじゃなく。悲しいワケでもない。
ただ、あなたに知ってもらいたいだけ。
私があなたを、どれだけ愛しているか。ってことを、あなたに知ってもらいたいだけ。
でも。うん。まぁ。そう。ちょっとくらいは。ね?
だから、あなたの隣にいる人を、どうにかしなきゃ。
あなたの隣から、動かさなきゃ。
だけど、その方法なんてものを私は思いつくはずもないし、
仮に思いついたとしても、それを実行できるだけの勇気もないから。
だから、こうやって、あなたに直接、お伝えすることにしました。
では。では。
ゴホン。
んっ。んー。あっあっ!
改めまして!!
あなたのことが大好きというか、愛しているというか、そんな言葉の範疇に収まらないくらいの気持ちをずーっと!持っています!
知らなかった?
あれ?おかしいな!ちゃんと毎日のように、私はあなたに言ってたと思うけど。
え?冗談だと思ってた?
それは傷つくなー。さすがに、この私でも傷つくなー。
だって、今日にいたるまで、どれだけ私はあなたに「好き」と「愛してる」って言ってきましたか?
そうだね、うん。覚えてないだろうね。
でも、私はちゃんと覚えてるよ。
184,982回。
私があなたに「好き」と「愛してる」って言ってたのって、定型文のように1日に24回って決めてたの。
1日が24時間だから、1時間に1回は耳にするように。って意味でね。
私が時計を理解してから、私のルールになったんだよ。
だって、私のことをちゃんと見て欲しかったから。
多分、あなたは私のことを見ていた。っていうでしょうね。
なんとなく。
いや、ごめん。ちゃんとわかってたよ。
でもね。認めたくなかったんだ。
私があなたのことを本当に愛していたから。
だから、あなたではない人と私は幸せになる未来が見えません。
ううん。違う。
あなたじゃないと私を幸せにはできません。
パパ・・・
ずっと、あなたって他人行儀に呼んできたけど。
私はあなたを、あなたの名前で呼びたかったです。
でも、私は怒られてきました。
名前で呼ぶなって。
あなたのことを名前で呼ぶな。パパと呼びなさいって。
このことをあなたは知らなかったと思います。
私は、ママを許せません。私を生んでくれたことは感謝しています。
だけど、私からあなたを奪い続けてきたママが憎い。
おっと。
こんな恨みつらみを言いたいのではありません。
私が、あなたのことをどれだけ好きで、どれだけ愛していたか。
あなたからすれば、娘の私が「好き」「愛してる」って言葉を言われても
「はいはい、ありがとう」って感じだったと思います。
たぶん。
ううん。そうね。
間違いなく親の目線で私を見ていたのは知ってる。
そして、それが妥当な感情だということも理解してる。
だけど、私はあなたを親じゃなく。
頼りがいのある異性、理想像として見ていました。
そしてね。時々記憶が混在していることがあったけど。
一つ、どうしても妄想と切って捨てられない記憶がありました。
それは。あなたと私のこと。
あなたは、前世でも私を置いて、
先に逝ってしまったことを思い出しました。
そして、現世でも私を置いていく。
次、私があなたに会えたとして。
私は、あなたがあなたである。ってちゃんとわかるのかな?
今回だけが特別だったんだって。思っています。
きっと、次に私があなたに会っても気が付かないでしょう。
それでもいいかもしれません。
もしかすると、あなたと生きる時間軸が異なるかも知れません。
もしかすると、あなたと生きる生活圏が異なるかも知れません。
あと1秒。あと1分。タイミングが違っただけであなたに会えない可能性が
無限大に広がっています。
私は、あなたに会いたい。また、あなたに会いたいんです。
だって。私は変わらないから。
私は、変わらず、あなたのことを愛しているから。
きっとママよりも、私の方があなたを愛しているから。
ずっと、この気持ちは変わりません。
私は。あなたのいない世界に取り残されました。
私は、あとあなたのいない世界で、あと何年生きればいいのでしょうか?
私は、あなたに守られていました。
あなたは覚えていないかもしれませんが、私を待っていてくれました。
ごめんなさい。
私は、あなたのいない世界で、あなたを待つほど勇気がありません。
だから、神様。お願いします。
私を。